【記事】カリフォルニアラッコ保全の新しいマイルストーン | New milestones in southern sea otter conservation

本日は2017年9月1日付のAlaska Sealife Center 60 North Science Blogから"New milestones in southern sea otter conservation"をお届けします。保護されたラッコが自然に帰ったあとどのように生きているのかを知ることが今後の保全活動に大きく役立ちます。

Thumbnail Photo Credit Bill Hunnewell © The Marine Mammal Center
Thumbnail Photo Credit Bill Hunnewell © The Marine Mammal Center

 カリフォルニアラッコ保全のサポートにおける新しい数々のマイルストーンの始めに、カリフォルニア州サウサリートの海洋哺乳類センターはカリフォルニアラッコに対するケアとリハビリの能力を目覚ましく向上させているが、

センターはラッコを安全に収容し治療をおこなうため、動物病院を改装した。

 

これは、最近センターで受け入れた2頭のラッコたちに直ちに役にたった。どちらも珪藻(藻類の中の大きなグループの一つ)が生産し食物網を通じて蓄積する有力な神経毒、ドウモイ酸中毒ー別名貝中毒ともいうーと診断された。この毒はプセウドニッチア属の珪藻から生産されるもので、サーディン、アンチョビ、様々なカニ類、ムラサキガイなど、植物プランクトンを食べる海洋生物に蓄積する。ドウモイ酸の毒は方向感覚の消失や発作などを含む様々な症状を引き起こす。従って、リハビリテーションセンターはドウモイ酸中毒になった患者が野生に帰った後どのようにうまく生きていけるかに非常に興味を持っている。

8歳のカリフォルニアラッコ、オットーがカリフォルニア州サウサリートの海洋哺乳類センターでリハビリ中に水槽に浮かんで休んでいるところ。このオスのラッコはカリフォルニア州モロベイにあるセンターのサンルイスオビスポ郡オペレーションの訓練をうけた対応チームに保護された。オットーの脳のMRIは、記憶や方向の働きを司る海馬が収縮していることを示していた。これは、ドウモイ酸に侵された動物たち一般にみられる症状だ。Photo Credit Dana Angus © The Marine Mammal Center.
8歳のカリフォルニアラッコ、オットーがカリフォルニア州サウサリートの海洋哺乳類センターでリハビリ中に水槽に浮かんで休んでいるところ。このオスのラッコはカリフォルニア州モロベイにあるセンターのサンルイスオビスポ郡オペレーションの訓練をうけた対応チームに保護された。オットーの脳のMRIは、記憶や方向の働きを司る海馬が収縮していることを示していた。これは、ドウモイ酸に侵された動物たち一般にみられる症状だ。Photo Credit Dana Angus © The Marine Mammal Center.

 

 

 これにより別のマイルストーンにたどり着いた。これらのラッコたちはライフヒストリー・トランスミッター、別名LHXタグ(訳者注:生体に装着し記録をとる無線装置)を装着しリリースされる最初のラッコたちになる。

 

LHXタグは衛星と繋がっている無線装置で、恒温動物の腹腔内に外科的に埋め込まれる。その装置は飛行機のブラックボックスのような働きをする。装着した生体の一生を通じ、その動物の状態を判定する複数のセンサー(温度、光、動き)をモニターする。LHXタグはその動物が元気に生きている間はデータを送ることはない、信号が弱いので、体の中からは信号が衛星まで届かないのだ。その代わり、これらのデータは全てメモリーに蓄積され、死後、その動物の体が分解されたり、分断されたり、消化されたりしてタグが離れたりした際に初めて、軌道を回る衛星に送信されるようになっている。

海洋哺乳類センターのコレット・インターン獣医師アビー・マクレーン博士(右)、モントレーベイ水族館獣医サービスディレクターマイク・マリー博士(左)はライフヒストリー・トランスミッター(LHX)タグをラッコに埋め込んでいるところ。アラスカシーライフセンターのサイエンスディレクターマークス・ホーミング博士がワイルドライフ・コンピュータ社(ワシントン州レッドモンド)と協力して開発した’このLHXタグをリハビリを受けたカリフォルニアラッコに初めて装着することは、リハビリの努力が成功であったということを追跡できる重要な方法になるだろう。Photo Credit Elena Graham © The Marine Mammal Center

 

全てがうまくいけば、この2頭のラッコたちのLHXタグからはしばらくは通信がないはずだ。

 

しかし、もしドウモイ酸による長期的な影響が発作や他の致命的な症状お引き起こすことがあれば、LHXタグからデータを受け取り、そのラッコがいつどこで死んだかという正確なデータや、おそらく死因もわかるかもしれない。例えば、体温が上がればそれは熱を出していることを表し、動きの増加をセンサーのアウトプットが起こっていれば発作であったことを意味する。

 

 

 LHXタグの埋め込み手術は無菌状態で、完全にガス麻酔をかけて行われる。

 

私たちはLHXタグをカリフォルニアでアシカやアザラシに対して使用し成功している。そうであっても、新しい野生生物にそうしたタグを使う際は綿密に観察し注意深く行われなければならない。この新しい種への利用は、3つ目のマイルストーンだ。モントレーベイ水族館では、マイク・マリー博士がLHXタグの試用を行った。4頭のラッコに対し、モントレーベイ水族館自身で、もしくは、短距離のVHF(短波)追跡ビーコンと組み合わせて使用した。6週間から8週間にかけて使っても、健康状態はLHXタグとは関係ないことがわかっており、海洋哺乳類センターでリハビリを受けたこの2頭のラッコたちへの道を開くことになった。

こうしたマイルストーンを通じ、モントレーベイ水族館、海洋哺乳類センター、そしてアラスカシーライフセンターの3つの団体が北太平洋のラッコ保全を向上させるため協働している。ここで述べられた仕事は全て、国や保護対応機関、研究、動物ケアの許可など必要なものをすべて満たして行われている。

 

LHXタグについて詳しくはwww.sealtag.org、また60 North Scienceの最近のブログ投稿, "how we get research ideas", 及び"paper in a nutshell"をお読みください(ゼニガタアザラシにおける初期のLHXタグ試用についての最近の学術論文の要約)。ラッコのオットーについてはこちら(訳者注:【記事】新改装リハビリ施設でラッコ保全を支援 | Otter Conservation Efforts Bolstered By New Rehabilitation Space)、関連する海洋哺乳類センターのメディアアドバイザリーはこちらで見つけられる。

 

これら2頭のラッコの今後についてやLHXタグ、明日の最前線の科学についてはまた60 North Scienceをチェックしてください。

Alaska Sealife Center 60 North Science Blog

New milestones in southern sea otter conservation

September 1, 2017