ラッコの知性 | Intelligence
最終更新日:3/27/2018
道具
ラッコは道具を使う数少ない動物の中の一種です。
エサとなる生き物にはカニや二枚貝、マキガイなど固い殻を持つものがあり、それらを食べるラッコは、エサと一緒に適当な大きさの石をもって水面に上がり、石を腹の上に置き金床のようにして、殻をぶつけて割って中身を食べます。
ラッコは母親からエサの取り方、食べ方を学ぶが、3歳ごろまでに道具の使い方を習得しない場合は、その後道具を使うことはないと考えられています。
カリフォルニア州モントレー湾のラッコが成功潜水(潜ってエサを獲ってくることができたもの)のうち16%で道具を使うのに対し、アラスカでは道具の使用は1%にすぎません。これは、食べるエサの種類の違いによるものと考えられています。
また、道具を使うラッコはどのエサに対しても比較的道具をよく使う傾向にあります。[1]
また、下の動画のように、アワビなどを岩から剥がす時に石を使うこともあります。
また、大きな石や岩などに貝をぶつけて食べることもあります。
貝を獲りに潜って出てくると、同じ岩のところへ来て貝をたたくことが多いようです。大きさや使い勝手など、こだわりがあるのかもしれません。
また、船などの固いものに貝をぶつけて開けることもあります。ラッコが生息する港にある船をよく見ると、水面あたりに傷がたくさんついているものもあります。
石のほかに、貝どうしをぶつけて割ることもあります。
なお、「ラッコはお気に入りの石をポケットに入れて一生持ち歩く」とよく言われていますが、これは事実ではありません。野生のラッコは潜ってエサを獲るたびに石を拾い、貝などを開けるとすぐに石を捨てます。そしてまた潜って貝をとるときに石を拾います。貝を割る時には比較的大きめの石を使うことが多いので、そもそもわきの下の皮膚のたるみには入らないこともあります。ラッコの道具の使用を研究しているアメリカの研究者も、ラッコがお気に入りの石を持ち歩くというのは事実ではないと述べています。[1]
#ラッコ は石を金床のようにして使います。殻を割ったら石は捨てます。#seaotters commonly use rocks as anvils. They drop the stones in the water after breaking the shells. pic.twitter.com/clTdyfckHg
— らっこちゃんねる (@SeaOtterChannel) 2018年3月26日
Sea Otter Savvy(ラッコへのハラスメントに対する啓蒙活動を行っているアウトリーチ団体)がらっこちゃんねるのツイートに対してサポートのコメントをくださいました。
Thanks @SeaOtterChannel for not perpetuating the myth that sea otters have a favorite rock they keep their whole lives! #wildlifemyths https://t.co/nNm6cbvrZO
— Be Sea Otter Savvy (@SeaOtterSavvy) 2018年3月26日
@SeaOtterChannel、ラッコが一生お気に入りの石を持ち続けるという迷信が続かないようにしてくれてありがとう! |
遊び
ラッコは好奇心旺盛で、身の回りにある様々なもので遊びます。
下の動画のラッコは、小石を二つ持ってそれを大きな石にぶつけたり、小石どうしをカチカチとぶつけて遊んでいます。このメスのラッコが石で遊ぶところは何度も見ていますが、他のラッコが同じように石で遊ぶところは見たことがありません。
下の動画は、野生のラッコがダイブフロート(ダイビングの際、目印にするための浮き)の中に出入りする様子です。中にある錘が邪魔なので、捨てて中に入ろうとしています。
こちらはらっこちゃんねるが撮影した、ラッコとごみに関する動画です。海には途方もない量のごみが散乱しています。ラッコは好奇心からこれらのゴミを拾い、たいていは何事もなく済むのですが、場合によっては危害が及ぶ可能性もあります。
このほかにも、人間が乗るカヤックに好奇心で近づいてくる野生のラッコもいますが、その場合はカヤックに乗らないよう、カヤックを揺らしたりパドルで遠ざけたりして、人間に近づかないようにしてください。詳しくはこちらをご覧ください。
学習能力
ラッコは、生きるための術を母親から学びます。
特に、ラッコにとって不可欠な「潜水」「エサの判別」「エサの食べ方」「グルーミング」を母親から十分学べないうちに離れ離れになってしまうと、子どものラッコの生存率は低くなります。ラッコは生きていくためのスキルの学習過程を経なければ生きていくことができないのです。
また、ラッコは社会的な学習を行う動物であるとも考えられています。
著名なラッコ研究者ティム・ティンカー博士が1990年代にアリューシャン列島でラッコの調査を行っていた際、数十年に一度のゴッコという魚の大発生がありました。以前大発生が起こった際に生きていたラッコはもちろんいないので、どのラッコにとってもゴッコを見るのは初めてだったはずでした。あるラッコが石に吸盤でくっついたゴッコを食べ始めると、それを見ていた他のラッコも簡単に取れると理解したのか、我も我もとゴッコを食べ始めたと博士は述べています。[1]
エンリッチメント
飼育下にあるラッコには、エンリッチメントと呼ばれるおもちゃが与えられます。中にエビなどが入っているおもちゃや、氷の中にエビなどを入れて凍らせたもの、その他にもさまざまなおもちゃが与えられます。これは、とかく単調になりがちな飼育環境の中で、ラッコに精神的・肉体的な刺激を与える目的で行われます。
モントレーベイ水族館の場合は、スタッフが考えて毎日異なるエンリッチメントを与えています。動画の書き起こしはこちらをご覧ください。
下の動画はシェッド水族館のマリがエンリッチメントを楽しんでいるところです。
エビが入ったボールを、透明な壁の隙間から手を差し込んで左右に転がし、最終的に下の穴から出すというもので、水族館と大学が協働で考案しました。
参考文献
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^Kelsey, Elin. “The Quest for an Archaeology of Sea Otter Tool Use.” Hakai Magazine,
Hakai Institute, 20 July 2015, www.hakaimagazine.com/article-long/quest-archaeology-sea-otter-tool-use.