【記事】ヤンキー・ドゥードル、海へ帰る | Otter returns to wild as Marine Mammal Center ramps up efforts to heal endangered species

本日は2017年10月26日付のSF GATEより、"Otter returns to wild as Marine Mammal Center ramps up efforts to heal endangered species"をお届けします。ラッコのリハビリ施設が増えたことで、今後の保護活動や研究が進むといいですね。

ドウモイ酸の毒に冒され保護されたラッコが、火曜日、嬉しそうに地元の海へ帰っていった。海洋哺乳類を守るために作られた、サウサリートの海洋哺乳類センターのプログラムが拡大しているおかげだ。

 

センターの科学者たちは午前9時、ハーフムーン湾のピラー岬のボートランプで無事ヤンキー・ドゥードルリリースすることができた。ヤンキー・ドゥードルはドウモイ酸で病気になってしまった海洋生物の1頭で、ラッコのリハビリを行うセンターの新しい試みの一部であり、ラッコに対する脅威に関するデータを集めるため、一時的に飼育下にあったものだ。

「リリースの度にーとくにこのラッコたちのリリースの場合、ケージからラッコを出してあげられること、そしてラッコが嬉しそうに海へ向かって歩いていることをうれしく思います」とマリン郡にある海洋哺乳類センターの獣医科学科学ディレクター、ショーン・ジョンソンは言う。「ラッコは陸の上を歩くのがあまり上手ではなく、最初はよたよたして浜の上では不器用に見えましたが、水に行き当たると嬉しそうにして普通のラッコのように振る舞っていました」

 

しかし、センターに運び込まれた時には、ヤンキー・ドゥードルは普通とは程遠い状態だった。温かく栄養価の高い水で繁殖する藻類から自然に発生する毒素であるドウモイ酸に晒されたためだ。そうした藻類の大発生はカリフォルニアでは「より頻繁に、より毒性が高く」なっているとジョンソンは言う。

 

毒素は貝やカニ、ムラサキガイ、カタクチイワシ、イワシ、ニシンなどに蓄積し、アシカやラッコ、オットセイなど、こうした生物を食べる海洋哺乳類を病気にしてしまう。

 

「西海岸で最初に有害藻類ブルームが記録されたのは1998年で、当時400頭のアシカがモントレー湾に打ち上げられた」とサンフランシスコクロニクル紙が報告している。それ以降、海洋哺乳類におけるドウモイ酸中毒の研究のほとんどは、アシカに焦点を置いてきた。なぜなら、この問題がアシカに最も多く広がっていたからだ。

 

「この毒は非常に深刻で、かつ速いのです」とジョンソンは言う。「私たちは高いレベルでドウモイ酸に汚染された魚をいつも食べているアシカを見ていますが、発作を起こし始めるまでが速いのです」

 

ジョンソンはまたこのように言う。「この20年、アシカについては非常に多くの仕事を行ってきました。アシカを野生に返すことができ、生き延びることができるかどうかを判断するための神経学的な評価を発展させてきました。申告な中毒から回復すると、そのアシカが生きていくことができるか、そして苦しむことがないかどうかを判断するために評価を行います。しかし、まだラッコに関してはこうしたデータがないのです」

カリフォルニア魚類野生生物局の上席研究者であるマイク・ハリスは、これまで何年もラッコのリハビリ施設のスペースが限られており、リハビリを行っても野生で自力で生きていく可能性が少ないとみられるラッコは安楽死になったものもあったという。

 

「限界があるのです」とハリスは言う。「座礁した動物の扱い数の管理しついては、選択的にならざるを得なかったのです」

 

モントレーベイ水族館は長い間カリフォルニアで唯一のラッコのリハビリ施設で、33年前に開館して以来800頭以上のラッコがラッコプログラムを通過してきた。研究者らはラッコにタグをつけ、その生涯殻生態系に対する影響まで全てを理解するためのデータを集めてきた。モントレーベイ水族館は保護されたラッコを最高10頭まで受け入れることができる。ヤンキー・ドゥードルに関しては、病状が進んでいたことやオスの成獣であったことからモントレーベイ水族館では受け入れることができなかっただろうとラッコプログラムのマネージャー、アンドリュー・ジョンソンは話す。

 

「私たちは自問しなければならないのです。『そのラッコは野生に返せるか、またそのラッコは個体数の成長に貢献できるだろうか』と」とジョンソンは言う。

 

今、保護されたラッコには他の選択肢もできた。

 

海洋哺乳類センターは現在、4頭までのラッコを受け入れることができる新しい施設ができた。センターは、カリフォルニア中央部に集中しているのラッコの個体群に対し影響を与えているドウモイ酸や他の脅威を研究している。

 

センターは今年先だって、初めての保護ラッコを受け入れたが、MRIによりそのラッコにはドウモイ酸中毒と一致する脳障害が見つかった。オットーはモロ湾のラッコで、9月22日にリリースされた。VHF無線装置を装着し、センターが海で最初の週追跡できるようにした。ジョンソンによると、オットーは元気にしているそうだ。

 

3か月前、センターはハーフムーン湾の浜にオスのラッコが打ちあがっており、具合が悪いようだという別の通報を受けた。

 

ジョンソンとそのチームはそのラッコは5歳のオスで、MRIによりドウモイ酸中毒であることが分かった。また組織にネコにより拡散される寄生虫であるトキソプラズマも発見された。

 

「ヤンキー・ドゥードルは奇妙な行動や異常な臨床兆候をみせていました。それがトキソプラズマのせいなのかドウモイ酸のせいなのかはっきりしませんでした」とジョンソンは言う。「目が見えていないような、どこを泳いでいるのかわかっていない様子かと思えば、非常に行動的になることもありました」

 

ヤンキー・ドゥードルはトキソプラズマの治療のため抗生物質を投与され、体力を回復するため輸液と栄養も投与された。

 

ドウモイ酸中毒に対しては特別な治療法がないが、水分補給し食べることで体がその物質を排泄できるよう強くすることができるという。

 

「最初に受け入れたラッコが野生で生き延び、元気でやっていることを本当に嬉しく思います。ヤンキー・ドゥードルもうまく行ってほしいですね」とジョンソンは言う。「最近、貝やカニ類により多くのドウモイ酸が見つかっているので、ラッコにとってはドウモイ酸は非常に大きな脅威となる可能性があります。私たちがなぜラッコを助けなければならないのか、なぜラッコを研究しその個体群への脅威を理解しなければならないのか、ヤンキー・ドゥードルは最初の例になってくれるはずです」