本日は、2019年5月2日付のYou TubeチャンネルExplore Live Nature Camsより、"Fitz Facts - Sea Otters and Kelp"の書き起こしをお届けします。このチャンネルを運営しているExploror.orgは世界最大の自然ライブカメラ放送を行っている団体で、seaotters.comと共にカリフォルニア州モスランディングのラッコカメラを24時間放送しています。個人的なおススメはセイウチカメラとマナティーカメラです。
ラッコは海洋哺乳類の中でも最も小さいものの一つですが、地球で最も生産性の高い生態系に対して不釣り合いなほど大きな影響を与えています。explorer.orgのマイク・フィッツです。ラッコやラッコが暮らすケルプの森に関する興味深い5つの事実をお届けします。
冷たい海?問題ナシ。
皆さんの知り合いで髪型を整えるのに長い時間をかけている人がいるかもしれませんが、ラッコが毛の手入れにかける作業とはきっと比べ物にならないでしょう。アザラシやクジラとは異なり、ラッコには体温を保持するために断熱の役割をする脂肪層がないので、密度の高い体毛に依存しています。
ラッコの毛は信じられないほど高密度で、1平方インチ当たり100万本ほど生えていますが、その断熱性を維持するためには細心の注意を払って清潔に保たなければなりません。冷たい海と皮膚の間の乾いた断熱層を’維持するために1日に何時間もかけてグルーミングを行います。グルーミングにより、また毛皮の中に空気を取り込み、浮力を高めます。ラッコはスタイルのためにグルーミングを行っているのではなく、これは生存に関わる行動なのです。
大食い
ラッコは体温を維持するために毛皮を持っていますが、ラッコはまた貪欲な生き物でもあります。ラッコは比較的代謝が高く、毎日体重の25%ものエサを食べなければなりません。80パウンド(36kg)の子どもが1日も欠かさず20パウンド(9kg)もの肉を食べると想像してみてください。これが、ラッコが体温を保持するためにしなければならないことなのです。殻を砕くための歯や長く敏感なヒゲを使ってエサのありかを見つけます。ラッコは貝やカニ、ムラサキガイ、ウニ、環形動物などの無脊椎動物を獲るように適応しています。ラッコはまた、海底からエサを剥がしたり堅い殻の中身をとるために叩いて開けたりするために石を使います。皆さんが貝やウニの立場であればラッコは消して可愛いものではありません。ラッコは熟練した、貪欲な捕食者なのです。
海の中の「森」
広大な海藻の森が北太平洋の海岸線を抱く浅瀬に生えています。 最適条件下で年間数十フィートも成長するケルプもあります。陸上の木が多様な種に生息地とエサの両方を与えていますが、ケルプの森も同様に北太平洋のエネルギーと沿岸の海洋生態系における主要な一次生産者なのです。
嵐から守るシェルター
ケルプの森は波の力を弱めます。この事実はラッコもよく知っています。エサを獲っていないときは、ラッコはよくケルプの葉を体に巻き付けて流されないようにしています。ウニもケルプを好みますが、理由は異なります。ケルプを食べるのです。ウニが多く繁殖している場所では、羊が多すぎる牧草地のように、ウニがケルプを食べつくしてしまい、ウニ砂漠(磯焼け)として知られる状態になってしまいます。生息地はこうした状態で長く続く可能性があります。またケルプが繁茂している場所と比べて生産性が低い環境です。ラッコやウニなどの捕食者はウニの個体数を制御しているから、ケルプの森が栄えるのです。
ラッコとカイギュウ
20世紀に、人間の乱獲によりラッコは絶滅寸前になりました。ラッコが壊滅的に失われた多くの場所では、ウニやウニ砂漠(磯焼け)が激増しました。アリューシャン列島の最も離れた島々にラッコの個体数が回復する時までには、ステラ―カイギュウには遅すぎたのです。
マナティーやジュゴンの仲間であるステラーカイギュウは、北太平洋の最も辺鄙な場所の一つであるコマンドルスキー諸島のケルプの森で暮らしていました。ベーリング島付近のラッコの個体群が毛皮交易で殲滅されると、ウニの個体群は爆発的に増えました。これがカイギュウの主なエサであるケルプの激減を導いたのです。
その海域でラッコが根絶されてしまった頃には、カイギュウもまた絶滅してしまいました。ステラ―カイギュウの乱獲もその絶滅に顕著な影響を与えていましたが、たとえ人間がカイギュウの狩猟を行っていなかったとしても、ラッコが壊滅しただけでもウニの激増が段階的な影響を生み出し、カイギュウの絶滅を引き起こしただろうという仮説を唱える科学者もいます。
ジョーン・ミュアーが力強く書いたように、ある一つのものだけを取り除こうとすれば、この世界にある全てのものが繋がっていることが分かります。ラッコや、ウニやケルプの森もそうなのです。ラッコは環境に非常に適応しており、ラッコの働きはさざ波のように、海洋生態系全体に広がっているのです。
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