【記事】モントレー湾のラッコは他のラッコより道具を使う | Monterey Bay sea otters use tools more than other otters

本日は2016年1月28日付のSanta Cruz Sentinelより、"Monterey Bay sea otters use tools more than other otters"をお届けします。 以前の、道具に関する記事(【記事】考古学からみたラッコの道具の使用| The Quest for an Archaeology of Sea Otter Tool Use)も併せてご覧ください。

モントレー>>クリスマスの1週間前、モントレーベイ水族館のグレート・タイド・プールでラッコが出産し、水族館は全米の注目を浴びた。その親子は守られたラグーンを出てモントレー湾へ旅立っていった。その後数か月、子どもは潜ってエサをとることを学ぶ。そして、道具も使うかもしれない。

 

動物において道具の使用は一般的ではないが、ラッコやチンパンジー、カラスなどの種で見られる。

 

モントレーベイ水族館の生物学者、ジェシカ・フジイは8年に渡りラッコの研究を行っており、ラッコにとってエサの手に入りやすさが道具の使用に関係していることを発見した。

 

「ラッコの素晴らしいところは、沿岸近くでエサを獲ってくれることです」とフジイは言う。「エサを水面まで持ってきて、たいていは道具も持っています」

 

ラッコの生息域は南カリフォルニアから日本北部にかけての太平洋沿岸だ。フジイによるとこの小さな海洋哺乳類は好き嫌いが激しいわけではない。巻貝、アワビ、ウニ、カニなどを食べる。硬い殻から栄養たっぷりの身を取り出すため、ラッコはエサを胸の上に置き、石をハンマーのように使って貝を叩き割るのだ。

 

 

しかし、ラッコは臨機応変であり、ビール瓶やその他のゴミなど見つけたものを何でも利用する。あるオスのラッコはモントレー港でボートの船体に殻をぶつけて壊すと、フジイは言う。

 

「そのラッコが何度も何度もぶつけるので、塗料が欠けてしまっているのを見ることができます」とフジイは言う。

 

サンフランシスコを本拠地に置く受賞歴のある自然写真家、エンリケ・アギーレは2009年にラッコにまつわる特に思い出に残る経験をした。アギーレはエルクホーン湿地帯のボートツアーに参加していたが、その時1頭のラッコが手に何か持ってほんの数秒水面に顔を出した。アギーレはそれをアワビだと思った。しかし、写真を確認してみると、ラッコが持っているのはビデオカメラだということに気が付いた。

 

「ラッコは非常に好奇心旺盛なので、いつも水の底から何か持って上がってくるのです」とアギーレは言う。「でもそのビデオカメラは私が見た中で間違いなく最も驚いたものです」

 

海洋哺乳類の間で道具の使用は特に稀であるため、フジイはラッコがなぜ道具を使うのかを調査したいと考えた。

 

フジイと彼女のチームは、カリフォルニア州、南西アラスカ、アラスカの先端から日本へ延びるアリューシャン列島を含む8カ所における17年間の採餌時の潜水行動の観測データを分析した。

 

カリフォルニアのラッコは、アラスカのラッコよりも頻繁に道具を使用していた。モントレーではラッコは16%の時間を道具の使用に充てていると、フジイは述べている。しかし、アリューシャン列島のラッコが道具の使用はわずか1%だった。こうした違いが起こるの最大の理由は、 獲物の種類だと彼女は言う。

 

カリフォルニアラッコはその多くが巻貝を食べる。この貝は豊富にあるが硬くて厚い殻を持っている。道具を使えば歯へのダメージを減らし、効率を上げることができるとフジイは言う。アリューシャン諸島のラッコは、ほとんどがウニを食べる。ウニはトゲが多いが、開けるのは容易なのだ。

 

フジイの研究の結果は、ラッコが道具を使うのは遺伝による物理的な本能ではなく、学習という要素があるということを示唆している、とカナダのブリティッシュコロンビア州沿岸にあるハカイ研究所のラッコ生物学者エリン・レヒシュタイナーは言う。

 

若いラッコは時々新しい食べ物や食べるのが難しいものに挑戦することがある、とレヒシュタイナーは言う。

 

レヒシュタイナーは、若いオスのラッコがナマコを食べるのに30分も費やしたのを見たことがあると言う。「そのラッコはナマコを手で持つことができなかったのです」とレヒシュタイナーは言う。「ある時点でそのラッコは、ナマコと格闘しようとして完全に逆さまに座っていました」

 

ジェフ・トルケマダとウェンディ・スパークスは、30年以上にわたりカリフォルニア沿岸でラッコの撮影を行っている。カヤックに乗っていた時、二人はモスランディングであるオスのラッコがエサを砕くためのハンマーとして赤いレンガの破片を繰り返し使っているのを目撃した。

 

「10,000枚も写真は撮らないねといつも言っていますが、実際撮ってしまうのです。ラッコたちはとてもかわいいから」とトルケマダは言う。「ラッコはとても魅力的なんです」」

 

しかし、ラッコがみな道具を使うわけではないとフジイは言う。研究によると、子どもは母親から学ぶため、子どもが何をどのように食べるかは、母親から何を習うかに左右されるのだ、とフジイは言う。

 

Santa Cruz Sentinel

Monterey Bay sea otters use tools more than other otters

By Bethany Augliere 01/28/16, 4:21 PM PST