【記事】カリフォルニアラッコの個体数増加、その意味するもの | Sea otter numbers are up. So, what does it mean?

 本日は2015年9月21日付のモントレーベイ水族館のConservation & Science at the Monterey Bay Aquariumから、"Sea otter numbers are up. So, what does it mean?"をお届けします。2015年のラッコの個体数指数は増加傾向にありますが、果たしてどのような意味を持っているのでしょうか。

2015年のカリフォルニアラッコの個体数は、19世紀に毛皮商人がラッコを絶滅寸前まで乱獲して以来の最高値に達した訳者注:【記事】カリフォルニアラッコ、増加傾向もサメの噛みつきによる問題増加 | Numbers Encouraging, but Shark Bites Still Problematic for Sea Otter Recovery参照)。しかし、絶滅危惧種の回復の見通しは、数が示すよりはずっと複雑だ。


アメリカ地質調査所の研究者らによると、ラッコが好きなエサでもあるウニが最近急増したことは、今年ラッコの個体数が高くなった原因の一つであろう。同時に、個体数が拡大しなければならないカリフォルニア沿岸におけるかつてのラッコの生息域の北端・南端においてホホジロザメの噛みつきにより多くのラッコが死ぬという懸念が拡大している。

 

ウニの個体数が急増したため今年のラッコの数の増加したと考えられている。Photo by Neil Fisher
ウニの個体数が急増したため今年のラッコの数の増加したと考えられている。Photo by Neil Fisher

「ここには主要な発見だけでなく、もっと多くのストーリーがあります」とモントレーベイ水族館や他の機関と協力しているアメリカ地質調査所のラッコ調査プログラムを率いる生態系研究者、ティム・ティンカー氏は言う。「調査結果に影響を及ぼす様々な要因について、私たちは見ていきます」


2015年、個体数の3年平均値は3,054頭に達した。現在の国の回復計画では、絶滅の恐れがあるというステイタスを取り除かれるためには、個体数が3年連続で3,090頭を越えなければならない。


絶滅の恐れがある種のリストから外されても、ラッコはまだ海洋哺乳類保護法の下で希少な種として保護されている。回復計画では、カリフォルニアにおいては少なくとも8,400頭が「最適な持続可能な個体数」であると推定されている。


ラッコは沿岸のケルプの森の生態系の維持に非常に重要な役割を果たしているUSGS photo by Benjamin Weitzman
ラッコは沿岸のケルプの森の生態系の維持に非常に重要な役割を果たしているUSGS photo by Benjamin Weitzman

「個体数が増えているのを見ると勇気づけられますが、カリフォルニア沿岸全体の健全な海洋生態系の一部としてラッコが完全に復活し、持続可能な個体数になって初めて成功したと言えると思います」モントレーベイ水族館のプログラムマネージャー、アンドリュー・ジョンソンは言う。


30年以上にわたり、モントレーベイ水族館の調査プログラムはカリフォルニア及び環太平洋におけるラッコの生息域全体の沿岸生態系の健全性のといてラッコが果たしている重要な役割を理解しようと研究してきた。ラッコは長い間、健全なケルプの森を再生し維持するという重要な役割を担っていると知られている。現在、当館と協力調査機関は、沿岸の湿地帯においラッコ同様の役割を果たしていることを研究している。


また調査プログラムに加え、この象徴的なキーストーン種が回復に欠かせない沿岸生息域の保護と再興を行うための政策を支持するよう、積極的な活動を行っている

ラッコの親子。エルクホーン湿地帯にて。Photo: Randy Wilder
ラッコの親子。エルクホーン湿地帯にて。Photo: Randy Wilder

毎年の個体数調査を行うほか、アメリカ地質調査所の研究者らはラッコの遭難にかかるデータベースも毎年更新している。カリフォルニア沿岸で死んだり、もしくは病気や怪我で回収もしくは保護されたラッコの数だ。2014年には、カリフォルニア州魚類野生生物局、アメリカ地質調査所、モントレーベイ水族館や他の研究所の研究者らは386頭のラッコを回収もしくは記録した。


これらのデータは沿岸の他の地域のラッコの個体群生態系に光を当てるものだ。例えば近年カユコスとピスモビーチの間で回収されたラッコの死体には、高い割合でホホジロザメによる噛みつきの傷が見られた。これは、その地域でラッコの数が減少していることの説明となるだろう。


「2000年代初め以前、モントレーの南でサメに噛まれたラッコを見ることはあまりありませんでした」とカリフォルニア州魚類野生生物局の生物学者、マイク・ハリスは言う。「今やこの地域で遭難したラッコのおよそ70%以上がサメの噛みつきによるものです」


カリフォルニア州の政府当局によるラッコの調査研究の費用は、納税者が確定申告で州税を収める際に自発的におこなった寄付がその一部に充てられている。この基金は2005年にモントレーベイ水族館を訪れた議員の家族により触発されてできたものである。これまで、その基金により270万ドルが集まり、ラッコ分野の研究や他の回復活動に充てられている。


モントレーベイ水族館によるラッコの保護活動への取り組みはこちら


2015年の個体数調査についての詳細はこちら


エルクホーン湿地帯のラッコの写真© Jane Vargas-Smith.

Conservation & Science at the Monterey Bay Aquarium

Sea otter numbers are up. So, what does it mean?

September 21,2015