ラッコの繁殖活動 | Reproduction

最終更新日:3/27/2018

交尾

ラッコは一年を通じて繁殖します。複婚で、雄も雌も複数の相手と交尾を行います。

 

通常は雌雄は別のグループを作っていますが、発情期になると雌が雄のグループの中に入り込んでいきます。雄は発情している雌を見つけると、鼻先でつつくようなしぐさを見せます。雌がその雄に興味を持つと、カップルが成立します。じゃれ合うようなしぐさを見せたあと、交尾に至ります。

ラッコの求愛行動

 

 アザラシやアシカなど他の海洋哺乳類とは異なり、ラッコは水中で交尾を行います。

雄と雌は並んで浮かび、雄が雌の背後から覆いかぶさるように交尾します。体勢を維持するため雄は後ろから雌の鼻に噛みつくため、傷になり出血することがたびたびあります。交尾後の雌は鼻に怪我をしていることが多いのですぐにわかります。ただ残念なことに、その傷が致命傷となり、感染症をおこしたり餌を取れずに死んでしまう雌も少なくありません。きれいな鼻のままでいるメスもいます。

鼻がきれいな母親ラッコ
鼻がきれいな母親ラッコ
鼻が傷ついている母親ラッコ
鼻が傷ついている母親ラッコ

妊娠

妊娠期間は6か月から9か月ほどですが、遅延着床(受精しても着床しない場合、受精卵が最長で3か月ほど仮眠状態になる)が起こることがあるため、長くなる場合もあります。妊娠しているかどうか外から見ただけではほとんど分かりません。

出産

ラッコは通年出産しますが、アラスカのラッコは春に出産することが多いそうです。出産は通常水中で行いますが、陸上で出産することもあります。カリフォルニアのラッコは、アラスカのラッコに比べて出産の頻度が2倍くらいあるのだそうです。産まれる時の大きさは約1.4~2.3kg程度と言われています。

こちらは、ラッコの保全活動では世界トップの施設、モントレーベイ水族館裏にあるグレート・タイド・プールという、外海につながっている潮だまりでのラッコの出産です。2016年3月5日午後、野生のラッコがスタッフや来場者が見守る中出産しました。この時期はエルニーニョにより海が荒れており、穏やかなタイドプールを選んで出産したようです。

通常は一度の妊娠で1頭の出産ですが、2%ほどの確率で双子が生まれることもあります。ただし、ラッコの子どもは親に依存するところが大きく、手がかかるため、通常どちらか一方が生き延びることとなります。
下の写真は非常に珍しい双子のラッコです。

Mother sea otter with rare twin baby pups

ラッコはシングルマザー

子育ては雌が単独で行います。雄は子育てには全く関わりません。

子育て期間は約4か月から12か月で、母親は子どもを腹の上にのせて休んだり移動したりします。

自分で潜り餌を取ることを習得しないうちに母親と離れてしまうと、子どもは数日も生きていくことができません。

 

ラッコが生きていくために必要不可欠なスキルである「潜水」「毛づくろい」、また食べられるエサや石などの道具の使い方も母親が子供に教えます。

 

雄は5歳から8歳くらい、雌は5歳くらいで、生殖可能な成体になります。

寿命は15年から20年ほどと言われています。

 

平均値 参考AnAge

  • 性的成熟までの期間:雄 1,369日 雌 974日
  • 妊娠期間:140日
  • 授乳期間:175日
  • 胎数:1頭
  • 年間出産数:0.8頭
  • 妊娠から次の妊娠の間:548日
  • 出産時の体重:1,868g

授乳

ラッコのメスの乳首は後脚の付け根に2つありますが、そのため、授乳の際は子どもはお尻を母親の顔のほうに向けてミルクを飲むことになります。子どもは固形のエサを食べられるようになってもミルクを飲みます。

毛づくろい

ラッコの子どもは生まれた時からふわふわで水に浮きやすい幼毛で全身を覆われています。母親はグルーミングを頻繁に行い、毛に空気をたくさん吹き込みます。生後1か月ほどで毛が生え変わるってはじめて子どもは水に潜れるようになります。

フィーディング

子育て中の母親は通常の最大2倍のエネルギーが必要となります。

子どもが自力で餌を獲ることができるようになるまでは、母親が子どもの分も餌を獲ります。とってきたエサをせがむ子どもに次々と与え、母親は何度もエサを獲りに潜ります。そのため子育て中の母親ラッコには非常に負担がかかり、極端な栄養不足やストレス過多などに陥る「授乳末期症候群」(End-lactation Syndrome)になり、繁殖期のメスの大きな死因の一つとなっています。

様々な苦難

子育て中の母親には様々な苦難が襲い掛かります。
時には、オスのラッコが母親に交尾を迫ってくることもあります。場合によっては、自分が生きるために子どもをあきらめてしまうこともあるそうです。

トラブルをもたらすのはオスだけではありません。

母親が餌を取りに行く間、子どもは無防備に一人で波の上に浮かんで待っているしかありません。それを知っているメスが子どもを人質にとって、母親がとってきたエサを奪うこともあります。また、母親が潜っている間に波に流されたり、またサメやワシなどに襲われてしまうこともあります。

同じ海で暮らす他の動物たち、あるいは人間によるハラスメントからも子どもを守らなければなりません。

通常、ラッコとアザラシはお互いを気に留めることはほとんどありませんが、この母親が砂浜に上がって休もうとした際、アザラシが子どもに手を出したため、母親が歯をむき、自分の体の何倍もあるアザラシ2頭に立ち向かいました。母親がアザラシと戦っている間、子どもはアザラシにぶつかって転がり落ちてしまいます。それに気づいた母親は慌てて子どもを助けに行き、泳いでその場を去りました。