本日は、Washington Department of Fish and Wildlifeによる"DRAFT Washington State Periodic Status Review for the Sea Otter
(2018)"をお届けします。今月発表されたワシントン州のラッコの状態に関するワシントン州魚類野生生物局の報告書の要約です。
報告書の完全版はこちらからご覧いただけます。記事中の図表は完全版の報告書から抜粋しています。
要約
ラッコはもともと日本の北海道からロシア東部、アリューシャン列島、プリビロフ島を経てアラスカ本土沿岸、ブリティッシュコロンビア、ワシントン、カリフォルニアに生息していた。ワシントン州のラッコは歴史的にコロンビア川からアンジェルス港近くに生息していた。ラッコは1972年に始まった毛皮貿易の最盛期に乱獲され、ワシントン州では1910年までには絶滅していた。ラッコは1981年以降、ワシントン州における州の絶滅危惧種に分類されている。
ラッコは1969年と1970年にワシントン州に再導入された。アラスカ州アムチトカ島から59頭がグレンビル岬かとラプッシュに移植された。(訳者注:移植の経緯についてはこちらをご覧ください)現在のワシントン州のラッコの個体群はこうして再導入されたラッコの生き残りである10頭から43頭のラッコの子孫である。1989年初めて航空調査及び陸上調査が行われ、208頭の個体が確認された。それ以降、個体数は堅調に増加している。ワシントン州における現在のラッコの個体群は南はグレンビル岬からフアンデルカ海峡のピラー岬までに至る海岸沖に広がっている。個体群の成長に伴い、分布のパターンは変化してきている。
ワシントン州のラッコの個体群はオリンピック半島沿岸の外岸およそ130kmに限られている。個体群は1989年以降、年成長率が平均9.5%という高い成長率を示しており、2015年から2017年の個体数の3年平均値は1,753頭に増加している。これは2004年の回復プランに示されている、絶滅危惧種からの除外条件目標値である1,640頭を3年連続で超えている。
生息域の拡大は2004年の回復プランのもう一つの目標である。生息域の拡大に適した生息地はフアンデルカ海峡とバンクーバー島北部にある。南への生息域拡大はグレイズ港やウィラパ湾のような、現在ラッコが生息していない場所へ拡大可能だが、そうした人為的な生息域を代わりに提供することは、動きを制限するかもしれない。ラッコが利用可能な場所に生息域を拡大しない理由については、現在共通した考えはない。
個体数や個体密度は順調に増加しているが、ワシントン州のラッコの個体群は大規模な原油流出のような壊滅的な事故がワシントン州沖で発生すると、相当数のラッコが失われてしまうリスクに直面している。ラッコはまた病気や毒素、気候変動の影響に対し引き続き危険な状態にある。研究によればブリティッシュコロンビアとワシントンのラッコの個体群の遺伝子上の交雑が起こっているが、どの程度起こっているのかまでは明らかではない。ワシントンとブリティッシュコロンビアの個体群間で繁殖活動があれば、再増殖やワシントン州の個体群の全体的な遺伝的適応度を増加させるため、壊滅的な事故に対する影響を減少させることができる可能性がある。
個体数の順調な増加やブリティッシュコロンビアの個体群との遺伝交雑が証明されているため、ラッコはもはや絶滅危惧種の定義とされている「州内における生息域において、全ての個体群もしくはその大部分が深刻な絶滅の危機にある」わけではない。ワシントン州においては、州内で絶滅の危機に瀕している状態へ再分類することが推奨される。
Washington Department of Fish and Wildlife
DRAFT Washington State Periodic Status Review for the Sea Otter (2018)
February 2018
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