【記事】ラッコは回復するもサメの餌食に | Sea otters are bouncing back - and into the jaws of great white sharks

本日は2019年5月17日付のNew Scientistより、"Sea otters are bouncing back - and into the jaws of great white sharks"をお届けします。カリフォルニアでは生息域の北端・南端でサメに噛まれるラッコが増加しているため、生息域の拡大が阻まれています。サメの行動研究もラッコの保全において重要になるでしょう。

数十年にわたる保護活動により、北太平洋の多くの地域ではラッコの個体数が増加してきたが、今ではホオジロザメに殺されつつある。

 

サメは実際にはラッコを食べようとしているわけではなく、アザラシやアシカのようにカロリーが高く脂肪の多い獲物を好んでいる。サメが噛むのは単に調べているだけであり、脂っこい食事ではなく毛で口がいっぱいになって怯んでるだけなのだ。しかし、そのようなひと噛みもラッコにとっては致命的な傷を与えることが多く、今ではカリフォルニアの沿岸で頻繁に起こるようになっている。

 

モントレー湾水族館のジェリー・モクスリー氏とその同僚らは、噛みつかれて死に海岸に打ち上げられたラッコの死骸の数が増加している傾向を目にし、サメに噛まれる状況がいつどこで起こっているか、調査を始めた。

 

研究チームは、サメと、サメが好む獲物であるゾウアザラシの季節的な動きに関するデータと、噛みつかれたラッコの座礁に関するデータをまとめた。チームはこの情報を用いて、獲物だけでなく誤って標的にされてしまった種であるラッコと人間に対するサメの噛みつきのタイミングを比較した。

 

その結果、夏になるとラッコが頻繁に噛まれるようになるが、その時期は成獣のサメが海岸に近づいてきて、若いアザラシを捕食することが分かった。

 

この時期は、人間が最も頻繁に誤って標的にされるときでもある。研究者らは、何百キロも離れた太平洋の餌場から移動してきたため脂肪の蓄積量が少なくなっているサメは、遭遇するアザラシの形をした動物に対してみさかいがないのではないかと考えている。

 

モクスリー氏のチームはまた、サメの被害に遭ったのは、ほとんどが勇敢な若い雄のラッコであったことも発見した。

 

「若いオスのラッコはより開拓精神が旺盛で、ラッコの生息域の中心部にある密度の高いケルプの森の外側の新しい領域に進出する可能性が高いのです」とモクスリーは言う。

 

開拓精神旺盛なカワウソはサメと遭遇する危険性が高いため、ラッコが他の地域で再定着が難しくなっている可能性がある。

 

カリフォルニア州立大学ソノマ校のブレント・ヒューズは、外海から守られた河口域でラッコがサメから身を守り始めるかもしれないと考えている。ヒューズはアラスカのアリューシャン列島でも、浅瀬でラッコがシャチの捕食から身を隠すようになったという似た例が起こっているのを目撃している。

 

モクスリーは今回の調査結果はラッコの再導入に向けた取り組みの指針となる可能性があるという。「ラッコがサメに噛まれる危険性が最も高いのはいつどこなのかを記録することで、野生に帰した後生き延びていくのをサポートできるよう、リハビリとリリースの方法を調整することができるでしょう」

 

参考ジャーナル: Ecology and Evolution, DOI: 10.1002/ece3.5209