いよいよ来週からラッコ啓蒙週間が始まりますが、それに先立ち2018年9月16日にカリフォルニア州サウサリートにある海洋哺乳類センターでSea Otter Spectacularというイベントに参加してきましたのでご紹介します。
館内ツアー
海洋哺乳類センターの本部は、サンフランシスコからゴールデンゲートブリッジを渡った先のマリン郡サウサリートという風光明媚なところにあります。ここは世界最大の海洋哺乳類専用病院及びリハビリ施設で、カリフォルニアの600マイル(約960km)の海岸線における海洋哺乳類の救助に対応しています。年間の患者数は約600頭から800頭にのぼり、保護された動物の治療、リハビリ、病気などの原因に関する研究なども行われています。この病院以外に、フォートブラッグ、アンカー湾、モントレー湾、サンルイスオビスポ、ハワイにステーションがあります。ハワイの施設では、ハワイモンクアザラシという絶滅危惧種のアザラシ(現在1400頭ほど)の保護に力を入れています。
海洋哺乳類センターは、1975年以来、22,000頭を超える海洋哺乳類(うちラッコは325頭以上)の救助に対応してきました。
ボランティアガイドによる館内ツアーが行われており(大人$9)、施設の歴史や動物たちに関して学ぶことができます。実際に動物に触れることはできませんが、展望エリアからリハビリ中の動物たちを見ることができます。
海洋哺乳類センターでは日曜日にMarine Science Sundayというイベントがあり、様々な海洋哺乳類を採りあげていますが、今回は、ラッコ啓蒙週間に先立ち、Sea Otter Spectacularと題したプレゼンテーションが行われました。
ロビーに掲示があり、現在リハビリ中の動物の数が表示されています。カリフォルニアラッコが3頭リハビリを受けています。成獣のピップ、幼獣のラングリーとスプラウトです。
展望エリアからは、水槽が真ん中にあるフェンスで囲われた部屋がたくさん見えます。ボランティアが一輪車にアザラシやアシカを乗せて移動している様子や、板を盾のように使って動物たちを移動させたり、エサをやったりしている様子を見ることができます。主な患者はカリフォルニアアシカですが、季節によりゾウアザラシが多い時期もあります。前回来た時はゾウアザラシが百頭近くリハビリしていました。多くのソーラーパネルが設置されており、100%再生可能エネルギーを使用しています。
ラッコのリハビリ水槽は残念ながらここからは見えないところにあり、一般公開はされていません。
エサの支度をするキッチンです。センターでは1200名のボランティアが交代で動物の世話やエサの準備、ツアーガイドや売り場の運営など、様々な仕事をして施設に貢献しています。この施設の動物たちは、モントレーベイ水族館のシーフード・ウオッチのアドバイスのもと、持続可能な魚介類を食べています。エサはアラスカから購入しており、日々獣医師がどれだけ食べるかを決めています。衰弱しているアザラシやアシカなどには、魚などからつくったミルクシェイク状の液体のエサを胃に流し込んで与えることもあります。
日曜海洋科学教室:ラッコ
ツアーに引き続き、Marine Science Sundayのラッコ特集のプレゼンテーションがありました。
海洋哺乳類センターについて
・使命ーリハビリ、研究、教育活動
・カリフォルニア沿岸600マイル(約960km)の海岸線の海洋生物の座礁に対応
・有給スタッフ70名、ボランティア1,200名が運営に参加
・認可を得た非営利団体
歴史
・1975年3人の人物が保護したアシカをバスタブでリハビリしたのが最初
・これまで22,000頭以上の動物を保護しリリースしてきた
・2001年にモントレー湾、2005年にサンルイスオビスポ、2014年にハワイに施設をオープンした
保護活動
・年間平均600~800頭の海洋哺乳類を救助、治療、リハビリを行う
・人間が病院にかかる場合同様、手術やCT、レントゲン撮影なども行う
・24時間ホットライン 415-280-SEAL
研究活動
・動物の座礁の原因を究明
教育活動
・年間来場者は10万人以上
・就学前児童から大人まで、グループツアーや教室プログラムを行う
・参加方法
-ガイドツアー
-Sea to Schoolアウトリーチプログラム(出張教室)
-若者・大人のボランティアプログラム
-Marine Science Suncdaysのようなイベント
ラッコの特徴
・最も小さい海洋哺乳類
・体調は120㎝程
・体重は75~100パウンド
・亜種:カリフォルニアラッコとアラスカラッコ
・ヒレではなく足(アザラシやアシカというよりはイタチやスカンクに近い仲間)
カリフォルニアラッコ
・絶滅危惧種
・1800年代後半から毛皮のために乱獲され、100頭以下になってしまった
・現在の個体数は約3,200頭
世界で最もフワフワな動物
・あらゆる動物の中でもっとも毛の密度が高い
・1平方インチ(25セントコインの大きさ)にどのくらい毛が生えているか?
-100万本!人間の頭10人分
・その理由は?
-アザラシやアシカ、クジラ、イルカなどのような脂肪層がラッコにはないため
食生活
・ラッコの好きなエサ
-カニ
-ウニ
-ムラサキガイ
-カニ
・1日に体重の25%~30%を食べる
・1日に25パウンドほど(約10kg)
海洋哺乳類センターでのエサ
・1日に4回まで(午前8時、午後12時、4時、8時)
・ラッコはここにいる動物の中でもっともエサ代がかかる動物
・メニューの例:
- カニ 2杯
- ハマグリ(殻むき) 約1kg
- ハマグリ(殻つき) 約450g
- エビ 0.68kg
- イカ 0.23kg
ラッコと道具
・道具を使う数少ない動物のひとつ
・石を金床のように使い、殻を開ける
・ごく数十年前まで、道具を使う動物は人間だけだと考えられていた
ラッコの母子
・出生時は4~5パウンド(約1.8~2.25kg)
・母親は子どもにグルーミング、道具の使い方、泳ぎ方などを教える
・母子はおよそ半年間一緒に暮らす。ゾウアザラシの4週間ほどと比べて長い。
脅威
・幼いうちに親とはぐれる
・栄養不良
・トキソプラズマ症
・サメ
・原油流出や人間の干渉
ラッコを助ける
・海洋哺乳類センターは1975年以来、325頭以上のラッコに対応
・幼いラッコのリハビリに関してはモントレーベイ水族館と協力
気候変動を抑制するラッコ
・石炭、石油、ガスなどを発電や交通のために燃やすことで、大気中の二酸化炭素濃度が上昇する。これにより毛布のように熱をためることになり、海や陸地、大気の温度が上昇する。
・ラッコはケルプの森を健全に保ち、ケルプが大気中から二酸化炭素を吸収する手助けをしている。
ラッコが気候変動と戦うのを助けよう
・太陽光発電を利用しよう。カリフォルニアでは化石燃料を使うより太陽光発電を利用するほうが安上がり
・家や学校、職場でコンポストを利用する
・学校や職場までカープール(車の乗り合い)、徒歩、自転車を利用する
・石炭、石油、天然ガスの使用を制限し、風力や太陽光発電など再生可能なエネルギーを利用している団体をサポートする
リハビリ中のラッコの様子です。右の画面は録画、左はラッコ水槽のライブカメラです(ネット配信はされていません)。
モントレーベイ水族館では保護された赤ちゃんラッコのお世話をする際、将来的に野生に帰す予定の場合は、ラッコが人間と食べものを関連付けないよう、スタッフはみな黒いポンチョと溶接マスクで変装し人間の姿を隠します。海洋哺乳類センターのスタッフが変装をしていないので不思議に思い尋ねたところ、センターにいるラッコは乳離れの年齢を過ぎているため、幼い時ほど人間からの刷り込みの影響がないとのことでした。それでも、スタッフとラッコが顔を合わせるのは必要最低限に制限しているのだそうです。ラッコを一般公開していないのはそのためです。ラッコに比べてアザラシやアシカなどは刷り込みが弱いのですが、やはりミルクを飲むような小さな赤ちゃんは一般公開エリアには出さず、世話をするスタッフのみに接触が制限されているのだそうです。
ピップは2~3週間後、あとの2頭は来月リリース予定だそうです!
もうすぐ良い知らせが聞けるかもしれません。
Special thanks to Adam
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