【記事】2016年のカリフォルニアラッコの個体数指数3,272に増加 | Sea Otter Survey Encouraging, but Comes Up Short of the “Perfect Story”

本日は、今日付けのUSGS(アメリカ地質調査所)のニュースリリースから、”Sea Otter Survey Encouraging, but Comes Up Short of the “Perfect Story” "をお届けします。
今年のカリフォルニアラッコの個体数は前年を大きく上回り、3,272頭と過去最高になりました。回復の傾向にはあるものの、依然として生息域北端・南端での死亡率は高いままとなっています。

カリフォルニア州サンタクルーズ—本日発表されたアメリカ地質調査所とその協力団体による年次個体数調査によると、カリフォルニアラッコ Enhydra lutris nereis は引き続き回復へ向かっている。

メスのラッコと大きい子ども。生息域での調査の際数えられた。ケルプクラブを食べている。Joe Tomoleoni, USGSPublic domain
メスのラッコと大きい子ども。生息域での調査の際数えられた。ケルプクラブを食べている。Joe Tomoleoni, USGSPublic domain

カリフォルニアラッコの個体数が初めて3,090頭を超えた。これはアメリカ魚類野生生物局がラッコを「絶滅に瀕する種の保存に関する法律」による保護リストから外す際に超えなければならないしきい値となっている。しかし、生息域北部および南部地域では個体数が減少しており、今後も資源管理当局にとって懸念材料となっている。

今年の調査結果は、過去5年間、年3%以上で増加していることを示している。個体数指数(過去3年のカウント値を平均して算出される統計的な代表値)は2013年の2,939頭から3,272頭へ増加した。この増加は生息域中央、モントレーからカンブリアにかけてのカリフォルニア沿岸におけるラッコの個体数が大幅に増加したことによるものである。

 

「今年個体数が多かったのは、調査の際の視界のコンディションが良かったことも理由の一つに考えられますが、生息域中央部における入手可能なエサが増えていることを反映しているように思われます」とアメリカ地質調査所調査生態学者でのラッコ調査プログラムを率いるティム・ティンカーは言う。「カリフォルニア北部および中央部でウニが増殖し、ラッコにとってはエサが突然豊富になり、その結果より多くの子どもや亜成獣が生き延びて成獣になることができたのでしょう」

全体的な個体数指数は増加傾向にあるものの、北部および南部の準個体群は5年連続でマイナスで、年に2.5%から0.6%減少している。「その生息域周辺で座礁したラッコが多く目撃されており、そうしたラッコは高い比率でサメの噛み付きによる致命傷を負っています」とカリフォルニア魚類野生生物局の生物学者、マイク・ハリスが言う。「こうしたラッコの死により、この地域のラッコの個体群の成長が阻まれているのでしょう」

生息域の端における個体数の減少は、ラッコの回復の長期的な見通しを示しているようだ。「生息域の端における減少傾向は、おそらく過去10年間生息域が広がらなかったことが理由でしょう」とティンカーは説明する。「こうしたラッコたちは本来新しい生息地の開拓を促す個体群となるからです」

カリフォルニア本土の個体数に加え、アメリカ地質調査所は南カリフォルニア沿岸のサンニコラス島の準個体群の調査も行なった。この個体群は1980年代に移植により確立したものだ。1990年代は少数にとどまったが、過去10年間、年に13%という比率で急速に増加している。「サンニコラス島のラッコは繁栄し続けているので、中には最終的に南カリフォルニアのチャネル諸島の他の島へ移動し、そこに定住するようになるラッコがでてくるかもしれません」とアメリカ地質調査所の生物学者で年次個体数調査のコーディネートを行なっているブライアン・ハットフィールドは言う。

1980年以降、アメリカ地質調査所の研究者らは年次個体数指数を計算し、カリフォルニアラッコの傾向を評価してきた。カリフォルニアラッコが「絶滅に瀕する種の保存に関する法律」で制定されている絶滅危惧種のリストから外れることを検討されるためには、カリフォルニア州魚類野生生物局のカリフォルニアラッコ回復計画のもとで作られたしきい値によると、個体数指数が3年連続3,090頭を超えなければならない。海洋哺乳類保護法のもとで持続可能に適した個体数レベル、つまり環境収容力や生態系の健全性を考慮した上で最大限の生産性を得られる個体数レベルに達するには、カリフォルニアラッコの個体数は恐らくカリフォルニアで8,400頭ほどに達することが必要だろう。

「個体数指数が始めて3,090を超えたことに勇気付けられます」とアメリカ魚類野生生物局のカリフォルニアラッコ回復コーディネーター、リリアン・カーズウェルは言う。「でも、個体数が継続的に成長するには生息域の拡大が必要になるでしょう。それはつまり、ラッコはどうにかして現在の生息域の端にあるサメの鎧を打ち破らなければならないということです。長期的には、私たちが追っているのはラッコの個体数だけではなく、ラッコやその他の沿岸に生息する生物がともに発展できる生態系における生態学的な関係を再構築することなのです」

 

ラッコの個体数調査と座礁プログラムは、ラッコや、沿岸生態系における捕食者としてのラッコの役割を調査する大きな調査プログラムの一部に過ぎない。サンタクルーズとモントレーの間に位置するエルクホーン湿地帯では、最近の研究ではラッコがカニを食べることにより海草棚の健全性を向上させていることが示されている。また、アメリカ地質調査所の研究者はモントレーベイ水族館、エルクホーン・スルー・ナショナル・エスチュアリン・リサーチ保護区、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、カリフォルニア州魚類野生生物局と協同し、この独特な生息域における個体群の研究を行なっている。カリフォルニア大学サンタクルーズ校、アメリカ地質調査所およびモントレーベイ水族館による最近の研究では、ウニの捕食者であるヒトデが消耗病で失われたために起こったウニの増殖に対し、モントレー付近のラッコがどのように反応しているかの調査を行っている。研究者らはヒトデがいない場合、ウニがケルプの森を食べ過ぎから防ぐ役割を果たしてくれるのかを調査している。

モントレーベイ水族館のラッコ研究者ミシェル・ステッドラーが記録帳にラッコの活動を記録している。アメリカ地質調査所とカリフォルニア大学サンタクルーズ校のラッコの行動に関する研究の一環。Tania Larson, U.S. Geological SurveyPubli
モントレーベイ水族館のラッコ研究者ミシェル・ステッドラーが記録帳にラッコの活動を記録している。アメリカ地質調査所とカリフォルニア大学サンタクルーズ校のラッコの行動に関する研究の一環。Tania Larson, U.S. Geological SurveyPubli

調査方法

  • 年次個体数指数は、アメリカ地質調査所、カリフォルニア魚類野生生物局の原油流出防止対応室、モントレーベイ水族館、カリフォルニア大学サンタクルーズ校、アメリカ魚類野生生物局、アメリカ海洋エネルギー管理局の研究者、学生、ボランティアにより、陸地からの望遠鏡による目視および低空飛行の飛行機による目視により行われ、算出されている。
  • 今年調査が行われたのは、サンマテオ郡のピラー岬から南はサンタバーバラ郡・ベンチュラ郡境近くのリンコン岬に及ぶ海岸、またサンニコラス島も含む。

ラッコについて

  • ラッコは毛皮貿易時代後、カリフォルニアでは絶滅したと考えられていたが、1930年代に再発見された。その当時わずか50頭がビッグサー海岸沖の沿岸に残っていたと記録されている。
  • ラッコは岩礁の下干潮帯の生態系においてキーストーン種とみなされている。ラッコはウニをエサにしており、ウニは放っておくとケルプ床を滅ぼしてしまうからである。
  • 研究者らは沿岸生態系の指標としてのラッコの研究も行っている。ラッコは沿岸でエサを食べ暮らしており、沿岸地から流れ込む毒性微生物ミクロシスチンのような汚染物質や病原体に汚染される最初の捕食者だからである。
  • 座礁しているラッコを発見した場合は、このウェブページに掲載されている施設に通報することになっている。


詳しい調査内容や地図などは「2016年春季カリフォルニアラッコ個体数調査結果」(Spring 2015 California Sea Otter Census Results)でオンラインでこちらから見ることができる。