本日は2016年3月12日付のSanta Cruz Sentinnel ENVIRONMENTより、"Our Ocean Backyard: Can the sea otter range expand?"をお届けします。
翻訳後、大きく編集されておりましたので3月28日に翻訳を修正しています。
カリフォルニアラッコは、カリフォルニア沿岸のケルプの森を維持していることから、キーストーン種であるとみなされている。何年にもわたる集中的な保全活動のおかげで、ラッコの個体数はサンフランシスコからサンタバーバラにかけての水域で3,050頭を超え、生息域の主要なエリアにおける個体群は環境収容力に達するか、あるいは近くなっている。
数十年の間、猟師のターゲットになった後、カリフォルニアラッコは絶滅したと考えられていたが、1938年にビッグ・サーで小さな群れが発見された。カーメルを拠点とするフレンズ・オブ・ザ・シーオター(The Friends of the Sea Otter)などが、ラッコの保護のため、国や州に法律を整えるよう働きかけた。漁網(以降ラッコの生息域では禁止された)や毒素、トキソプラズマ症などの感染症、サメによる噛みつき等の脅威のため、ラッコの回復は時に遅くなることもあった。エサが確保できるかどうかもまた同様に、常に状況を左右する要素だった。
オター・プロジェクト(The Otter Project)と環境保護センター(Environmental Defence Center)の尽力により、2013年初頭、連邦政府は「ラッコ不在海域」(No Otter Zone)を解除した。これは1987年にコンセプション岬からメキシコ国境まで設置されたものだった。ラッコ不在海域の解除により、ラッコは南へ移動することができるようになり、海岸の崩落を引き起こす潮せき作用の緩衝となり、気候変動により産出される過剰な炭素を吸収し、生態系に恩恵を与えるケルプの森を構築することができるようになる。
しかし、生息域の拡大には障害がある。
「北や南への生息域の拡大を制限している主な要因は、ここ10年みてきたサメの噛みつきによる死亡が増加していることです」とカリフォルニア大学サンタクルーズ校及びアメリカ地質調査所のティム・ティンカーは言う。
サメの噛みつきによる死亡率は生息域の北端と南端で高く、現在生息域の拡大を困難にしている。
「なぜサメの噛みつきが起こるのか完全に理解しているわけではないので、これがいつまで主要な死因でありつづけるのかもわからないのです」と言う。
「カリフォルニアラッコやアラスカラッコに見られる歴史的なパターンに基づくと、最終的にラッコが18世紀から19世紀にかけての毛皮貿易以前に占めていた生息域(これにはサンフランシスコ湾のような沿岸域や河口域も含みます)へ、北方もしくは南方へと広がっていくだろうと考える理由があります」とティンカーは言う。
範囲の拡大には何十年という時間がかかることもあり、また動物の移転が必要な場合もある。例えばブリティッシュコロンビアとアラスカ南東部の以前のラッコの生息域における再定着は、アラスカ南西部からの再導入により非常に加速されたとティンカーは述べた。
カリフォルニアラッコの生息数の復活は、その価値について説得力のある物語を提供してきた。
「浮かび上がっている大きな現象は、ラッコが外海沿岸の岩礁と内陸の河口部の両方の沿岸生態系に対する機能について、非常に大きな影響を持っているということなのです」とティンカーは言う。
「長い間ラッコはいませんでしたが、その後、このキーストーン種である捕食者は目覚ましい保全活動のサクセスストーリーを反映し、再びこうした生態系の機能的な役割になっています。科学者として、私たちはラッコが自然に回復するという実験を通じて、この頂点捕食者の生態系における役割を学ぶ機会がありました」とティンカーは話した。
ラッコがもたらしてくれる生態系の恩恵を西海岸で広く分かち合う方法の一つは、ラッコの住むエリアを拡大させることだ。しかし恐らく難しいだろう。生息域の北端と南端でサメが襲うため、ラッコは現存する生息域に押し込められていることを発見したからだ。
現在の生息域であるサンフランシスコとサンタバーバラの北と南にラッコが移動するよう促しつつ、生息域の拡大をしなければならないのだろうか。
「これは最も重要な問題で、科学者や資源管理者、漁業や観光業などの他の利害関係者や一般市民によって議論されなければならないことだと思います」とティンカーは言う。
「ラッコがかつての生息地に再定着することがいいことなのか、悪いことなのか、言うことはできませんが、ラッコの回復によって生態系へ大きな影響が起こっているということは言うことができます。まだ発見されたばかりであるため、そうした影響の多くはまだ認識されていないのです」とティンカーは言う。「多くの方が言うように、ラッコがよく食べる無脊椎動物に依存している水産業関係者の多くは、ラッコの回復により負の影響を受けています」
しかし、ラッコはウニを食べることで様々なよい影響をもってケルプの森に恩恵を与えている。もしラッコが食べなければ、ウニはケルプを食べてしまうからだ。
「健康で弾力性のあるケルプの森は、商業的に重要な魚の生育地となり、海面上昇とともに増加している高波から海岸を物理的に守り、また炭素隔離をすることで、人々に非常に多くの恩恵を与えているのです」とティンカーは言う。
「南カリフォルニア湾にあるサンニコラス島における調査では、こうしたパターンが北カリフォルニア同様、南カリフォルニアのケルプの森でも起こっていることを示しています。同時に、エルクホーン湿地帯での共同調査は、ラッコの影響はケルプの森に限定されているわけではないことを示しています」とティンカーは言う。
ラッコは河口部でも繁栄することができ、海草や塩性湿地の生息域の回復に対してプラスの影響を持つなど、そうした生態系にも間接的な影響を盛ることができる。
史料によると18世紀と19世紀の毛皮貿易以前には、ラッコはサンフランシスコ湾のような主要な沿岸河口域で非常に多く生息していた、とティンカーは言う。こうし生態系においてラッコが再定着することにより、復元と保全活動に恩恵をもたらす可能性があることを示した。
「一般的に、浮かび上がっている大きな状況は、ラッコは沿岸の岩礁や河口域を含む沿岸生態系の機能に対して非常に大きな影響を持っているということです」とティンカーは言う。
ダン・ヘイフリーはオニール・シー・オデッセイのエグゼクティブ・ディレクターである。コンタクトはこちらまでdhaifley@oneillseaodyssey.org
Santa Cruz Sentinnel
Our Ocean Backyard: Can the sea otter range expand?
By Dan Haifley POSTED: 03/12/16, 10:00 PM PST
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