本日は2016年8月3日付のUC Santa Cruz Newscenterから、"Energetic cost of rearing a pup seen in soaring metabolic rate of sea otter mom"をお届けします。
最近生後4か月ほどの子どもを連れた母親ラッコがエサを獲っているところをよく見るのですが、とったエサを次から次へと子どもに渡しているため、母親が自分のエサも十分確保するのは本当に大変だと思います。
メスラッコの休息中の代謝率が子育て中に50%も増加することが最新の調査で判明
モントレー湾の穏やかな海で日向ぼっこをしている子育て中の母親というのどかな光景は、その母親の本当の献身的な姿を覆い隠しているかもしれない。授乳というのは動物が経験しうる最も要求の厳しい生理的なプロセスの一つかもしれないが、ラッコの母親にとってはそれが命を脅かすことになりかねない。新しい研究で子育て中のエネルギーコストは研究者が以前推定していたよりももっと高くなっていることが分かった。
「私たちは授乳末期のメスの成獣ラッコの死亡率が不釣合いに高いのを見てきました。これは、メスにとって授乳が非常に困難なライフステージであるということを示していますが、実際にどの程度のコストがあるものなのかはっきりとは分かっていませんでした」とニコル・トメツは言う。トメツはカリフォルニア大学サンタクルーズ校のポストドクターの研究員で、生態学・進化生物学の教授であるテリー・ウィリアムズとともに研究を行っている。
トメツは8月3日にジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・バイオロジー誌で発表された新しい研究の筆頭著者である。以前の研究では、トメツは子育てにかかるエネルギーを見積もるため、成長する子どものラッコのエネルギーを使用し、子どもが自立するまでを観察し母親が必要なエサの量は倍になるであろうと見積もっていた。しかし、子育てにかかるエネルギーが正確にどのくらいなのかを知るため、そのチームは授乳中の母親から直接安静時代謝量を計測する必要があった。飼育下での繁殖がなされていない状況では、そうした機会はほぼないと思われた。
そこに2頭のラッコのメス、モリーとクララがモントレーベイ水族館にやってきた。獣医師のマイク・マリーがラッコの身体検査を行ったところ、クララが妊娠していることがわかった。「マイクが電話をかけてきて、いい機会だと教えてくれました」とトメツは思い起こす。
代謝に関するデータ
ラッコたちはカリフォルニア大学サンタクルーズ校の沿岸科学キャンパスへ移され、そこでウィリアムスとトメツはトレーナーのトレーシー・ケンダル、ボー・リヒターと協力し、代謝データを集めた。彼らはモリーにアクリルのドームに入る訓練を行い、そこで安静時の酸素消費量の計測を行った。しかしクララについては自然な行動をできるだけ変えないようにする必要があった。生まれた子どもは自然へ帰す予定だったからだ。そそこで、彼らはネットを使ってクララをそっとドームに移し、クララに子どもが生まれ授乳している期間、繰り返しその計測をおこなうことに成功した。
クララは予定より早く出産したため、チームは油断していた。「ボーが他のトレーナーにクララをみてきてほしいと頼んだ時、そのトレーナーがクララのところへ行く頃にはクララは両足の間から子どもを引っ張りだしていました」とトメツは言う。
12か月にわたってモリーとクララの代謝の比較を行った結果、クララの妊娠末期の安静時代謝率は出産後子育て中の安静時と比較し16.6%低いことが分かった。これは、他の海洋哺乳類の妊娠における代謝率の低下と似ている。研究者らはこうした代謝率を低下させることで、ラッコが母乳を作るための準備として脂肪を蓄積できるようになっているのではないかと推測している。しかし子どもが生まれ成長するにつれ、クララの1日のエネルギー需要は急増し、子どもが4か月になるころには2倍以上になった。一方、クララの安静時の代謝率は51%も増加した。
「子育てにかかるコストが以前に推定されていたよりももっと高いことが分かりました」とトメツは言う。「通常でも基本的に高いエネルギー需要があり最低限しかエネルギーを蓄積できないラッコにとって、これは実質的にエネルギー的には負担であることを意味しています。そして、繁殖年齢のメスが授乳末期に死亡率が高い理由もここにあると思われます」
この研究のための資金は、オッター・コーブ基金、モントレーベイ水族館、アメリカ国立科学財団、および海軍海事技術本部によって提供された。
UC Santa Cruz Newscenter
Energetic cost of rearing a pup seen in soaring metabolic rate of sea otter mom
August 03, 2016 By Kathryn Knight, JEB/Company of Biologists
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