【記事】市民科学者、エルクホーン湿地帯のラッコ研究に貢献 | Citizen scientists at Elkhorn Slough aid in sea otter research

本日は2017年10月28日付のMonterey Herald紙より、"Citizen scientists at Elkhorn Slough aid in sea otter research"をお届けします。ラッコ啓蒙週間の時、エルクホーン湿地帯基金のオフィスで行われたイービーさんの講演会に参加してきました。ボランティアとして10年ラッコを観察し続け、それが形になり、ラッコの研究や保全に貢献しているって素晴らしいですね。今回の研究について詳しくはこちらの記事(【記事】湿地帯におけるラッコのホールアウト調査 | Serendipity in a salt marsh: detecting frequent sea otter haul outs in a marsh ecosystem)をご覧ください。

水曜日、モスランディングハーバーで仕事をする市民科学者のロン・イービー。イービーとロバート・スコールズは最近のカリフォルニアラッコに関する論文に貢献してきた「市民科学者」だ。(Vern Fisher - Monterey Herald)
水曜日、モスランディングハーバーで仕事をする市民科学者のロン・イービー。イービーとロバート・スコールズは最近のカリフォルニアラッコに関する論文に貢献してきた「市民科学者」だ。(Vern Fisher - Monterey Herald)
水曜日、モスランディングハーバーでラッコの群れのそばを通り過ぎるカモメ(Vern Fisher - Monterey Herald)
水曜日、モスランディングハーバーでラッコの群れのそばを通り過ぎるカモメ(Vern Fisher - Monterey Herald)

モスランディング>>エルクホーン湿地帯のピックルウィードの上に折り重なるように眠っているラッコたちは非常に難儀だ。

 

地元の研究者と献身的な市民科学者たちはエルクホーン湿地帯で復活しつつあるラッコの個体群と、ラッコがここに住み着くようになった理由とも考えられる奇妙な行動について研究を行っている。

 

2007年、ロン・イービーはモントレー湾国立海洋保護区で活動しているチーム・オーシャン(訳者注:モントレー湾でカヤックに乗り、その場で観光客らにハラスメントについて教育を行っているボランティアグループ)エルクホーン湿地帯でボランティアを始め、仲間の市民科学者ロバート・スコールズと出会った。まもなく二人は、ラッコたちが湿地帯の離れたところにある水路に沿って泳ぐのを見かけた。イービーとスコールズはまた、ラッコが「ホールアウト」つまり、塩性湿地沿岸に乗りあがるというモントレー湾のカリフォルニアラッコにとっては驚くような行動をとるのを目撃した。

 

「市民科学者として、このような集団行動を観察し、どこで何をしていたかを記録していくと、モントレーベイ水族館がタグをつけたラッコから得たものと同じ結果だったということが分かったのです」とプロジェクトリーダーの一人であるイービーは言う。

 

二人は最初地元の研究者らに提案を行ったが、最初は却下された。何度も交渉した後、やっと研究者らは二人の観察記録が見直すに値するものだと確信してくれた。それ以来、振り返らない。

 

「科学者のコミュニティは、本当に私たちを受けれてくれています」とイービーは言う。

 

カリフォルニアを本拠地とする非営利団体オケアニスの創立メンバー、ダニエラ・マルディニやエルクホーン・スルー・ナショナル・エスチュアリン・リサーチ保護区の研究コーディネーターでカリフォルニア大学サンタクルーズ校の進化生物学・生態学部の非常勤教授であるケルスティン・ワッソンのようなリサーチ科学者らの指導の下、二人は観察したことを急いで書き留めるところから本格的な科学的研究に参加するところまで行きついた。

 

「彼らは、ラッコを見るためだけに週に7日間、現場にいます」とワッソンは言う。「ですから、現場にいることで集中的になり、ラッコの行動パターンに気づくことができるのです」

 

「こうした変わった行動を目撃するには、現場に長時間出ていなければなりません」

 

二人は、観察の拠点を湿地帯から近くを丘へと移した。よりよく観察するためだ。

 

「丘からはラッコが実際定期的にホールアウトするのを見ることができました」とイービーは言う。「非常に面白いと思いました。今まで誰もそのようなことを報告したことがなかったからです」

 

カリフォルニア沿岸に生息するカリフォルニアラッコの個体群に対する脅威は多いが、エルクホーン湿地帯はラッコたちに安全な避難所となっている。科学者らは、ホールアウトすることでラッコは休息を撮ったり体を温めたり子どもの世話を安全に行ったりする機会を与えると考えている。しかし、条件が合致していなければならない。イービーとスコールズの観察は、ラッコたちはある場所ではホールアウトするが別の場所ではしないということを明らかにした。彼らの仮説によると、カヤックや猟師を含む他の野生生物から守られている静かな場所はラッコにとって伸び伸びする場所を探す際に非常に魅力的なのだ。彼らが頻繁にホールアウトを見かける別の理由は、湿地帯にラッコが多くいることだ。以前の研究はラッコが集団でホールアウトすることがより居心地よく感じているということを明らかにしている。

 

カリフォルニア大学サンタクルーズ校の海洋生物学者で研究の協働著者であるブレント・ヒューズによると、ラッコが湿地帯生態系において果たす役割は非常に重要だ。ラッコがケルプの森や他の海洋生態系に対してモル影響については長く研究者の間で知られていたが、エルクホーン湿地帯のような河口域における影響はごく最近研究で明らかになったばかりだ。

 

ラッコは貝やウニや他の小型の無脊椎動物を食べるが、湿地帯で多く見られる小型のカニを大量に食べる。ヒューズによると、カニはウミウシ類や当客類と呼ばれる海洋生物を食べるが、そうした生物は、海草の表面に生え窒息に至らしめる可能性のある藻類をブルトーザーのように食べる役割を果たす。

 

「河口域に海草が健康に繁茂していれば、その河口域は健全な河口域であるという指標になるのです」とヒューズは言う。

 

河口域や湿地帯は若い海洋生物の生育場所となり、沿岸コミュニティにとって嵐の緩衝地帯となる。最も重要な利点は、海草には藻類の繁殖を促進する有害な化学物質や栄養素を取り込み埋め込む力があるということだ。湿地帯には、大気中から二酸化炭素や他の温室効果ガスを取り込むことも示されている。

未来につなぐ

このような市民科学者のプロジェクトは科学者の業界に対しかなりのデータを提供してきており、イービーやスコールズの観察の多くがエルクホーン湿地帯でラッコが果たしている役割をより良く理解するために直接貢献している。

 

「この論文は、彼らがいなければ書くことができませんでした」とワッソンは言う。

 

現在、イービーとスコールズは未来に目を向けている。彼らには共に研究を行う同志のボランティアが10数名おり、7つの地点で週に一度湿地帯をモニターしている。イービーは、市民科学者がコミュニティの中で、調査に与える影響についてまず大切にしているという。

 

過去に一緒に研究を行った科学者たちは、イービーの観察をシェアする際に必要なプラットフォームを与えてくれたとイービーは言う。科学者たちがいなければ「話した人以外にその情報が行きわたることもなかった」という。

 

究極的には、こうした研究が沿岸の他のコミュニティを刺激し、河口域生態系の保全や保護を促進し、その結果ラッコが住むようになればとイービーは考えている。サンフランシスコ湾はカリフォルニアラッコに必要な生息域としての役割を果たす可能性があるが、こうした場所にラッコが再度定着するようになるのはまだまだ先の話だ。

 

イービーは振り返って、様々な発見に貢献する機会があって幸運だったと感じている。

 

「私たちはたまたま最適な場所で、最適な時に、助けてくれる最適な人たちが周りにいただけなのです」