【記事】嵐を生き抜くラッコの子どもたちを助ける | Helping otter pups survive El Niño

本日は2016年3月5日付のMonterey Herald WILDLIFEから、"Helping otter pups survive El Niño "をお届けします。エルニーニョによる嵐が引き続きカリフォルニア沿岸を襲っています。ラッコたちにとっては苦しい時期ですが、なんとか乗り越えて欲しいですね。

金曜、モントレーベイ水族館で来場者が午後1時半のラッコのフィーディングタイムを見て楽しんでいる。Vern Fisher - Monterey Herald
金曜、モントレーベイ水族館で来場者が午後1時半のラッコのフィーディングタイムを見て楽しんでいる。Vern Fisher - Monterey Herald
ハンナ・バン=ワイスが、ラッコにエビを与えている。金曜日午後1時半のラッコのフィーディングタイムにて。Vern Fisher - Monterey Herald
ハンナ・バン=ワイスが、ラッコにエビを与えている。金曜日午後1時半のラッコのフィーディングタイムにて。Vern Fisher - Monterey Herald

モントレー>>1月、モントレーベイ水族館が座礁したラッコの子どもを保護したが、めったにないことだったのでテレビのニュースなどで取り上げられた。

 

しかし、エル・ニーニョにより強まった雨嵐がモントレー湾に帰って来たため、こうした保護はもっと頻繁になるかもしれない。

 

 

アメリカ地質調査所及びカリフォルニア大学サンタクルーズ校の生物学者ティム・ティンカーは、嵐により子どもが母親とはぐれてしまう可能性は増大すると言う。ラッコは比較的浅い海岸近くでエサをとるが、エル・ニーニョの間、その付近は波が高くなっている。また嵐によりケルプがちぎれてしまい、動物たちが隠れたり休んだりする場所が少なくなるとティンカーは付け加えた。

 

今年、保護されたラッコはまだ数頭だとモントレーベイ水族館のラッコプログラムのマネジャー、アンドリュー・ジョンソンは言う。「荒れた海の影響について、かたずをのんで見守っている状態です」

 

ラッコの子どもの多くは秋の終わりから春の始めにかけて生まれるが、一人立ちするまでに何か月もの子育てを必要とする。成体のラッコはほとんどの時間をエサ探しに費やしている。毎日体重の25%が必要だからだ。しかし、母親ラッコはそれほど多くエサをとることができず、子育ての終わり頃までには弱ってしまう。

 

「母親ラッコは、カミソリの刃の上にいるようなものです。恐ろしく聞こえますが、それがラッコの母親なのです」とティンカーは言う。嵐によって、こうした非常に脆弱な時期に子どもが母親と生き別れになってしまうこともある。一人でなんとか生きていこうともがいても、ラッコの子どもが飢え、凍えて死んでしまうまでにはそれほど時間はかからない。

 

これが、まさにモントレーベイ水族館のラッコ保護プログラムが介入する時だ。市民ボランティアのネットワークからの通報に頻繁に対応し、ラッコ保護プログラムのスタッフは浜に打ち上げられ、途方に暮れているラッコの子どもを年に何十頭も保護する。時には、姿が見えるより先に声が聞こえることもある。母親を求めて、甲高い声で鳴いているのだ。一方成体のラッコはエサの制限に苦しむほか、病気で具合が悪くなっていたり、サメによる怪我を負っているところを発見されることもある。

 

そのラッコが決まった条件に合ったり、また治療によく反応したりする場合、保護プログラムはそうしたラッコを受け入れる。スタッフは、ケルプや仲間のラッコのいる、広く泳いだり遊んだり休んだりできる大きな円形の水槽にいるラッコにエサをやったり世話をしたりする。子どものラッコは代理母とペアになり、代理母は子どものラッコが一人で生きていけるよう成長し学ぶ手助けをする。回復には数か月かかるが、その後、ラッコたちにはタグがつけられ、野生へと返される。ジョンソンは言う。「ラッコたちには野生へ帰って、ラッコ社会の一員として、繁殖に貢献してくれればと思います」

 

保護されたラッコの中には、展示用のラッコになるものもいる。この1月、生後4週間で保護された719号は先月シカゴのシェッド水族館に定住することになり、引き続き楽しく生きている。

 

回復が困難な状態で発見され、"耐えがたい苦痛"に苦しんでいる場合、スタッフはそうしたラッコをできるだけ人道的に安楽死させることになる。そうした場合においても、科学者らは標本を採取し、ラッコの苦しみの種から学ぶことにより、新たな発見が後に保護されるラッコたちの役に立つのだ。

 

 

資源には限界があるものの、ラッコの保護プログラムはモントレー湾に住む動物や科学者らを快くサポートしている。全てのラッコの子どもを助けようとするわけではなく、「ラッコに対する愛情に我を忘れているわけではない」とカリフォルニア州立大学モントレーベイ校の動物学者、リック・クビテックは言う。

 

カリフォルニアのラッコは通常、海岸から約0.5マイル(約0.8km)内、サンタバーバラ郡のガビオタから北はピジョン岬やハーフムーン湾にかけて生息している。その範囲を超えて移動することもあるが、そうした迷いラッコはサメに遭ったりエサ不足になったりするリスクを負うことがある。ラッコは通常ウニやムラサキガイ、ハマグリ、カニ、アワビ、巻貝などを食べる。

 

カリフォルニア中央沿岸部のラッコは約3,000頭。もともとの数である16,000頭には遥かに及ばない。ラッコは絶滅に瀕する種の保存に関する法律で「絶滅の危機にある」種として分類されているが、このまま少しずつ回復していけば、分類から外れるラインを越えられるかもしれない。

 

ジョンソンとスタッフらは、通常健康なラッコをエルクホーン湿地帯やその他の河口地帯へ放す。カニは水草の藻を食べるウミウシ類を食べるが、そのカニを食べることでラッコは湿地帯の生態系や生息域にメリットをもたらす。しかし上流から流れ込む農業排水が藻類を繁殖させ、そうした藻類は海草を覆って生態系を破壊する。

 

また、毒性藻類の大繁殖もラッコに影響を与える可能性がある。「ラッコは非常に敏感です。ラッコは毒をもった魚介類を食べません」とクビテックは言う。「しかし、はっきりしないのはドウモイ酸をどうするのかということです」ドウモイ酸とは、藻類の大発生により生成される毒素で、昨年の秋冬にカニに大発生したものだ。こうしたカニの中にはラッコのエサになるものもある。

 

ラッコは重要な捕食者であり、沿岸生態系で重要な役割を果たしています」とジョンソンは言う。「ラッコは環境にとって非常にすばらしい存在なのです。生態系のエンジニアのようなものなのです」

Monterey Herald WILDLIFE

Helping otter pups survive El Niño

By Ramin Skibba POSTED: 03/05/16, 6:07 PM PST