【記事】カチェマック湾のラッコの大量死、原因は依然として不明 | More otters washing up; cause remains unknown

本日は2015年11月19日付のHOMER NEWSより、"More otters washing up; cause remains unknown"をお届けします。10月にアラスカ州カチェマック湾付近でのラッコの死の増加について2本の記事(「【記事】カチェマック湾でラッコの死が増加 | Spike in otter deaths in Kachemak Bay」および「【記事】カチェマック湾のラッコの大量死、調査が続く | Scientists Investigate Otter Deaths」)のその後の状況に関する記事です。

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Photo by Michael Armstrong, Homer News
Photo by Michael Armstrong, Homer News

10月30日、マリナー公園近くのホーマー・スピットにて。ナタリー・ハンター(右)が死んだラッコを計測し、マイク・コフィン(左)が記録している。ハンターはノースカロライナ州ウィルミントンの出身で、カチェマックベイキャンパスでゼメスター・バイ・ザ・ベイプログラム(注:アラスカ大学アンカレッジ校カチェマックベイキャンパスで、全米からの学生が実践的な生物学を学ぶプログラム)に参加している。コフィンはアラスカシーライフセンターのボランティア。ハンターはその日別の腐敗したラッコの計測と歯のサンプル収集を行った。

異常な数の死んだラッコや死にかけているラッコがホーマーの浜に打ち上げられている原因はまだ解明されていない。しかし、予備調査の結果は、有害な藻類の大発生による毒素とバクテリア感染によるストレスが合わさって死にいったったものではないかと示している。感染すると、ラッコは浅いところで栄養価の少ないムラサキガイのようなものを採るようになるからである。


「ラッコは泣きっ面に蜂、なのです」とキナイ・ペニンスラ・カレッジのカチェマック・ベイ・キャンパスの生物学者、デボラ・ボージ=トビンは言う。「はっきりとは分かりませんが、それを調べているところです」


さらに謎なことに、死にかけのラッコは筋肉も体脂肪もあり健康そうに見えながら、死ぬ前に麻痺したり発作を起こしたりするのです、とボージ=トビンは言う。


ボージ=トビンはアラスカ野生生物救護ネットワークのホーマー支部長を務めている。8月以降、25名ほどのボランティアらが114頭の死んだラッコもしくは瀕死のラッコをホーマーの浜で回収してきた。1頭のラッコはオスの赤ちゃんで、9月18日に保護された。ケスクと名付けられ、現在スワードのアラスカシーライフセンターでリハビリ中だ。ケスクの母親は安楽死させなければならなかった。


母親からは生態標本が採取され、死体は検死のために獣医病理学者のもとへ送られた。しかし、死因についてはまだ報告されていないのです、とシーライフセンターの代表兼最高経営責任者であるタラ・レイマーは言う。


アラスカ州全体で、今年190頭のラッコが回収されたが、そのほとんどは死んでいた。病気のラッコはボランティアらにより注意深くモニターされ、リハビリができなければ獣医(ホーマー動物病院の獣医を含む)により安楽死となる。


野生生物救護ネットワークのボランティアの中には米国本土48州で海洋生物学を学ぶ学生たちが参加するセメスター・バイ・ザ・ベイ・プログラムのカチェマックベイ・キャンパスから参加している者もいる。ボージ=トビンもそのプログラムを運営する一人で、学生たちにラッコ調査に関する集中コースを開いている。


このコースは、時には膨張したラッコの死体を突きまわり、生態標本として歯を抜いたりしなければならないという時には胸の悪くなるような仕事も含まれている。ノースカロライナ州ウィルミントンから来た学生ナタリー・ハンターが、10月終わりのある寒い金曜の午後、行ったように。ハンターは体長や性別のような情報を記録し、死体がまだ新しければ回収する。10月30日、ハンターは他のボランティアらと2頭のラッコの死体を回収し、3頭目を調査した。ボランティアが行う典型的な調査はこのような内容だ。


「ある時点で、3頭から11頭のラッコを1日に調べていました」とボージ=トビンは言う。


ホーマーのボランティアはラッコの死体の調査や生きているラッコのモニターについて非常に勤勉だったため、先週、アラスカシーライフセンターはホーマーのヴォランティアらとホーマー動物病院へ2015年プラネットブルーパートナーシップアワードを贈った。


カチェマック湾には訳6,000頭のラッコがいる。北部の海岸に打ち上げられたラッコの死体は他の地域から流されてきた可能性もある。衰弱していたラッコもいた一方、十分な体脂肪をたくわえた健康そうなラッコもいた。1頭は銃で撃たれていた。心臓に障害を起こすバクテリア感染である弁膜心内膜炎の症状をみせていたラッコもいた。弁膜心内膜炎は今世紀初めごろカチェマック湾で同様な大量死が起こった際にみられたものである。ほとんどのラッコについて正確な死因はまだ不明である、とシーライフセンターとアメリカ漁業野生生物局は先月のプレスリリースで報告していた。


「アメリカ魚類野生生物局、アラスカシーライフセンター、アラスカ獣医病理学サービス、アメリカ地質調査所国立野生生物センターの専門家らによるチームが、現在ラッコの死が急増した原因やラッコへの潜在的な重要性について理解を深めるため活動している」とプレスリリースは述べている。


16頭のラッコから採取された小さな生態標本からは有害藻類ブルーム(大発生すること)から毒素が検出された。7頭からは今夏カチェマック湾の藻類大発生で見られたプランクトン、プセウドニッチアにより生成される毒素、ドーモイ酸が検出された。8頭には、麻痺性貝中毒(PSP)をもたらしたプランクトンと同じアレキサンドリウムプランクトンの毒素がみられた。1頭にはドーモイ酸とPSPの両方が見られた。1頭はドーモイ酸の値が1ml当たり594ナノグラムを示した。


米国食品医薬品局は貝類や甲殻類においてドーモイ酸が1ml当たり20ナノグラムに濃縮されていた場合安全ではないとしている。カチェマック湾で採取されたプランクトンのサンプル検査からはドーモイ酸の痕跡が見られた。


しかし、ラッコは毎日体重の40%を食べるため、ラッコの生体毒素の値は貝類や甲殻類の値と比較したり、人に有害な値であると解釈することはできないとボージ=トビンは警鐘を促す。また、ラッコが検査でドーモイ酸やPSPが陽性であったことが、最近の大量死におけるすべてのラッコの死因が生体毒素であるということを意味するものでもない。毒素が陽性であったとしても、死の直接の原因が毒素ではない可能性もある。PSPが陽性であったあるラッコが、銃で撃たれたラッコだった。


「これが大量死を引き起こしている原因だという証拠が十分ではありません」とボージ=トビンは言う。「しかし、そうですね、ここの食物網の中にはこうした毒素が存在していて、検査した死体の中には有害藻類ブルームの毒素が現れています。しかしそれはこの状況全てを説明できるものではありません」


麻痺性貝中毒(PSP)は離れた湾や隠れ場のようなところにあるブルームに現れる。今夏、ハリブー湾とピーターソン湾で貝やカキのPSPが陽性だった。カチェマック湾のラッコの採餌行動についてはあまり多くは知られておらず、また潮の満ち引きや潮流により多くのラッコの死体が打ち上げられるため、「そのラッコたちがどこで汚染されたのか本当のところは分かりません」とボージ=トビンは言う。


その疑問に答える手助けとするため、ボージ=トビンは研究者らが来夏ラッコの採餌行動における行動学的な研究を行ってくれることを期待している。


その間、母親を失ったラッコ、ケスクは健康に育ち、別の親のいないラッコ、アトカと一緒に泳げるようになった。アトカはラッコの大量死の前、7月1日にホーマーで保護されたラッコだ。3頭目の赤ちゃんラッコは10月25日にニキスキで保護され、同様にシーライフセンターにいる。まだ名前はついておらず、まだ隔離されているとリーマーは言う。


まだ幼いうちから母親と離れるアザラシの子どもとは異なり、ラッコは母親と長い時間を過ごすため、リハビリして自然に返すことができない。ケスクもアトカも、最終的には動物園か水族館で過ごすことになる。

HOMER NEWS

More otters washing up; cause remains unknown

By MICHAEL ARMSTRONG Staff Writer Posted: November 19, 2015 - 8:23am