【記事】複雑な食物網~ラッコの乱獲によりカイギュウが絶滅? | How hunting sea otters killed the sea cow, and other tales of megafauna extinction

 本日は2015年11月5日付のThe WEEKから、"How hunting sea otters killed the sea cow, and other tales of megafauna extinction"をお届けします。ラッコの乱獲によりステラーカイギュウが絶滅した?!生態系は複雑に絡み合い、ある種の動物の激減が他の生物の絶滅の引き金になることもあります。

Wikimedia Commons/Hutchinson, H. N. (Henry Neville)
Wikimedia Commons/Hutchinson, H. N. (Henry Neville)

ステラーカイギュウ(海牛)は実際はウシではなかった。ベーリング海に住むほか、ステラーカイギュウは非常に大きい動物で、おそらくは体長10メートル以上、体重11,000kg、おそらく中型のピックアップトラック2台分の大きさであったが、確かなことはいえない。ステラーカイギュウは18世紀中頃に絶滅した。人間による乱獲-----つまり、人間によるラッコの乱獲が原因で。


最近、米国科学アカデミー紀要が発表したラッコの数の減少とある種全体の消滅についての関連性についての研究は、メガファウナ(大型動物相)、文字通り、巨大な動物たち、の特徴の一部だ。

  • ポール・マーティンの過剰殺戮仮設(人間がアメリカ大陸において大型動物の多くを狩りつくしてしまった)の新しい証拠
  • 大型の海獣もしくは大型の陸上動物の減少により引き起こされる、海ー陸間の栄養輸送の減少
  • 生態系の発展においてメガファウナの絶滅が与える継続的な、あるいは永久的な影響
  • それに引き続いて起こる温室ガス効果


しかし、カイギュウとラッコの繋がりは、絶滅や生態系に関するよくある討論で見落としがちなものに光を当ててくれる。つまり、私たちの環境に対し、人間の活動が間接的ではあるが非常に大きな影響を及ぼすということだ。特に、生態系の中で何が何を食べるかという複雑なネットワークである食物網において生態学者は人間が果たす役割や、ある種の動物を失ってしまうことで生態系が受けるダメージについてより注視するようになっており、


最新の米国科学アカデミー紀要の研究によると、生態系学者のジェームズ・エステス、アレクサンダー・バインダー、ダニエル・ドークは比較的古く、ある意味論争になっている疑問に焦点をあてている。なぜステラーカイギュウは絶滅してしまったのか、といことだ。ある仮説では、ベーリング海峡のコマンドルスキー諸島を探検していたロシア人たちがステラーカイギュウを乱獲の末絶滅させてしまったという。その探検家たちが殺した動物たちの比率を考えると、その仮説はまったくもっともらしい。


しかし、別の仮設もある。ハンターたちがカイギュウを全く狩ることがなかったとしても、ラッコ猟が原因でカイギュウは絶滅していたかもしれない、というものだ。つまりこういうことだ。ラッコはウニを食べる。ウニはケルプを食している。ケルプはカイギュウの主なエサであった、と研究者らは議論している。従って、ラッコの乱獲は間接的にケルプを減らすことになり、結果的にはカイギュウを飢えさせてしまう。エステスと他の研究者らは、その理論の一部を最近検証し、「ラッコがいなくなればケルプの森が崩壊してしまうのは事実上確かである」ことを発見した、と直近の論文に書いている。