本日は2017年1月30日付のThe Mercury Newsから"Otter populations reach a new high, but great white sharks keep their
numbers at bay"をお届けします。
カリフォルニアではラッコの個体数は増加傾向ですが、生息域がそれに伴って広がっていません。生息域北端・南端でサメの噛みつきによる死が主な原因と考えられていますが、生態系は様々な生物が絡み合って構築されており、一つの種を守るために他を排除するということは難しい状況にあります。記事の内容自体に目新しい部分はあまりありませんが、最近ラッコに関する記事が少ないので翻訳しました。
サンタクルーズ—地上でもっとも毛深く、そしておそらく最も可愛らしい動物が、寝癖をつけて手にウニを抱え、のんびりと沖の波間に漂っている。
それも、世界で最も大きい捕食者である魚類、ホホジロザメの歯で捕まれるまでのことだ。
これらの殺し屋との対決がなければ、カリフォルニアラッコの復活はカリフォルニア中央沿岸部におけるもっとも大きな成功物語の一つになっていたかもしれない。ラッコは18世紀から19世紀に毛皮目的のためその生存が脅かされてしまったが、昨年1世紀ぶりの復活物語において一つの節目に達した。過去5年間、ラッコの数は少なくとも年に3%の比率で順調に増加している、と在メンロパークアメリカ地質調査所が9月に発表した。しかしラッコの個体数は未だに中央沿岸部から先での繁殖や生息域拡大に苦心している。ラッコ同様に脆弱で、生態系に欠かせないホホジロザメのせいだ。
「サメは口で調べるのです」とカリフォルニア魚類野生生物局の上席ラッコ生物学者マイク・ハリスがサメを指して言う。「サメにはコンベヤーベルトのような歯があるのです」
サメにはギザギザの門歯があり、その歯で若いサメは魚を、成魚になるとアザラシを捕食する。しかしホホジロザメは好奇心旺盛であるにもかかわらず視力が悪いため、間違えてラッコに噛みついてしまうことがある。しかしラッコは毛が多く脂肪が少ないためあまりおいしくないのだ。
「ここ10年ほど、サメによるラッコの死亡数は本当に増加しています」と魚類野生生物局の上席環境学者レイヤード・ヘンケルは言う。
ヘンケルや仲間の研究者らはどうしてそうなるのかはっきり分からない。しかし、それがホホジロザメの好物でもあるゾウアザラシの個体数増加と関連があるのではないかと考えている。ゾウアザラシの繁殖地はラッコの生息域の北端と南端にある。ゾウアザラシの個体数は1972年に海洋哺乳類保護法が施行されて以来増加している。従ってサメはより多くのエサがあり、そのためより繁殖力が増しているのだろう。
ラッコと同様に、ホホジロザメもまたアメリカの絶滅に瀕する種の保存に関する法律で保護されている。
カリフォルニア州は1990年代にホホジロザメの捕獲を禁じ、一般的な漁の規則を厳しくした。しかし科学者らはホホジロザメが増加しているということに100%同意できないでいる。ホホジロザメの研究は非常に困難なものだからだ。
「しかし、私たちは確かに知識が増えています」とカリフォルニア大学サンタクルーズ校の生態進化生物学部の教授、ダン・コスタは言う。
コスタは1970年代以降、サメにかまれたラッコの観察を行ってきた。また魚類野生生物局は1968年からラッコの死因にして記録を続けており、現在は回収されたラッコの死体の半数以上がサメの噛み傷による死であることが分かっている。
「サメによる噛み傷がラッコの死を増加させている最も大きな要因だと考えられます」とハリスは言う。
研究者らは、サメは実際噛みついたラッコを食べるわけではないということを知っている。「試食のようなものと位置づけられるでしょう」とハリスは言う。ラッコに噛みついているのは恐らく魚から大きな獲物に対象を移しつつある若いホホジロザメだろうとハリスは言う。
サメの成魚はアザラシのようなより大きな獲物を好むからだ。ラッコには脂肪層がなく、1平方インチ当たり100万本、つまり私たちの頭の10倍の量の毛で覆われている。
「サメはラッコを試食してみて、吐き出してしまうのです」とコスタは言う。体表に傷がついただけでも、ラッコにとっては致命的だということも付け加えた。
カリフォルニアラッコの個体群はアニョヌエボ州立公園からピスモビーチまで350マイル(約560km)に渡っている。ラッコとサメが致命的なインタラクションを起こすのは、ラッコの生息域の両端で、ラッコがゾウアザラシの生息域へふらりとやって来るのだ。
海岸を行き来する人が今月ラッコとゾウアザラシが一緒に集っているところを期待できるわけではないが、ゾウアザラシは毎年エサを食べるための回遊から戻ってきたばかりで、サメをおびき寄せる。捕食者であるサメは、腹を空かせてアニョヌエボやサンシエモン近郊のピエドラスブランカス州立海洋保護区に脂肪の多いアザラシを食べに来るのだ。
そこで神経質な若いサメは間違えて口に合わないラッコに噛みついてしまうのだ。
ラッコは依然脆弱ではあるものの、個体数は増加を続けている。9月、アメリカ地質調査所とそのパートナーの科学者らは昨年のカリフォルニアラッコの個体数が3,272頭だったと発表した。これは科学者らが絶滅に瀕する種の保存に関する法律に基づく絶滅危惧種リストからラッコを外すのに一歩近づいたということになる。
しかし科学者らは、リストからの除外は慎重に行われなければならないという。
科学者らが保護状態の変更を考慮するにあたっては、ラッコは「3年連続しきい値を超えなければならない」と魚類野生生物局のヘンケルは言う。
ヘンケルの同僚ハリスは、絶滅危惧種からラッコを除外するためのしきい値、3,090頭という個体数は、1980年に設定されたものだと言う。しかし、ハリスやヘンケルのような多くの海洋科学者らはそうした数値は時代にそぐわないかもしれないと言う。ラッコの調査やカリフォルニアの海洋環境は当時からはるかに進んでいるからだ。
ラッコの個体群が本当に拡大するには、ラッコは「北もしくは南へ移動する必要があるでしょう」とヘンケルは言う。
カリフォルニア中央沿岸部は、現在のラッコの個体数を維持するには広さも資源も十分備わっているとヘンケルは考えている。個体数が増加しエサや場所をめぐって個体間の競争が激しくなってはじめて、ラッコはサメという障壁を乗り越えてさらに北や南へ移動するのではないかとヘンケルは付け加えた。
しかし、ハリスとそのチームはラッコの生息域とされている場所の南、ダバポイント、カタリーナ、サンタバーバラ島の周辺でラッコが泳いでいるのを目撃している。ハリスはそうしたラッコを「管腔外に迷い込んだ者」と呼んでいる。
一つ問題がある。そうしたラッコたちは全てオスなのだ。
科学者によれば、オスは交尾の相手と巡り合うチャンスを増やすため、一般的にメスよりも生息地から離れた場所へ冒険する。しかしメスがすぐにそうしたエリアに移動してくるということは起こりにくく、またラッコは歴史的に自分が住んでいるところに留まる傾向にあるとヘンケルは言う。
1900年代初め、カリフォルニアラッコの個体数はビッグサーの有名なビクスビー橋に囲まれた洞窟で毛皮猟のハンターから逃れた僅か50頭ほどだった。地元民はラッコがいることを知っていたが、ラッコのために黙っていたと科学者らは言う。
ラッコもサメも獲ることができないというのは、海にとっては良いことだと科学者らは言う。
「動的環境なのです」とハリスは言う。食物網から特定の一つの種を排除したり枯渇させたりすれば、バランスが大きく崩れることになる。「ラッコについては、私たちはそういうケースを見てきました。私たちはラッコをほぼ消滅させたのですから」
The Mercury News
Otter populations reach a new high, but great white sharks keep their numbers at bay
By SUKEE BENNETT January 30, 2017
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