ラッコの形態 | Physical Characteristics

最終更新日:3/27/2018

大きさ

体長:約1.3m
体重:オス平均29kg、メス平均20kg

  • メスよりオスのほうが大きい。
  • カリフォルニアラッコ(Southern Sea Otter / Enhydra Lutris Nereis)よりアラスカラッコ(Northern Sea Otter/Enhydra lutris kenyoni)のほうが大きい。

骨格

ラッコには鎖骨がないため、体を柔軟に曲げることができ、体の隅々までグルーミングすることができます。

頭蓋骨(オス)

オスの頭蓋骨はメスより大きく、頭頂部や隆起部(注:ラッコの頭蓋骨の頭頂部には、とさかのように出っ張っている部分がある)が大きいので、筋肉が付く面積も大きくなり、筋肉が多ければ咬合力(噛む力)も大きくなります。オスのラッコはより強い下顎を持ち、非常に硬いエサも砕くことができます。

下はラッコの頭蓋骨の3Dビューです。カーソルで動かすことができます。

頭蓋骨(メス)


出生時は10本、成獣には32本の歯があります。
臼歯(奥の丸い歯)は貝やカニの殻をかみ砕くのに適しています。
貝やカニの殻などにこびりついた身をとるのに、門歯で身をこそげとります。

ムラサキウニを繰り返し食べたラッコは、歯や頭蓋骨などにウニの色素が沈着して淡い紫色に染まります。
写真は上が下あご、下が上あごです。仰向けになっていたので、上下が逆になっています。

ラッコの歯はエナメル層が年輪のようになっており、その数を数えることで年齢を推定することができます(写真右)


身体的特徴

ラッコは水の外も水中もよく見えると考えられています。
人間同様、高齢になると白内障になることもあるそうです。

ラッコは優れた嗅覚を持ち、仲間とコミュニケーションをとったり、外敵を察知したり、食べ物を見つけたりできます。
潜る時には水が入ってこないよう鼻を閉じることができます。
ラッコの鼻にはnasal mites(鼻ダニ)が寄生しています。

※クリックで拡大
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ラッコの聴覚は特に鋭くも弱くもないようです。

空気中では5ヘルツ~32キロヘルツ、水中では250ヘルツ~を聞き取ることができるそうです。特に8キロヘルツ~16キロヘルツを聞き取れるようになっているのですが、これは幼獣の鳴き声とほぼ同じです。[1]
眠っていても、物音で起きることもありますし、鳥の鳴き声に驚いて逃げることもあります。

右の写真のラッコは同じラッコが水の中にいるときと陸にいるときのものです。水に入っている時は、耳を閉じることができます。(右上)

ヒゲ
ラッコは海底にいる無脊椎動物を餌にしていますが、暗い海底で餌を探すのに、ヒゲは非常に重要な役割を果たしています。

体毛
ラッコは1平方インチあたり約100万本、身体全体で8億本もの毛が生えています。ラッコの毛は地球上の動物の中でもっとも密度が高いのです。イヌやネコは毛をくしでといだ際、地肌が見えますが、ラッコはくしでといでもほとんど地肌は見えません。
毛はガードヘアと呼ばれる長い毛の下にアンダーヘアという細かい毛が生えています。ガードヘア1本あたり、部位により異なりますが12本から108本のアンダーヘアの束が生えています。この毛の間に空気の層を作ることで、直接水が皮膚に触れることがなく、寒冷な海で生きていけるのです。
ラッコは生まれた時にはラヌーゴと呼ばれる明るい茶色の幼毛に包まれています。幼毛は水に浮きやすく、溺れないようになっています。生後13週くらいまでに幼毛が生え変わり、潜ることができるようになります。

ラッコには頭から胸にかけてが白くなるものもいます。白くなり始めるタイミングは個体により異なりますが、年齢と共に白っぽくなっていくようです。


ラッコの前脚は短く、外から見ると肘から下しかないように見えますが、上腕部分は毛皮に隠れています。だぶだぶのTシャツを着ているような感じです。
ラッコの手はミトンのような形状です。手のひらには細かい凹凸があり、滑りやすい餌や石などをしっかり捕まえられるようになっています。指の骨格は独立していますが、それぞれ自由に動かすことは難しそうです。
手は非常に器用で、霊長類以外で道具を使う、数少ない動物の一つです。

また、ラッコは非常に敏感な触覚を持ち、1ミリメートル未満の違いを判断することができます。

それぞれの指には出し入れ可能な爪があります。

後脚

ラッコの後ろ足はひれ状になっており、指の間には水かきがあります。広げると扇子のような形になり、外に向かって大きくなっています。足の指にはそれぞれ肉球のようなものがあります。
身体をくねらせながら後ろ足を力づよく動かして、時速5マイル(8km)程度のはやさで泳ぐことができます。しかし、一方陸で歩くには不便になってしまいました。

ラッコの足跡。丸く見えるのは前足。ひれ状のものは後ろ足。人間と逆で、外側の指が長い。足の真ん中あたりに点々と見えるのは指の関節。ひれは途中で曲げることができます。


ラッコのしっぽは平たく、船の舵(かじ)のような働きをします。
仰向けに浮かんだまま、しっぽを左右に動かしてゆっくり移動することもあります。

ポケット
ラッコは脇の下の皮膚がたるんでおり、そこに餌を入れておくことができます。ポケットといっても袋状になっているわけではないので、回転する時には手でポケットの部分を抑えて落ちないようにしています。
写真の○で囲んだ部分がポケットです。白い小石とムラサキガイを入れているのが分かります。

下の動画は写真と同じラッコです。ポケットにかなりたくさんのムラサキガイを入れています。

排出物
ラッコは固形のふん(写真右)と液状の排出物があります。固形のふんにはカニや貝の殻が含まれています。

排尿しているラッコの子ども。
普段は水中で排尿するので、なかなかこのようにはっきり見ることはできません。


内臓

腎臓

他の海洋哺乳類と比較すると、体重の割に大きな腎臓を持っています。ラッコは海洋哺乳類の中で唯一、自発的に海水を摂取する種ですが、それは血中の尿素窒素負荷をなくすための手段と考えられています。ラッコはナトリウムイオン(Na+)と塩化物イオン(Cl-)を海水と同程度まで濃度を高めたものを尿中に排出することができます。[3]

 

ラッコは体の割に肺活量が大きく、同程度の大きさの動物の2倍程度あります。毛に蓄えた空気の層と、容量の大きな肺がラッコを水に浮きやすい動物にしています。

 

運動能力

水棲のイタチ科の走る速さと泳ぐ速さ

泳ぐ速さ:水面を泳ぐ速さ(斜線)、潜水して泳ぐ速さ(灰色)

走る速さ:歩く速さ(黒)、跳ねる(白)単位はメートル/秒。

右下のイラストは北アメリカミンク、カワウソ及びラッコが跳ねる際もっとも伸ばした際と曲がった際の脊椎の柔軟性と脚の着地パターンを示したもの。ラッコの脊椎が柔軟であることがわかります。[2]

Macdonald et al. 2016
Macdonald et al. 2016

参考文献

  1. ^ McLeish, Todd. Return Of The Sea Otter. Sasquatch Books,. 2018. p.64
  2. ^ Macdonald, David W., et al., editors. Biology and conservation of the musteloids. Oxford University Press, 2016. p 125.
  3. ^ Ortiz,Rudy M.. Osmoregulation in Marine Mammals. Journal of Experimental Biology. 2001-204. pp.1841-1842