本日は2016年8月1日付のTHE TRIBUNE紙より、"Shark, otter researchers work together in Morro Bay to solve ocean mysteries"をお届けします。カリフォルニア沿岸で急増する、ホホジロザメの噛みつきによるラッコの死。ラッコ研究者とサメ研究者が共同でその原因の解明に挑んでいます。一部、不快になる可能性のある画像・映像が含まれています。
ラッコ生物学者のマイク・ハリスとサメ生物学者のラルフ・カリアーがモロベイでサメに噛まれたラッコの解剖を行っている。注意:一部、不快になる可能性のある表現が含まれています。Joe Johnston and Travis Gibson jjohnston@thetribunenews.com, tgibson@thetribunenews.com
ラッコの死体から漂うにおいがモロベイの風の中に刃のように切り込んでくる。ラッコ生物学者のマイク・ハリスとサメ生物学者のラルフ・コリアーはそのにおいと戦いながら、ホエールウォッチング船がモロベイ沿岸沖に漂っていたのを見つけたラッコの標本を調べていた。
「これはまさにサメの噛みあとだね」コリアーがラッコの厚い毛をかき分け小さな傷を露わにして言う。こうした致命的な傷は、若いホホジロザメに噛まれたことによるものだとコリアーは結論づけた。
先週、モロベイの海洋哺乳類センターの隣に設置してあるテントで覆われた研究施設で、コリアー、ハリス、そしてラッコ生物学者のコリーン・ヤングはこのラッコがなぜ、どのようにしてこの施設の作業台に来ることになってしまったのかという重要な疑問の答えを見つけようとしていた。ハリスとヤングはカリフォルニア州魚類野生生物局の生物学者である。
ハリスは言う。「こうしたものが、私たちが集めることのできる、ラッコの死亡原因でサメによる噛みつきが増加していることを理解する助けとなるものなのかどうか調べるため、サメに関する専門知識を得ようと試みているのです」
50 | パーセントの中央沿岸部で死んだラッコはサメに殺されたものだった |
これはハリスがここしばらく調べていた疑問だった。サメに噛まれるラッコの数が激増していることに研究者らは気が付いていたからだ。ハリスが共著した研究によれば、エストロベイからコンセプション岬にかけてラッコがサメに噛まれる頻度は2003年から8倍に増加した。昨年発表されたその研究では、カリフォルニア沿岸で発見されたラッコの死体の50%以上が、サメに殺されたものだったという。
その状況は昨年とさして変化していない。
6月のはじめから26日間でカリフォルニアで発見された34頭の死体のうち、18頭がサメに噛まれたものだったとハリスは言う。
「その他にも8頭、(サメによる噛みつきであると)疑っているものがありますが、腐敗が進んでいるため断言するのは難しい状態です」とハリスは言う。
サメの行動の変化
2年前、コリアーとハリスはお互いに学ぶべきものがあるかもしれないと協力することにした。
「ラッコは、サメの行動の指標となるものではないかと思います。サメがラッコを食べた形跡はありませんし、浜で見つかるラッコの死体には、季節的なパターンがあるように思えるからです」とハリスは言う。「数年前、サメの専門家らは成体のサメはみんな行ってしまったと言っていましたが、年間を通じてサメに噛まれるラッコがいたので、別のグループの人たちと話をするようになったのです」
「その理由を探るのが私たちの役目なのです」 サメ生物学者 ラルフ・コリアー |
水曜、コリアーはカリフォルニア沿岸で見つかった5頭のラッコの死体にある噛み跡を調べていた。うち1頭は4月にアビラビーチで見つかったものだ。噛みついたサメの大きさを推定するためだ。歯の跡の間の長さを比較して計算し、これらのラッコの死に関わったサメはほとんどが長さ8~9フィート(約2.4~2.7m)の若いサメではないかと断定した。一方で成体のサメもまたラッコを襲うということも知られている。
サメの大きさとラッコが襲われた時期を知ることで、研究者らは中央沿岸部の若いサメは、成体になり季節的な回遊を始める前、年間を通じて出没することを知る手助けとなったとコリアーは言う。
また、コリアーはホホジロザメが食べるエサの大きさにも変化がみられると言う。
過去数年コリアーは、9~10フィート(約3m)に達するまでホホジロザメが海洋哺乳類、つまりアシカやゾウアザラシのようなき脚類は捕食しないと考えていた。しかし、ハリスが見つけたラッコにあったサメの噛みあとは、6フィート(約1.8m)のサメのものもあった。研究者らはサメが小さいき脚類と間違えてラッコに噛みつくのではないかと考えている。
これまでホホジロザメの胃からラッコが見つかったことはない。
「これはサメがより小さいサイズの海洋哺乳類を追いかけるようになったということなのでしょうか?それとも、海洋の状態が変化し、他の自然なエサとなる動物たちをそのエリアから追い出してしまったということなのでしょうか?」コリアーは言う。
「その理由を探るのが、私たちサメの専門家の役目なのです」
新たなDNA検査
疑問点はまだあるが、ラッコを襲っているのは中央沿岸部で数が増加しているホホジロザメという種であるというのは間違いないだろう、とコリアーは言う。アオザメやオナガザメのようなサメも可能性はあるが、どちらもラッコが集まっているような沿岸近くには泳いで来ることがなく、ラッコの死体に通常見られる直径14インチ(約35㎝)の歯型には一致しない。
コリアーとその共同研究者らは、ラッコにある噛み傷に残された歯のエナメル質を利用し、サメのDNAプロファイルを作成する方法を開発している。これまでにない試みだ。そこから得られる情報は、ほとんど知られていないホホジロザメの回遊パターンを調べるために利用される。
45 | エストロベイでみられるラッコの数 |
300 | ピスモビーチ沖で数えることができたラッコの数 |
サメの歯型と同時に、タグがついたラッコに装着された機器から水温を調べることができる。ハリスはそれを使ってラッコがいた周囲の環境を知ることができる。ハリスは夜間恐らく寝ている時に待ち伏せされて殺されたラッコがいることを突き止めている。
ラッコは今でも絶滅危惧種に制定されているが、モロベイでは過去25年間より個体数は増えているとハリスは言う。時には湾内で45頭ほど泳いでいることがある。
「春の調査時、ピスモビーチ付近には300頭ほどいました」とハリスは言う。「とはいっても、その数は変動しますが」
科学的なプロセス
しかし、ラッコの個体数は復活を遂げているように見える一方で、ホホジロザメの個体数も回復している可能性があり、18世紀から19世紀の毛皮貿易時代の壊滅的な影響から復活しようとしているラッコの個体数の更なる成長を阻んでいる。
「生息域に変化はありません。ラッコの回復という目標を達成するためには、実に必要なことなのです」とハリスは加えて、現在のカリフォルニアラッコの生息域はガビオタからサンフランシスコ近くのアニョ・ヌエボの少し北のほうまでだと言う。「私たちは、ラッコに過去の生息域にもう一度復活してもらうことが必要です。しかし、残念ながら、この生息域近辺で起こっているサメと関連する死亡率は、そうした復活の足かせになる要因になっているのです」
ハリスとコリアーは、彼らの研究がサメの行動を変えることはできないことは分かっているが、これが海洋生態系にとって重要な礎石であるホホジロザメやラッコを理解する一つの重要なステップであることを認めている。
「これは科学のいちプロセスにすぎません」とハリスは言う。「私たちが守るべきラッコに影響を及ぼしているダイナミクスを理解し、願わくばその復活という目標を達成させたいだけなののです」
モロベイで母親にあやされているラッコの子ども
2015年1月5日 Joe Johnston jjohnston@thetribunenews.com
THE TRIBUNE
Shark, otter researchers work together in Morro Bay to solve ocean mysteries
AUGUST 1, 2016 2:59 AM BY TRAVIS GIBSON
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