【記事】ウエアラブル機器を身につけるラッコ | In Bay Area, Even Sea Otters Have Wearable Med

本日は2017年9月13日付のKQED Scienceより、"In Bay Area, Even Sea Otters Have Wearable Med"をお届けします。体に装置が埋め込まれるのは少しかわいそうですが、同様に毒性藻類で苦しむラッコたちのためにも、オットーたちがドウモイ酸がラッコに及ぼす影響に関する新しい発見を手伝ってくれることを期待したいですね。

先日の木曜日、オットーは手術の準備のため12ドルのシーフードの朝食を抜いた。

 

この8歳のカリフォルニアラッコはある程度の量のカニを食べ、毒性藻類に晒されたため中毒になった。毒性藻類は温かい海に発生し、ドウモイ酸という神経毒を産出する。この神経毒は食物網を上がっていくにつれ濃縮され、海洋哺乳類や人間に発作を引き起こす。2015年から2016年にかけての冬、ドウモイ酸中毒により商業カニ漁が4か月以上閉鎖された。

獣医師のマイク・マリーが8歳のラッコ、オットーの体に埋め込むライフヒストリータグを手にしている。(Elena Graham/TMMC)
獣医師のマイク・マリーが8歳のラッコ、オットーの体に埋め込むライフヒストリータグを手にしている。(Elena Graham/TMMC)

今年、カリフォルニアの浜に座礁したラッコの数はかなり増えているとカリフォルニア魚類野生生物局のラッコ生物学者マイク・ハリスは言う。

 

「2017年は、生きたまま座礁した数、死んで回収された数の記録を更新しそうな勢いです」

 

ドウモイ酸がカリフォルニア沖のラッコにどのように影響を与えているのか、科学者らはほとんど分かっていない。しかし、オットーのケースでは最近撮影したMRIにより、記憶や方向感覚を司る海馬にダメージを受けていることが分かった。ラッコはこうした機能を使い、外海で行きたい方向を見つけるのだ。

 

こうしたことから、サウサリートの海洋哺乳類センターの獣医師たちは最新の手術をオットーに試みることにした。これにより、オットーの場所をモニターし、ドウモイ酸の毒がオットーに時間の経過とともにどのように影響を与えていくのかを知ることができる。

 

 「これはまさしく、唯一の手術です」とセンターの獣医科学ディレクター、ショーン・ローソンは言う。

 

オットーの手術の準備をするにあたり、獣医師らはネコやイヌの手術の際ようにラッコの体毛を剃ることはできない。ラッコは体温の維持を体毛に頼っているため、毛を剃ってしまうと体が冷たいカリフォルニアの海水に晒されることになり、低体温症を招く可能性があるからだ。

「ほとんどの外科医は毛を剃らずに手術はしたくないはずです」とジョンソンは言う。獣医助手のマリッサ・ヤングがオレンジ色の櫛でオットーの毛を分けていた。「この毛をすき分けて皮膚を露出させるのは、非常に大変です」

 

ヤングは注意深く毛を分け、細い線のように見える皮膚を露出させ、手術中毛の位置を保持できるようにジェルを使って毛を留めた。

 

手術の目的はオットーの腹腔内に二つの装置を埋め込むことだ。一つはVHFトランスミッターというオットーの海での居場所を追跡するもの。もう一つは薬のような形をしていて、野生に帰ってからオットーがどううまく生きていくかを追跡するものだ。この「ライフヒストリータグ」は動物の体の中から光や温度を測定することができる。

オットーの体内は通常、暗く温かい。ライフヒストリータグはオットーが死ぬまで、オットーの体温と暗さを追跡する。ドウモイ酸の毒がオットーの健康に影響するかどうかを調べるためだ。体温のゆるやかな低下はオットーが病気にかかっていることを示す。(オットーが生きている限りは、その装置はデータを集めるだけで発信はしない)

 

オットーが死ぬと、その体はすぐに腐敗しはじめる。自己分解と呼ばれる自家消化プロセスにより、酵素や化学物質が筋組織を分解する。

 

そして「ライフタイムトラッカー」が海面に浮かび上がり、光と、外のオットーの体温より低い温度を感知する。こうした変化が引き金になり、その装置は陸上にいる科学者にその動物が死んだことを知らせる。

 

「『動物個体5789番は送信を開始しました』という非常に悲しいeメールを受け取るのです」と科学者のマーカス・ホーニングは言う。ホーニングはアメリカ国立科学財団の助成金で、スワードのアラスカシーライフセンターでこのタグを開発し、二つを海洋哺乳類センターへ送った。

VHFタグ(左)とライフヒストリータグ(右)
VHFタグ(左)とライフヒストリータグ(右)

オットーがどのくらい生きるか、そしてどこでどのように死んでいくのかを知ることにより、科学者はオットーが自然死なのかドウモイ酸の毒がきっかけになった死ぬのか、より深く知ることができる。

 

もしオットーがドウモイ酸による発作をおこせば、その装置は筋肉の動きにより体温が急に上がるのを記録する。こうした体温の急上昇は、急激な体温低下とは非常に異なって見える。体温低下は、ラッコが覚めに噛まれた際に起きるものだ。

 

ホーニングによると、オットーと、海洋哺乳類センターにいる2頭目のラッコ、ヤンキー・ドゥードゥルは野生での行動の研究を目的とした追跡装置を備えた、世界で最初のラッコになる。

 

しかし、オットーが自由の身になるまえに、まず手術から回復する必要がある。術後、挿管を外されると、オットーは顔をこすって、専用の水槽に浮かんで数分グルーミングに費やした。

 

約3週間後、オットーは海へ帰る。腐敗した体の腹腔内の装置が水面に浮かんでくるまで15年かかる可能性もる。あるいは、もしオットーがあまり幸運でない場合は、ホホジロザメに噛まれてその装置を吐き出すかもしれない。

KQED Science

In Bay Area, Even Sea Otters Have Wearable Med

SEPTEMBER 13, 2017