【記事】新たな発見をうむラッコ研究 | Sea Otter research nets new marine discoveries

本日はnorth shore newsより、"Sea Otter research nets new marine discoveries"をお届けします。カナダのサイモンフレーザー大学で博士号と同時に名誉ある総督メダル賞を受けたジェン・バートさんは、ブリティッシュコロンビア州沿岸のラッコを含む生態系について研究を行い、また一方で沿岸住民や研究者・利害関係者を含めたグループを結成し、ラッコの回復をどのように管理・受入れするかを見極めています。

ノースバンクーバーの住民でサイモンフレーザー大学院生ジェン・バートはラッコの個体群の回復が海洋生態系に与えた影響に関する論文のリサーチを行った。バートは最近、Ph.Dを取っている間にカナダ総督アカデミックメダル賞(訳者注:カナダの学生にとって最高の栄誉ある賞)を受賞した。

「生態系のエンジニア」が海洋生態系に大きな影響

水中の森があふれていた。

 

スキューバギアに身を包み、たくさんの科学機器を身につけたジェン・バートは、寒冷なブリティッシュコロンビア州海岸沖の海面下を探索していた。目的は 「ラッコの個体数の回復は他の海洋生態系や沿岸生物群にどのような影響を与えているだろうか」

 

バートによれば、20世紀が到来する前に毛皮交易により「ブリティッシュコロンビア州の海岸全体からラッコがすべて排除され」るまで、ラッコは「基本的に日本からメキシコに至るまで」すべての海に生息していた。

 

しかし、1960年の終わり頃に何かが起こり始めた-ラッコが復活し始めたのだバートは言う。

 

「実はそのラッコは、アラスカに残っていた小さな個体群からバンクーバー島西海岸沖の小さな地域に再導入されたものです」とバートは言う。「それ以来、ラッコの個体群はその場所から増加し拡大を続けています」

 

この地域全体でラッコの個体数が徐々に回復するにつれ、ゆくゆくはブリティッシュコロンビア州の外洋の大部分に再び生息することになるだろうとバートは言う。主にラッコの生息地である海中の岩礁では、ウニの数が非常に少なく、ケルプが非常に多い傾向がある。

 

ラッコが実際に海洋生態系を変える出来事の連鎖を誘発するということを理解することにより、ラッコは生態系のエンジニアとして有名な存在になりました」とバートは言う。

 

この論点に関する博士論文の調査を行いながら、バートは何百時間も海中の「心地よいケルプの森」の中で過ごした。しかし、ブリティッシュコロンビアの海中生態系にラッコがどのように影響を会与えているかを見ようとしても、結局海洋生物の本質的な関係をより覆い隠してしまった。

 

「私が貢献したのはラッコだけではなく」、ヒトデもウニを食べており、これがケルプ密度にも大きな影響を与えているということを理解するということだとバートは指摘する。バートが発見したタイミングは偶然だった。2015年にヒトデの消耗性疾患が発生し、ニチリンヒトデの個体群全体が壊滅的な打撃を受けた。その結果、小型~中型のウニの数が爆発的に増加した。大型で肉質のよい種類を好むラッコはこうしたウニを普通は虫してしまう。そうしてこのエリアのケルプの密度も大幅に低下した。

 

「私が発見したのは、ケルプの森の回復力に貢献しているのはラッコだけではないということです。ヒトデはラッコと補完的な役割を果たしています」とバートは言う。「従ってこれらのヒトデがいなくなった時には、ケルプの森は30パーセント減少していました」

 

バンクーバー北部に住み、サイモンフレーザー大学で環境・資源管理の博士号を取得したばかりのバートは、地元の沿岸部に住む先住民族コミュニティと協力することも研究の重要な要素だと強調する。

 

ラッコに話を戻すと、このフワフワの生物は「毎日体重の3分の1を食べなければならない」ため、ウニやカニ、二枚貝、ムラサキガイ、ホタテを大量に食べることになる。

 

「ラッコは人間が食べたいものを全部食べるので、人間にとっては大問題です」とバートは言う。「ラッコが戻ってきた場所では、仕事や食料のためにこうした海産物を収穫するしたいと考えている人々にとっても大きな課題です。保護を勝ち得ることと絶滅危惧種の回復の間にはこの両方がありますが、絶滅危惧種の回復に伴うトレードオフもあります」

 

バートはCoastal Voices(訳者注:記事「【記事】ラッコの復活をめぐる対話 | Coastal Voices: Navigating the Return of the Sea Otter」を参照)を立ち上げた研究チームの一員で、ラッコの復活によって引き起こされる生態学的・経済的、社会的な大きな変化に備えるために、州全域から先住民族のリーダー、科学者、その他の人々による多様なグループを結成した。

 

先住民コミュニティは「基本的にまずラッコの影響を受けた人々です」とバートは言う。「基本的に、彼らは自分たちの場所でラッコをどう管理すべきかをを決定できるよう、より主要な役割を果たしたいと思っているのです」

 

バートは先月、サイモンフレーザー大学を卒業した後、毎年博士課程または修士課程で最も優れた卒業生2人に贈られるカナダ総督賞の金賞を受賞し、卒業証書とともにメダルを持ち帰った。

 

バートは、ブリティッシュコロンビア沿岸における海洋保全のための革新的な解決策を探求する組織のプログラムリーダーとして、すでに次のプロジェクトに取り組んでいる。自分の論文研究を振り返り、それが海洋環境と人間との相互関係を大きく際立たせていると言う。

 

「私は生態学的な相互作用と人間への影響の両方を明らかにしようとしました」とバートは言う。「こうしたことは、単独では起こりません。私たちが決断を下せばそれが海に影響を与え、海が変化すれば私たちに影響を与えます。私たちは常に、これらのシステムを、私たちが影響を与えるもの、そして私たちに影響を与えるものとして理解する必要があります」

north shore news

Sea Otter research nets new marine discoveries

JULY 9, 2019