【記事】ラッコ保全ワークショップの概要 | Toxins, hormones, a studbook and more: highlights from our Sea Otter Conservation Workshop

本日は2017年5月22日付のSeattle Aquarium Blogより、"Toxins, hormones, a studbook and more: highlights from our Sea Otter Conservation Workshop"をお届けします。このワークショップは2年に1度、ラッコ保全をテーマに世界中の水族館や研究者、保護団体が参加し最新の研究や情報を交換するために行われています。

シアトル水族館は1999年から隔年でラッコ保全ワークショップを主催しています。約50名の研究者による小さな集まりが、アメリカ、カナダ、ヨーロッパ、日本、ロシアを含む様々な国から120名を超える参加者を擁する国際的なイベントに成長しました。

 

この3日間の会議はラッコ生物学者、生態学者、動物ケア専門家、獣医師、州や国の許可当局、啓蒙グループやラッコ保全に興味を持つ団体が集まり、関連した研究情報をシェアし野生のラッコ、動物園や水族館のラッコを効果的に保全するためにどのような研究が必要か、またどのような行動ステップが必要かを話し合うことを目的としています。

話題は、ラッコの個体数の傾向、生態学、食物網、遺伝学、動物園水族館のラッコのステイタスの最新情報、動物ケアとトレーニング、獣医学事例、経済的影響、エサの多様性、個体群の環境収容力、歴史的生息域の一部へのラッコの再導入、野生に返せないリハビリ済みのラッコを動物園・水族館に配置する方法、などに及びました。

 

今年のワークショップは10回目で3月17日から19日まで開催され、シアトル水族館のスタッフがここで行われている研究をいくつか発表しました。

動物園・水族館のラッコの食事の発展

私たちはラッコを飼育している世界中の24の施設に調査書を送り、62頭の個々のラッコについて記録をとりました。与えている海産物の種類、産地、毎日食べている量、海産物のうちどの程度がそのまま(殻のまま)もしくは手をいれて(殻つきまたは細かく切った状態で)与えられているかに関するデータが集められました。

ラッコのふんから抽出されるホルモン

私たちは20年以上当館のラッコたちの繁殖活動を見定めるため、ふんの標本を集めふん中のホルモンを抽出してきました。また、ふん中にある日常的なストレスホルモンを調べ、何がストレスホルモンを基準値以上にしてしまうのか考えてきました。予備分析では、ラッコが獣医学的な検査を受ける際にストレスホルモンが少し上がることが指摘され、また工事や出産でも同様でした。

海産物やラッコのふんにみられる毒素

私たちは、ラッコの食べ物とふんの中にある残留性有機汚染物質の計測を始めました。現在、PBDE類(燃焼抑制剤)と広く利用されていた持続性農薬であるDDT/DDEを分析することができます。与えられる食べ物と、ふんとなって出てくるもののレベルを測定するのです。食物中のレベルはふんより高いので、動物の体内に化学製品がいくらか吸収されている可能性があるということになります。どのくらいの量が吸収されているのか、動物たちの健康にどの程度影響があるのかということはまだ知られていません。当館のラッコたちは持続可能な方法で採取されたレストランで提供できる等級の海産物、つまり人間が食べるものと同じものを与えられています。つまり、人間も化学製品を同じレベルで吸収している可能性があることを意味しています。

ワシントン州ラッコ個体数調査

当館は2001年から毎年のワシントン州ラッコ個体数調査に参加しています。わたしたちの役割は飛行機からとった高繊細の写真のラッコの数を確認するため、陸上から見えるラッコの数を数えることです。2016年は、1800頭以上になりましたが、これは長期個体群成長率で年約10%ということになります。

ワシントン州の野生のラッコの食習慣

シアトル水族館は2010年から沿岸の生息域でエサを食べるラッコを観察し、高性能のフィールドスコープを用いて野生のラッコが食べる海産物の種類を記録しています。こうした情報を動物園や水族館で飼育されているラッコから私たちが得たデータと比較し、ラッコの健康や沿岸地域の健全性や生産性について考えるのです。

生息域における遺伝多様性

シアトル水族館は18年間、野生のラッコの遺伝子多様性を研究しています。最近、現在および歴史的なラッコの生息域からの遺伝子素材のデータを一式入手しました。これを以前のデータと比較し、ほとんどのラッコの個体群で遺伝子の多様性が増加していることを発見しました。もっとも大きく増加したのは、ラッコが絶滅しその後ラッコを再移植した場所でした。2つの異なる場所から移植すれば、その結果遺伝子の交雑がおこり、遺伝子の多様性が増加するのです。約30%で最も多様性が増加している場所はワシントン州で、ここのラッコは北のバンクーバー島の個体群と交雑してきたことが知られています。

遺伝子データを用いた亜種の定義

ラッコは3つの別々の亜種に分かれています。日本およびロシアに生息するアジアラッコ、アラスカ州の大部分、ブリティッシュコロンビア州、ワシントン州で見られるアラスカラッコ、カリフォルニア州中央部モントレー付近に生息するカリフォルニアラッコです。シアトル水族館は核DNAとミトコンドリアDNAの両方を用いてラッコの亜種の再評価を行いました。遺伝子の違いがこれら3亜種にみられましたが、アラスカ州のプリンスウィリアム湾に生息する遺伝子が異なる亜種がいる可能性を示しています。

リアルトのリハビリ

ラッコの血統台帳

アメリカ動物園水族館協会は、血統と人口統計学的な歴史についてそれぞれの動物の記録を行う血統台帳を地域ごとに作っています。血統台帳はアメリカ動物園水族館協会が維持し、協会に認可された施設でケアを受ける動物たちを管理しています。シアトル水族館は北米の動物園や水族館で飼育されている53頭のすべてのラッコの血統台帳を維持しています。

 

ラッコについて興味が湧いてきましたか?シアトル水族館へぜひお越しください。また、ラッコの情報シートをこちらからご覧ください。