【記事】719号のケルプな生活 | Life’s a Bed of Kelp for Pup 719

 本日は2016年2月25日付のShedd Aquarium Blogから、"Life’s a Bed of Kelp for Pup 719"をお届けします。英語には"a bed of roses"(安楽な生活)という言い回しがあります。今回のタイトルは、このbed of rosesを念頭にkelp bed(ケルプ床)をもじっています。原語のニュアンスをそのまま訳すのは難しいですね。。。

719号の世話をするチームの24時間体制のシフトが変わる際、トレーナーのクリスティ・スターリンは当館の新参のカリフォルニアラッコとそのラッコが受けるケアについて話す時間をとってくれました。ペンギンとラッコ担当アシスタント・スーパーバイザーというのがクリスティの正式な職名です。クリスティは2005年にキアナがシェッド水族館へ来て以来、当館の保護されたラッコの子どもたちのケアを助けてきました。クリスティは経験を得るだけでなく、多くのものの見方を学んできました。

 

「このラッコはとても自立していますね」とクリスティーは言います。「活動的なときは、本当に活動的です。719号は潜って水槽の底にあるものを取ってきます」この水槽は、リージェンステイン・ラッコナースリー(保育園)にある1,249ガロン(約7,380リットル)のラッコの子ども用の水槽で、アボット・オセナリウム(訳者注:展示用ラッコ水槽のあるコーナー名)の裏にあります。「水槽の縁にケルプを置くと、719号はそれを水の中に引っ張り入れてケルプの間を泳いでいます」

クリスティの言う「ケルプ」とは、洗車に使われる丈夫なフェルトの布です。鮮やかな紫色や青色をしていますが、この布は本物のケルプの代わりとなっています。母親ラッコはエサを獲りにいく前に、長くて光沢のある茶色のケルプの橋に子どもを巻き付けたり、「駐車」させたりします。ケルプは子どものラッコにとって錨にもなり、隠れ蓑にもなり、また心地よい場所でもあります。野生で4週間母親に育てられたという利点があるので、719号はフェルトの布をどう扱うかを知っているのです。

 

「719号は水槽のデッキに上がっているとき、ケルプに埋もれて丸くなってグルーミングしています」とクリスティは言います。ケルプを水の中に入れていない時は、719号はほとんどいつもケルプのベッドで昼寝をします。でも、ケルプを水の中に引き込んで、その間を泳いだり、噛みついたり、引っ張ったり、包まって留まったりもします。トレーナーたちは、ケルプのいくつかにおもりを付け、719号のためにミニ・ケルプの森を作ってあげました。「このナースリーでは、ケルプは家具のようなものですね」とクリスティは言います。

719号は、幼いラッコのために設置されている斜面を使わずに、すでに水槽に入ったり出たりするのが上手になっています。また、グルーミングも上手です。「このような上手なグルーミングのスキルは、きっと母親ラッコが教えてくれたのだと思います」とクリスティは言います。「ルナの場合はグルーミングをするのに私たちが手助けしなければなりませんでしたが、719号は私たちを助けてくれていますね。719号はグルーミングについてはカバーしてくれているので、私たちは719号ができないことを手伝うことになります」

シェッド水族館にいる他の保護された年上のラッコたちとは異なり、719号はすでに1月末にモントレーベイ水族館からやって来た時には固形のエサを食べるようになっていました。「それが違いますね」とトレーナーは言います。「限られた量の貝から作られた人工ミルクを与えられていましたが、すぐに自分から離乳しました」719号に人工ミルクを与える必要はありませんでした。あげたくなかったわけじゃありませんよ!でも、全然飲んでくれなかったのです」

 

その代わりに、719号はクリスティや他のチームメンバーが与えるイカ、シシャモ、殻つきの貝、エビなどを小さく切ったものを熱心につかみ取っていました。「まだ殻をむいたエビを食べていますが、それでも生まれて間もないラッコたちが食べるものよりは大きいサイズです。エサには、スケトウダラも加わりました」

 

しかし、719号は他の若いラッコたちのように、毎日体重(13パウンド(約5.8kg))の30%相当を食べなければなりません。現在719号は1日に6回エサを与えられていますが、クリスティはスケジュールは常に大きく変化していると言います。成長とともに食事の回数は減り、一度に食べる量が増えていくのです。泊まり込みのスタッフが翌日のために719号のエサの準備をしますが、そうすれば次のシフトのメンバーはエサを与える前に切ったシーフードを量るだけでいいのです。

719号の1日は6時ごろの朝食から始まります。「食べて、遊んで、潜って、活動的になり、たくさん動いた後は気持ちよく昼寝して、目が覚める、その繰り返しです。哺乳類の子どもはみな同じですね」とクリスティは言います。しかし、ある時点で719号はちょっとした昼寝よりも長い充電時間が必要になります。給餌のスケジュールが変わるように、「静かにしている時間」も変わるのです。「今は夜の間、7時間ほどはずっと眠っていますが、私たちはここに24時間体制で待機しており、夜の間もさりげなく、定期的に719号を見守っています」

 

719号はモントレーベイ水族館から小さな紫色のフリスビーを持ってきましたが、シェッド水族館のトレーナーたちはこのラッコのためにおもちゃをたくさん用意していました。(好奇心旺盛で非常に活動的なラッコはおもちゃをたくさん持っていても持ち過ぎということはありません。大人のラッコには水槽に25フィート(約7.5m)の「おもちゃの洞窟」があり、中には前足を使い心を刺激するためのグッズが取り揃えてあります。)

 

「719号が見たことないような新しいおもちゃを用意してありました。そうすれば手にとったり、匂いをかいだり、よく見たりしてくれると思いました。でも、遊ぶように促す必要はありませんでした。719号は好奇心旺盛でしたから」とクリスティは言います。719号のお気に入りは、普通の入れ子になるカップのセット(「赤ちゃん用のオモチャも使うことはできるかもしれませんが、頑丈でなものでなければなりません」)、それからフィーダーボール(中が空になっていて手のひらサイズの穴が開いており、中にシーフードを入れてそこから取り出すようになっているボール状のもの)のような動物園や水族館特有のエンリッチメントアイテムや、エサや水を入れて冷凍できる硬化樹脂でできたアワビの殻などです。エサを使ったオモチャは、子どものラッコの注意をひきつけ(食べ物がある間は、ですが)、また器用さや採餌スキルを上達させることができるのです。

「完全にかわいいという事実のほかに、719号が無限のエネルギーで探検している様子を見ているだけでも楽しいですよ」とクリスティは言います。

 

719号やラッコのオモチャの洞窟について学んでください。象徴的にラッコの里親になることで、シェッド水族館にいるラッコや全ての動物たちに対するトップ・クオリティのケアをサポートすることができます。

Shedd Aquarium Blog

Life’s a Bed of Kelp for Pup 719

FEBRUARY 25, 2016 Karen Furnweger, web editor