ラッコの生息域 | Habitat
最終更新日:3/27/2018
生息範囲
(c)Seaotters.com
■はカリフォルニアラッコ、■はアラスカラッコ、■はロシアラッコ(アジアラッコ)の生息域です。■はかつてラッコが生息していた地域です。
地図中ほどの囲みは、1938年にカリフォルニアでラッコが再発見されてからの生息域の拡大状況です。
※最新の生息域についてはこちらをご覧ください。
IUCN Red List Sea Otter -Species Range
ラッコはかつては北海道からメキシコのバハ・カリフォルニアに至る北太平洋沿岸一帯に広く生息していました。18世紀から20世紀初頭にかけての毛皮交易時代に乱獲され、生息数は15~30万頭から1000~2000頭へと激減してしまいました。現在残っている自然の個体群はロシアからアラスカのアリューシャン列島にかけて、およびカリフォルニア本土沿岸に生息するもののみです。現在アラスカ州南東部、カナダのブリティッシュコロンビア州、アメリカのワシントン州に生息する個体群は1960年代から70年代にかけて、アラスカラッコの一部が人工的に移されたものが定着、繁殖したものです。
※オレゴン州にも再導入されましたが定着しませんでした。
現在は、世界に約125,000頭ほどが生息していると推定され、その生息域は乱獲以前の3分の2ほどまで回復しています(出典)。
海岸から10km以内の主に岩礁やコンブ(ジャイアントケルプ)の森があるところに主に生息しています。
また、塩沼(海岸付近にある塩性の沼地)でも見られます。
ラッコが暮らす海は冷たく、水温は4℃から10℃ほどです。アラスカの海の一部は凍るほど寒いので、非常に厳しい環境で生きています。カリフォルニアは暑いイメージがありますが、海水は冷たいのです。
ケルプの森に暮らすラッコ
ラッコは沿岸から数キロ以内の海に生息しています。ジャイアントケルプ(オオウキモ)の森は、魚やカニ・エビ・ウニなどの小動物がたくさん暮らしている豊かな場所。それらの小動物に天敵から身を守る隠れ家や産卵場所、プランクトンなどの餌を提供しています。
ラッコはこのコンブの森に棲む小動物の多くを主食としており、またラッコ自身もこのジャイアントケルプの森を中心に暮らしています。
ラッコはコンブを食い荒らすウニやアワビなどを食べ、食物連鎖の上位捕食者として生態系のバランスを取る重要な役割を果たしています。
こちらは、コンブを体に巻き付けるラッコの様子です。コンブの森はラッコに食料だけではなく、休む場も提供しています。 潮に流されないよう、コンブを体にくるくる巻き付けて船のイカリのようにつかいます。
水族館のラッコには手を繋いで休むラッコもいるようですが、野生のラッコが手を繋いでいるところはほとんど目撃されたことがありません。
湿地帯に暮らすラッコ
一部のラッコは、潮の満ち引きのある塩性湿地にも暮らしています。かつては多くの湿地帯にみられたようですが、現在はカリフォルニア州のエルクホーン湿地帯で見られるのみです。捕食者や荒波などから守られた湿地帯は、ラッコたちに安全なすみかを与えており、エルクホーン湿地帯には主にメスとその子どもが暮らしています。この湿地帯には、アマモという海草が繁茂しており(下の動画の細い草のような植物)、幼魚などが暮らす大切な生態系を作り出しています。かつてはエルクホーン湿地帯は周囲の農場からの排水で富栄養化が進み、アマモの表面に藻類が付着しアマモが窒息していました。しかし20年ほど前にラッコが定着し、カニを大量に食べるようになってからは、カニがエサにしていたウミウシなどが増え、ウミウシがアマモに付着している藻類を食べたため、アマモの表面がクリーンになり、健全な生態系が復活しました。