本日は2017年9月1日付のSF GATEから、"Sea otters may be victims of toxin that crippled crab industry"をお届けします。先日の海洋哺乳類センターで保護されている2頭のラッコたちに関する記事に関する記事です。
2頭のカリフォルニアラッコがサンフランシスコベイエリアの保護センターで神経毒の治療をうけているが、これは明らかに2年前ダンジネスクラブ漁を閉鎖させ、数百もの海洋生物の死因となったと同じ神経毒により引き起こされていると職員は語った。
マリン岬にある海洋哺乳類センターの獣医師らは、動物のリハビリを行いハイテクな無線装置を取り付け、魚介類を好む哺乳類であるラッコを絶滅寸前に追い込んだ破滅的な毛皮交易が長く禁じられているにもかかわらず、回復していないのかというなぜを解き明かす役に立ってくれるのではないかと考えている。
センターの職員は、サンルイスオビスポ郡のビーチで発見された8歳のオットーとハーフムーン湾の北ピラーポイントハーバー近くで保護されたオスの成獣ヤンキー・ドゥードルは2頭とも海における藻類の大繁殖により生成される毒素であるドウモイ酸に晒されて引き起こされた神経病の兆候を示していると言う。
毒素はゆっくりと組織に蓄積されるため、いつどうやって毒素に晒されたのか判定することはできないと獣医科学のディレクターであるショーン・ジョンソンは言う。
「数週間、ひょっとしたら数か月前から汚染されていた可能性もあります」とジョンソンは言う。「春と夏の間ずっと、沿岸の端から端までドウモイ酸の大繁殖があります」
6月以降、獣医教育病院では89頭の動物の治療をおこなったが、7頭以外は全てドウモイ酸に晒されたアシカだ。ドウモイ酸はカニやムラサキガイ、二枚貝やその他の貝や甲殻類などに蓄積する。
アシカの大半は海に大規模なアオコ(藻類の大繁殖)が起こっているサンルイスオビスポ郡近くのビーチで保護された。オットーは5月、その場所から非常に近いモロ湾のビーチで座礁しているところを発見された。ヤンキー・ドゥードルは7月3日、数百マイル離れたハーフムーン湾で発見された。
サンフランシスコベイエリアで汚染されたケースが、新しいアオコが生じているからなのか、古いアオコからの毒素がいまだに海洋生物に影響を及ぼしているのかははっきりしていないとジョンソンは言う。
2頭のラッコたちは「カリフォルニア沿岸の全然別の場所から来た」ため、「恐らく、それぞれが座礁した場所近くの地元で汚染されたと考えられます」とジョンソンは言う。
2003年に海洋哺乳類センターがロデオビーチの丘に新しい施設を開いてから、賢く、破壊的で、すぐに脱走しようとするラッコの治療を行うのは初めてだ。ラッコが囲いに登ったり、扉を開けたり、獣医らが忘れていったものを盗んで隠したりしないよう、スタッフらはすでにあった水槽のうち’2つを改装した。
かつては、サンフランシスコ湾に大きな個体群がいたが、それを含めてカリフォルニアとバハ・カリフォルニア沿岸には2万頭ほどのカリフォルニアラッコが生息していた。しかし、毛皮貿易商人らがラッコたちの贅沢な毛皮を求め、ほとんどを一掃してしまった。サザンシーオター(南のラッコ)とも呼ばれるこのラッコたちは1800年台始め以降、サンフランシスコベイエリアでは目撃されていなかった。アメリカ魚類野生生物局によると1979年以降、20足らずの目撃が確認されている。
この遊び好きな動物たちの個体群はハーフムーン湾からサンタバーバラ郡のコンセプション岬まで広がっているが、個体群を増加させるための集中的な試みが行われているにも拘らず、個体数は10年以上数千にとどまっている。ラッコは絶滅に瀕する種の保存に関する法律という国の法律で40年以上絶滅危惧種に指定されている。
海洋生物学者らは、歴史的な生息域にラッコが再度生息するようになる力を妨げているのは、少なくとも部分的にはホホジロザメの襲撃が原因だと考えているが、ドウモイ酸中毒もその原因の一つである可能性がある。
ドウモイ酸は脳を攻撃し、アシカにおいては混乱や発作を引き起こし死に至らしめている。ラッコのオットーのMRIでは、脳の海馬が収縮していることが分かった。海馬は記憶や方向感覚を司る部分だ。ヤンキー・ドゥードルの脳にも同じく脳に障害が発見された。
ライフヒストリー・トランスミッターという衛星に接続された新しい無線装置が木曜日、手術により2頭のラッコたちの腹腔内に埋め込まれた。センターはこの2頭のラッコを今月リリースしたいと考えている。
その無線装置は場所や水深、動きを追跡するが、そうしたデータは空気に晒された時初めて送信されるようになっている。つまり、動物が死んで分解されたり、サメにかまれて体から離れたりしてから、科学者らはその情報を得ることになるのだ。ジョンソンはこの装置が、理解することが難しいラッコの生態に光を当ててくれるものになると期待している。
ジョンソンの仲間は、リリース前に2頭のラッコたちが一生脳障害に苦しむ可能性があるかどうか見極めるためモニターする計画をしている。
「私たちは基本的に最初からドウモイさんがラッコにどのように影響するかを見定めるというところから始めています」とジョンソンは言う。「私たちは、なぜラッコが歴史的な生息域へ南北に広がらないのか、その理由をよく理解したいと思っています」
センターは今年1頭のラッコを受け入れた。若いメスのラッコでホープとい呼ばれ、4月にサンルイスオビスポ郡のサンシエモンで保護された。1週間後ホープは死んだが、死後解剖の結果進行した渓谷熱(ドウモイ酸とは無関係の細菌性の病気)だったことが判明した
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