本日はWorld of Animals Magazine Issue 43より、"SAVING SEA OTTERS - THE KING OF KELP NEED HELP"をお届けします。
ラッコはとてもキュートで、フワフワで、寝る時に手を繋いだりもする。可愛らしいでしょう?しかし、この動物は今まで苦難の道を歩んできた。その素晴らしい物語をぜひご覧いただきたい。
ラッコは海の中で最も小さい哺乳類だ。水の中で一生を過ごすことができ、ジャイアントケルプに包まる。このケルプにとって、ラッコはキーストーン種だ。ラッコの影響がなければケルプの森は生き延びることができないだろう。
この鍵になるのは、ラッコの食欲だ。小さな体で皮下脂肪がないため、ラッコは体温を維持するために常にエネルギーを燃焼し続けなければならない。それはつまり、たくさん食べなければならないということだ。ラッコは1日の半分をエサをとるために費やす。平たいパドルのような後ろ足を使って海底に潜り、ウニやカニ、ヒトデを獲り、水面で食べる。
ラッコはまた、ケルプにとっての天敵、食欲旺盛な草食性の生物も食べる。だからケルプの森(とケルプの森に依存している生物)が繁栄できるのだ。しかし、もしラッコが消えてしまったら、ケルプも同様に消滅し、取返しかつかないほど生態系に損害を与えてしまう。
”19世紀後半ラッコは非常に高価な毛皮のために絶滅寸前まで乱獲されてしまった"
ラッコが体温を保持できるもう一つの秘密は、その素晴らしい体毛だ。2つの層が一緒に働き、皮膚近くの空気を捕らえ、体温を保つ。空気が十分にため込まれている状態になるよう体毛は常にふわふわの状態でなければならない。ラッコが食べていない時にたいていグルーミングをしているのは、そのためだ。しかし、残念なことに、この毛皮がまた、ラッコの滅亡の原因となったのだ。19世紀後半、ラッコは非常に高価な毛皮のために絶滅寸前まで乱獲されてしまった。
ラフトと呼ばれる群れになるラッコは非常に社交的な動物だ。オスとメスは通常別々に過ごすため、太平洋沿岸で見られる(幸運なら)大きなラッコの群れは、みな同性だ。それから、もちろん、信じられないほど可愛らしい子どもたちもいる。
成長
ラッコの子どもの生活はハードだが、人生に必要なレッスンを学ぶ時になるまでは、母親の上で暮らす
ラッコは一年を通じて生まれる。赤ちゃんは目が開いた状態で、10本の歯と非常に水に浮きやすい体毛を持って生まれてくる。この体毛は非常に多くの空気を含むことができるため、赤ちゃんは水の上にコルクのように浮かぶーすぐに泳ぎ方を習う必要はないのだ。
数か月の間、子どもは母親の腹の上に乗って過ごす。生まれつきラッコ特有の旺盛な食欲が備わっているため、母親は子どものミルクの需要に応えるべく、できる限り多く食べなければならない。
エサを獲る時間になると、母親は赤ちゃんを同じ場所につなぎ留めておくためにケルプで包むか、エサを探している間安全でいられるように、岩(もしくは、港の中であれば船のスイムデッキなど)の上に赤ちゃんを上げておく。
生後13週ほどになると子どもの毛は生え変わり、生後6か月から12か月ほどで完全に自立する。子どもはすべてのこと、例えば貝の探し方や殻を割って中の身を取り出す方法などを母親から学ぶ。
ラッコが好きになる3つの理由
ラッコは「手」をつなぐ!水の中でくつろぐ時、離れ離れに流されないよう前足を繋いで群れを作る。
ラッコの素晴らしい毛皮は非常に密度が高く、1平方センチメートル当たり15万本(人間の頭全体の毛より多い)も生えている。 ラッコは非常に頭の良い動物だ。
問題(殻を開けるなどの)があれば工夫して解決し、それを子どもに受け継がせる。
オッタープロジェクト
オタープロジェクトはラッコの生存を守っている科学者や保護活動家らのグループだ。設立以来、水質や汚染、海洋保護区の保護などに取り組み、沖合石油採掘や原油流出に対する対応、船のトラフィック等による影響などの環境的な要因を監視するため、化学的な文献やデータを用いてラッコに関する多くの画期的な判決をもたらした。こうした要因はラッコの増加に寄与した。オタープロジェクトの主な業績の一つが、「ラッコ排除区域(No-Otter Zone)」の廃止だ。これは、漁業や石油産業が、こうした産業にとってラッコの存在が悪影響を及ぼすという考えから設定されたものだ。オタープロジェクトとその支持者はアメリカ魚類野生生物局にその地域の効果を再評価させ、結果的に「ラッコ排除区域(No-Otter Zone)」を廃止しラッコにその存在に見合う保護を与えることができた。
”このグループは「ラッコ排除区域」を廃止させることができた"
ラッコの亜種
アラスカラッコ
Northern sea otter
ノーザン・シーオター(アラスカラッコ)は他の亜種に比べやや大きい。名前が示すように、北部の出身だ。生息域はアリューシャン列島からアメリカのアラスカ州プリンス・ウィリアム湾に広がり、カナダの太平洋沿岸にも進出、オレゴン州に至るまで小さな個体群がある。
カリフォルニアラッコ
Southern sea otter
サウザン・シーオター(カリフォルニアラッコ)はカリフォルニア沿岸でのみ見られる。アラスカラッコに比べてやや小さく、体長1.2m、北はサンマテオ郡から南はサンタバーバラ郡に生息する。
アジアラッコ
Common sea otter
このラッコの亜種は主にアジアの海で見られ、歴史的には日本からベーリング海のコマンドルスキー諸島に生息していた。カリフォルニアラッコやアラスカラッコと似ており、ウニや甲殻類を食べ、ケルプ床を健全に保つ。
© Design Pics Inc/Alamy; Latitude 59 LLP/ Minden Pictures
ラッコの復活
献身的な保全プログラムが太平洋沿岸にラッコの復活をもたらした
非常に密度の高い体毛ー動物の中で最も暑い毛皮ーのせいで、ラッコは18世紀から19世紀にかけて、柔らかさと温かさが珍重され毛皮狩猟者の恰好のターゲットになってしまった。ラッコは何千頭も捕獲され、その毛皮はコートや帽子を作るために輸出された。
ほんの数世紀の間に毛皮貿易はかつて健全だったラッコの個体群を、わずか13の小さな個体群、カリフォルニアでは32頭からなる1つの群れを残すだけまでに殺戮してしまった。感謝すべきことに、1911年膃肭臍(おっとせい)保護条約および1970年代の絶滅に瀕する種の保存に関する法律によりラッコを保護するための法律がついに制定された。
ラッコは今も脅威に直面しているが、保全活動のおかげで個体数は伸びている。個体群と生息域の監視、保護の実施、リハビリテーションと移植プログラムはラッコの個体群を安全にしている。
脅威
ラッコは原油の流出に脅かされている。油は毛をもつれさせるため、断熱することができなくなりラッコは低体温症で死んでしまう。1989年のエクソン・バルディーズ号事件では、数千頭のラッコがそのようにして死んでしまった。
陸からの農業肥料を含む排水は海面に藻類の大発生を引き起こす。これが毒素を発生させ、ラッコがそれを飲み込むと病気を引き起こし死に至らしめる可能性もある。
陸からの汚染物質や寄生虫もラッコにとって危険だ。寄生虫は通常ネコやオポッサムに見られるものだが、これが病気を引き起こす。カリフォルニアでは、ラッコの死の40%がこの寄生虫に由来するものだ。
ラッコは魚介類を食べるが、これらの海産物は商業的に漁がおこなわれているものであり、運が悪いことに人間の漁師との競争をもたらしている。ラッコはまた漁網にかかったり、増加する往来のため船にぶつかったりすることもある。
ラッコを助ける
ラッコを絶滅から防ぐことに、私たち皆が参加できる
大きな保全組織やチャリティーだけが変化を生み出すことができるように思いがちだが、私たちみんながこの素晴らしい生物を救うためにできることをしなければならない。
例えば持続可能で生分解性の商品を購入したり、できるだけリサイクルを行うというような簡単なステップも全てが貢献につながる。
節水すること、毒性のない家庭用洗剤を使うこと、車からオイルがもれていないかチェックすることなども、ラッコを救うことへの貢献だ。
もっと大胆な動物愛護家なら、海岸の清掃や「ラッコの養子プログラム」(仮想的にラッコを引き取り、資金を提供する)に参加することも、ラッコの未来を少し安全にする実践的なアプローチだ。何もしないよりは、小さなことでも何かするということが良いということを忘れないでほしい。
モントレーベイ水族館
Monterey Bay Aquarium
モントレーベイ水族館のラッコプログラムはラッコを理解しラッコの生活について学ぶことを目的としている。また怪我や病気のラッコを保護し、野生に返すためリハビリをしている。また子どものラッコを育て、飼育下にいる必要があるラッコに住まいを見つけている。
海洋哺乳類センター
The Marine Mammal Center
非営利の獣医学研究診療所じゃ海洋哺乳類の命を調査したり保全したりすることに力を注いでいる。1995年からカリフォルニアの海洋哺乳類センターで保護されたラッコが手当てを受けている。それ以来、200頭を超える個体が保護され、リハビリを受けている。
シーオター・ファンデーション・アンド・トラスト
Sea Otter Foundation & Trust
SOFTは海の動物に関する啓蒙活動や教育活動を通じ、またラッコの生息域に関するチャリティーやプロジェクトへの資金提供を通じ研究者や保護活動家がラッコを保全できるよう、、ラッコの保護に寄与している。また「ラッコ養子プログラム」を行い、資金を調達している。
© Minden Pictures; Matthias Breiter; Phillip Bond; Alamy; Thinkstock; Dreamstime; Doug Lindstrand; Design Pics Inc
World of Animals Issue 43
SAVING SEA OTTERS - THE KING OF KELP NEED HELP
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