【記事】ホホジロザメの噛みつきによるラッコの死が増加 | Great White Sharks Are Killing More and More Endangered Otters—But Not Eating Them

本日は8月21日付のNewsWeekから"Great White Sharks Are Killing More and More Endangered Otters—But Not Eating Them"をお届けします。
ここのところ、サメに噛まれた傷がもとで死ぬラッコの割合が急増しています。

ラッコは20世紀初めまで乱獲により絶滅寸前だった。 そしてその回復はホホジロザメの噛みつきにより阻まれている。 MIKE BAIRD VIA WIKIMEDIA COMMONS
ラッコは20世紀初めまで乱獲により絶滅寸前だった。 そしてその回復はホホジロザメの噛みつきにより阻まれている。 MIKE BAIRD VIA WIKIMEDIA COMMONS

ごくまれなケースを除いて、ホホジロザメがラッコを食べているという証拠はない。イタチ科でもっとも大きいにも関わらず、この毛がふさふさした動物たちはホホジロザメが好んで食べるアザラシに比べれば非常に小さいく、食べる価値があるほど大きくないのだ。


しかし、ここ10年、ホホジロザメがラッコを噛み殺すケースが増加している。8月のMarine Mammal Science誌で発表された論文によると、カリフォルニア沿岸部の絶滅危惧種であるラッコの死で報告されているもののうち、60%がサメによる噛みつきが原因となっている。ラッコの生息域の南部、コンセプション岬の北でその傾向は悪化しており、死んで打ちあがったラッコの3分の2以上はサメによる噛みつきがあった。

 

アメリカ地質調査所の西部生態系研究センターのティム・ティンカー氏は、カリフォルニアラッコの生息域の何か所かで、サメの噛みつきによりラッコの数が減少していると話す。

 

「これは、私たちが知る中でも、ある捕食者が非捕食者である種にとって主要な死因となった初めてのケースだと思われます」とティンカーは言う。


ホホジロザメにとってラッコはエサの対象ではないにも関わらず「これほど多くのラッコが噛みつかれ、うち捨てられているのは非常に驚くべきこと」だとモントレーベイ水族館の研究者、サルバドール・ジョーゲンセン氏は言う。氏は先の論文には関わってはいない。「非常に特異な状況で、このような状況を見たことがありません」


一体何が起こっているのだろうか。

 

カリフォルニアラッコ (Enhydra lutris nereis)はアラスカラッコやアジアラッコ同様、20世紀の初めごろまでにほぼ絶滅するまで乱獲されてしまった。1970年代に絶滅危惧種に分類されて以来、海洋哺乳動物保護法のような国の法律により保護がおこなわれ、なんとかラッコの復活を助けてきた。現在、カリフォルニアラッコの生息域は南はサンタバーバラ付近、北はサンタクルーズ近くのピジョン岬まで広がっている。一方、カリフォルニア沖では、ホホジロザメの生息数も増加しているようだ。

ホホジロザメは通常アザラシのような大型動物を捕食する。2番目に小さい海洋哺乳類であるラッコではない。 REUTERS
ホホジロザメは通常アザラシのような大型動物を捕食する。2番目に小さい海洋哺乳類であるラッコではない。 REUTERS

こうした増加が傾向を説明するのに役立つかもしれない。つまり、ラッコが増え、おそらくラッコに噛みつくホホジロザメも増えている。しかし、それほど単純ではない。何故なら、ラッコの個体数の増加の速さと比較してサメの噛みつきによる死の数の増加はもっと速いからだ。


これらの噛みつきによる死は、あまりものを知らない若いホホジロザメによって引き起こされるという説がある。若いサメが「初めて海洋哺乳類を食べようとした」時に起こる可能性がある、とカリフォルニア大学ロングビーチ校のサメの専門家、クリストファー・ロー氏は言う。ラッコが噛まれる傾向と時間系は「南カリフォルニアで目撃された、もしくは捕獲されたホホジロザメの幼魚の数に基づくサメの個体数の増加から考えられるものと一致」している。しかし、腑に落ちないのは、若いサメがエサになる可能性があるものをなぜただ噛みつくだけで食べないのかということだ、とロー氏は付け加えた。若いサメにとっては、ひとかじりするだけでラッコには、「ローファットのブラウニー」のように、十分なカロリーがないことが分かってしまうのかもしれない、とロー氏はジョークを言った。


一方、「ホホジロザメの個体数が増えるに伴い、エサとしてアザラシを選択する機会の競争が激しくな」り、「別の場所でエサを探したり、他の可能性のあるエサを調べたりしている」という説もあるとロー氏は言う。

ホホジロザメによるラッコの噛みつきの増加は 「非常に特異な状況で、今までにありません」と研究者のサルバドール・ジョーゲンセンは言う。写真は非常に珍しい双子のラッコ。 MIKE BAIRD VIA WIMIKEDIA COMMONS
ホホジロザメによるラッコの噛みつきの増加は 「非常に特異な状況で、今までにありません」と研究者のサルバドール・ジョーゲンセンは言う。写真は非常に珍しい双子のラッコ。 MIKE BAIRD VIA WIMIKEDIA COMMONS

関連したnoteがある。この傾向はサメの分布の変化に伴うものと考えられている。サメはアザラシが多く生息する地域での目撃が増加しているが、それらの場所にはまたラッコも生息する。この傾向は人間がホホジロザメに噛まれる事故が90%減少した のと同時期にー過去60年ー起こっている、とジョーゲンセンは言う。従って、人がいる浜からアザラシが多い浜へサメが移動し、人間にとっては助かったが、ラッコにとってはそうではなかったということがデータから推測できる。

 

アメリカ魚類野生生物局の生物学者リリアン・カーズウェルは、かつてオレゴン州北部からバハカリフォルニア半島の中部ほどにかけて村税していたラッコの生息域は、ホホジロザメにより制限されてしまっていると言う。この地域には約50頭が生息しているが、そこにはラッコのエサとなる食べ物(貝やカニなどの撃脊椎動物)が豊かでサメの噛みつきから何らかの形で守られているようだ。

ラッコにとっていい場所がもう一つある。サンタバーバラの南にある群島、チャネル諸島で一番離れている島、サンニコラス島だ。ここにいるラッコの群れは小さいが、「サメの噛みつきによる死の影響を受けていないようで、この5年間に年に16.4%の割合で増加している」とリリアン・カーズウェル氏は述べている。