本日は2018年5月25日付のHakai Magazineより、"Eagles Deck Out Their Nest With Kelp"をお届けします。ラッコが以前の生息地へ戻ることでその地域の生態系に様々な影響をもたらしていますが、それが海だけでなく陸地で暮らす動物にも出始めているという内容です。
生物学のエリン・レヒシュタイナーは小さなアルミ製のボートに乗り、クイーンズサウンドの海をゴシュリングロックスへ向かっていた。ここはカナダのブリティッシュコロンビア州中央沿岸部から離れた島々の一つだ。2015年2月、レヒシュタイナーはこの地域で海の頂点捕食者であるラッコの研究のため訪れた。しかし、レヒシュタイナーが訪れた際別のものに目を惹かれた。風で歪んだ高さ2.5メートルほどのトウヒ(訳者注:松の仲間)のてっぺんにあるハクトウワシの巣だ。
ハクトウワシは縄張りで営巣する。一度営巣に適した場所を見つけたら、そこから離れることはめったにない。実際、この巣は1990年代に記録されているが、当時その巣は全て木でできていた。今日、その巣はほとんどが明らかに海岸で拾ってきた乾いた海草で作られている。
「私たちが知る限り、こうしたものが見つかったのは初めてのことです」とレヒシュタイナーは言う。彼女はハカイ研究所とビクトリア大学で博士号候補者としてラッコの研究を行っている。
ケルプで作られたワシの巣の発見は、レヒシュタイナーが言うところによると、ブリティッシュコロンビア州沿岸から一度は絶滅しそこから回復しつつあるラッコが、どれほど海や陸、そしてその先へと影響を及ぼしているのかという、最も新しい例だ。
1970年頃にブリティッシュコロンビアへ再導入されたラッコは、現在歴史的な生息域の大部分に再入植し拡大している。ラッコがいなくなってしまっていた間、ラッコのエサであるウニがその地域のケルプを食べつくし一掃してしまった。ラッコが回復するとケルプやケルプに支えられている多くの生物も戻ってきた。
ラッコ・ルネサンスの影響は劇的だ。新しく生まれたケルプの森は、メバルやアイナメ、その他の多くの生物が繁栄している。浜に打ち上げられたケルプは沿岸に住む小さな生物に隠れ場所を提供し、窒素栄養化の源となる。対照的に、ラッコのいない海ではウニ砂漠(訳者注:磯焼け)があるに過ぎないとレヒシュタイナーは言う。
ゴシュリングロックスのような樹木の少ない場所では、ケルプもワシを支えているようだ。ラッコがケルプの繁茂を助ける以前は、レヒシュタイナーが言うには、ゴシュリングロックスのハクトウワシは最も近い木が豊富な場所へ行くために、エネルギーを費やして3キロメートルも内陸へ何度も飛ばなければならなかった。
新たな建築素材を手に入れられるようになることは、ラッコは戻ってきたことによりハクトウワシが得られる利益の一部に過ぎない。ワシにとってはラッコの赤ちゃんは重要なタンパク質源えあり、ケルプの森に集まる魚もそうだ。これにより、ワシのエサである海鳥はそのプレッシャーを減らすことができる。
発見されたケルプでできた巣はたった一つだが、これにより、研究者らが生態系のコミュニティがどのようにお互いにつながっているのかをという理解を深めているとレヒシュタイナーは言う。「本当にすごいと思うのは、海の頂点捕食者と陸で目に見えて起こっている現象がこのように明らかにつながりがあるということです」
カリフォルニア大学サンタクルーズ校の海洋生物学者でラッコそのと生態系への大きな影響に関する権威でもあるジェームス・エステスは、この意見に賛同する。
「ケルプはこの場所において、沿岸生態系の基礎となるもので、ラッコが増えればケルプも増えます」とエステスは言う。この発見は「沿岸生態系におけるキーストーン種としてのラッコによる生態学的影響の範囲を広げることになるでしょう」
*エリン・レヒシュタイナーの研究はTula Foundationによる資金援助を受けています。同基金はハカイマガジンやハカイ研究所へも資金提供を行っています。ハカイマガジンは研究所や同基金とは独立して編集されています。
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