いよいよ9月。ラッコ啓蒙週間が近づいてきました。本日はMarine Mammal Center Latest Newsから、"Otter Conservation Efforts Bolstered By New Rehabilitation Space"をお届けします。ラッコの保護とリハビリの両方を手がける施設はそれほど多くありません。あまり名前は出てきませんが、サンフランシスコのゴールデンゲートブリッジを渡ったところにある海洋哺乳類センターもラッコのリハビリを怒っている施設の一つです。
当センターの世界の海洋保全と危機に瀕する種の回復を水深する努力の一環として、改装したセンターの新しい水槽は、リハビリ中のカリフォルニアラッコに安全な場所を提供している
アザラシなどの繁殖シーズンの数か月間、海洋哺乳類センターのキッチンの冷凍庫は箱やバケツに保管された数百パウンドのニシンでいっぱいになる。しかし、ここ数か月、ホタテや貝、イカ、エビなどの海産物を入れるために冷凍庫の棚を空けている。このグルメな患者さんは誰?
ラッコのオットー
彼は8歳のカリフォルニアラッコで、オットーと呼ばれる。サンルイスオビスポ郡を本拠地とする対応チームがモロ湾で保護したものだ。当初保護された際、非常に不活発だったが、それ以降、日々提供されるレストラン品質の海産物への食欲が増大してきた。
受入れ健診の間、当センターの獣医は、オットーは年齢の割に体重が少なく、野生で他のオスと争った際に追ったと思われる傷が鼻にあったが、それ以外は非常に良好な健康状態だと語った。オットーが座礁する原因となった健康上の懸念事項があるかどうか調べるため、レントゲンを撮影し、血液や尿、糞の標本を採取した。
過去3か月以上、オットーは日々回復し、15パウンド近く、体重の3分の1ほどが増えた。食べていない時は、多くの時間を水槽で泳いでいるか、仰向けになってグルーミングするかしている。グルーミングは、動物で最も密度の高い毛ー1平方インチ当たり100万本の毛ーをもつラッコにとっては非常に重要だ。
しかし、ラッコが特別なのは毛の密度が高いことや、エサの嗜好からだけではない。ラッコはキーストーン種で健全なケルプの森や湿地帯の生態系を形作り維持していることを研究が示している。時に「生態系のエンジニア」と呼ばれるこの頂点捕食者はウニやカニの個体数を制限し、ケルプや海草を繁茂させ、他の多くの生物に生息地を提供している。
絶滅危惧種
ラッコはかつて日本からバハ・カリフォルニアにかけての環太平洋全域沿岸に15万頭から30万頭生息し、ケルプやアマモの「庭師」として重要な役割を果たしていた。しかし毛皮貿易商が贅沢なラッコの毛皮を求め、18世紀から19世紀の間に絶滅寸前になるまでラッコを乱獲してしまった。
現在、ラッコには3つの異なる亜種が存在する。ロシアの東海岸に生息するアジアラッコ、アラスカからワシントン州に生息するアラスカラッコ、カリフォルニアの中央沿岸部にのみ生息するカリフォルニアラッコだ。今日のカリフォルニアのラッコたちは隔離されたビッグサーで毛皮貿易を生き延びた小さな群れの子孫たちだ。
カリフォルニアとバハ・カリフォルニアにはかつて2万頭ものラッコが住んでいたと考えられている。しかし、もはやそれほど生息していない。生息数の推定が数千頭のため、過去40年カリフォルニアラッコは国の絶滅に瀕する種の保存に関する法律のもと「絶滅危惧種」に指定されている。
ている理由は一つではない。カリフォルニアラッコは様々な感染症や人間に起因する汚染物質、ホホジロザメによる噛みつきなどがカリフォルニアの北と南の沿岸の歴史的な生息域へ再度住み着くようになるのを制限していると考えられている。
しかし、ラッコの回復に対する献身的な努力の甲斐あって、ラッコはここ数年回復しるるあるように見える。2016年、個体数の3年平均値は3,272頭に達した。これは、長期的な生息数回復や絶滅危惧種としてのステイタスを取り除くという長期的なゴールに対する重要なベンチマークとなるステップだ。
「海洋哺乳類センターカリフォルニア中央沿岸部における座礁したり怪我をしたり親とはぐれたりした田子に対する最初の対応者として、こうした個体数回復努力において重要な役割を果たしてきたことを誇りに思っています」と海洋哺乳類センターの獣医科学ディレクター、ショーン・ローソン博士は言う。「アメリカ魚類他姓生物局やモントレーベイ水族館というパートナーらと密接に協力し、こうした保護されたラッコに対し人間のケアをどう与えていくかという決断をします」
リハビリのための改装
当センターでは今年ピークの際150頭以上のアザラシやアシカをケアしていたため、ラッコのリハビリは全く異なる事態だった。ラッコは全くタイプの異なる動物だからだ。き脚類(アザラシなど)の患者とは異なり、ラッコはイタチやアナグマ、ウルバリンなどを含むイタチ科の仲間だからだ。
特徴的なのはその賢さだ。ラッコはまさにイタチのようで、才能ある縄抜け手品師のようなものと知られています。器用な前足はものを掴んだり、鍵がかかっていないゲートを開けてしまう。当センターにいるアシカたちは、水槽からより良い眺めを得るため岩に飛び乗るが、ラッコは囲いによじ登り反対側へ降りてしまう。
そのため、私たちは水槽のうち2つを囲いの代わりにファイバーグラスと強化プラスチック製の頑強な壁を作って、ラッコに適するエリアに改装した。また、鉄格子をしっかりさせ、隙間のない扉を設置し、掛金でなくちゃんと外側に鍵をつけた。
この2つの水槽は、人間による騒音や接触を減らすため、一般来場者からは見えないようになっている。ラッコは人間に慣れやすく、野生に返してから人間にもラッコにも危険な状況につながることも度々あるからだ。水槽にあるカメラにより、動物ケアチームは水槽に立ち入ることなくラッコをモニターすることができ、人間との接触を給餌や毎週の健診に限定することができるからだ。
「サウサリートの病院の一部をラッコにとって安全な場所へ改装することで、この絶滅危惧種のリハビリのキャパシティを効率よく上げることができます」とジョンソンは言う。「現在は、オットーのようなラッコを受け入れ、野生に返して将来的なラッコの個体数増加や周辺環境へ貢献してくれることを期待することができるようになりました」
希望を求めて
オットーは当センターでリハビリを受けている最初のラッコではない。過去何年も、私たちは何頭ものラッコたちにケアを施してきた。その中でも特筆に値するのがレポやキャロウェイだ。オットーは改装後に治療を受けた最初のラッコでもない。
4月に約1週間、当センターの専門家らはホープというメスのラッコのケアを行った。ホープはサンルイスオビスポ郡のサンシエモン近くのピエドラスブランカで座礁しているところを発見された際、推定生後7~8か月という年齢の割にはやや小さかった。この病院に到着して間もなく、ホープは食欲をなくし活動的でなくなり、水の中でグルーミングしたりエサを食べたりするよりは水槽の排水溝の網の上に寝そべって過ごすことが多くなった。
精密検査からは問題があるが原因が確定できないという結果が出て、そのわずか2日後、ホープは死んでしまった。死後解剖の結果、内臓の構造を破壊してしまう菌類により引き起こされるコクシジオイデス症を患っていたことが判明した。
「残念ですが、ホープの場合、仮に死ぬ前に病名がわかっていたとしても、治療するにはコクシジオイデス症がかなり進行してしまっていました」とセンターのチーフ・リサーチ病理学者、Pádraig Duignanは言う。「ホープを野生に返してあげたかったのですが、私たちの治療努力を死が上回ってしまいました。これにより私たちはこの病原体がラッコの健康に与える影響が非常に強いということを教えてくれました」
オットーの検査
オットーの場合、受入れ検査の際の標本により、治療の初期段階ではっきりと診断がされた。ドウモイ酸中毒だ。これは神経毒であるドウモイ酸により引き起こされる状態だ。プセウドニッチア・アウストラリスという藻類により算出されるこの毒は魚やカニ・貝・ホタテなどに蓄積し、それを大量にラッコが食べるのだ。
ドウモイ酸中毒はまず脳にダメージを与え、不活発さ、方向感覚の喪失、発作などを引き起こし、治療しなければ最終的には死にいたる。オットーの脳をMRIで撮影すると、記憶や方向感覚などに重要な役割を果たすことで知られている海馬が委縮していた。ドウモイ酸中毒の動物には一般的にみられる現象だ。
別の成獣のラッコ、ヤンキー・ドゥードルはオットーが神経症の兆候を見せた一月後に保護された。MRIはそのラッコもドウモイ酸に晒された可能性を示した。
残念なことに、この診断はこの海洋哺乳類保護センターでは知られすぎている。実際、当センターの研究者が遡ること1988年、カリフォルニアアシカにこの状態を最初に発見したからだ。それ以来、より多くのものを学ぶ機会があった。ここ数年は、記録破りの毒性藻類の大繁殖により数百頭ものアシカが病気になり、人間の健康を守るため水産業も閉鎖されたほどだった。
私たちがドウモイ酸の治療を行っているのはほとんどがカリフォルニアアシカだが、他の海洋哺乳類もドウモイさんの影響を受けやすい。ドウモイさんはアザラシやアシカ類に多く報告されているが、シロナガスクジラやザトウクジラなどの鯨類にも報告されている。ほんの数年前、当センターの研究者はラッコ同様絶滅危惧種となっているグアダルーペオットセイにドウモイ酸を最初に発見した。
ドウモイ酸が含まれていない魚介類を食べ始めれば時間とともに動物の組織から自然に流れ去っていく。しかし、動物たちは長期間もしくは繰り返しドウモイ酸の毒に晒され、長期間にわたるより申告な影響を受ける可能性がある。
私たちはアシカでこれがどのように表出するか知識があり、当センターの専門家は、注意をしたり4つのヒレ全てを使って迅速に動いたり、人間を避けたり攻撃的になる自然な本能など、健康な状態での神経的な行動をモニターすることで、そのアシカが脳に永久的なダメージを受けているかどうか診断することができる。
しかしラッコに関しては見え方が全く異なり、今のところ神経的な評価はまだ発展していない。ラッコがそれぞれの個体もしくは個体群に対し、どのように影響を及ぼしているのかほとんど知られていないのが実情だ。
センターの獣医師チームは他のラッコ専門家らと密に協働し、オットーやヤンキー・ドゥードルが十分健康になって野生へ返すことができるよう、最善な次のステップを決めている。その間、オットーたちは体重をよく増やす必要がある。当センターの動物ケアチームとボランティアはオットーたちにエサを与えることに集中する。つまり、より多くの贅沢なバケツ入りシーフードが必要になるということだ。
変化を起こそう
ラッコは健全な体重を維持するためだけに毎日体重の4分の1の量の海産物を食べなければならない。特別なエサには、人間が食べる高価な品質のホタテ、貝、イカ、エビなどが含まれる。ラッコ1頭につき、41ドルのコストがかかるため、エサ代は非常に多くなる。
ラッコを保護しリハビリを行い、自然のラッコの生息地を再生させる私たちの仕事をサポートすることで、オットーのような危機に瀕するラッコのため、変化を起こすことができる。
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海洋哺乳類センターにおけるラッコの研究
過去20年以上、当センターの獣医師や科学者らはラッコに関する多くの科学論文に貢献している。いくつかはここで見ることができる。
Miller, M.A., Burgess, T.L., Dodd, E.M., Rhyan, J.C., Jang, S.S., Byrne, B.A., Gulland, F.M., Murray, M.J., Toy-Choutka, S., Conrad, P.A., Field, C.L., Sidor, I.F., Smith, W.A. 2017. Isolation and characterization of a novel marine brucella from a southern sea otter (Enhydra lutris nereis), California, USA. Journal of Wildlife Disease 53(2).
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Marine Mammal Center Latest News
Otter Conservation Efforts Bolstered By New Rehabilitation Space
August 31, 2017
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