【記事】急増するシャークバイト、カリフォルニアにおけるラッコの死因のトップに | Increasing white shark bites now leading cause of sea otter mortality in California

 本日はアメリカ地質調査所の西部生態系調査センター(WREC)の報道資料から、"Increasing white shark bites now leading cause of sea otter mortality in California"をお届けします。シャークバイト(サメに噛まれること)による死亡率は、現在、打ち上げられて回収されたラッコの死因の半分以上を占めるようになってきました。

引用: 

WERC(西部生態系研究センター) 概要: 「ホホジロザメによるシャークバイトがカリフォルニアにおけるラッコの死因の最大原因に」 2015年8月更新. 


この概要は以下を参照: 

Tinker, MT, BB Hatfield, MD Harris, JA Ames. 2015. Dramatic increase in sea otter mortality from white sharks in California. Marine Mammal Science. doi:10.1111/mms.12261


カリフォルニアラッコ(Enhydra lutris nereis)はホホジロザメ(Carcharodon carcharias)の捕食対象とは通常考えられていないが、この10年シャークバイト(サメに噛まれること)の傷を追ったラッコの死体の目撃が増加している。アメリカ地質調査所とカリフォルニア魚類野生生物局(CDFW)の研究者らがマリンママルサイエンス誌にこのトレンドの背景について発表した。


研究者らは、アメリカ地質調査所のカリフォルニアラッコストランディングネットワーク及びモントレーベイ水族館、海洋哺乳類センターを通じて得た、カリフォルニア沿岸で29年に渡り回収されたラッコの死体1,870体を調べた。過去10年以内にシャークバイトによるラッコの遭難は急増している。現在、カリフォルニア沿岸で回収されるカリフォルニアラッコの死因の半分以上を占める。エステロベイとピスモビーチ地域は最も増加が大きく、北カリフォルニアがそれに続いている。


この変化はおそらくホホジロザメの個体数増加もしくは、生息域の変化によるものだと考えられる。ホホジロザメの数の多さやトレンドについてのデータは限られているが、太平洋北東部では法による保護の結果、ホホジロザメの個体数が増加しているものと考えられる。


ピエドラスブランカやアニョヌエボなどの地域ではキタゾウアザラシ(Mirounga angustirostris)などの海洋哺乳類の数が多いため、ホホジロザメがより沿岸に近い場所でエサをとる時間が長くなったようだ。冬と春の初めにサメに噛まれるラッコの数が増加していることは、特に主なエサが魚から海洋哺乳類変わる若いサメのエサ場における動きと一致している。


シャークバイトの痕跡は、ホホジロザメに限られ他の種のサメのものはない。困惑するが、ホホジロザメは噛みついたラッコを実際に食している証拠は残っていない。サメが食べもしないラッコに噛みつくという行為を説明するなら、間違えて噛みついてしまったか、何か調べるために噛みついたか、もしくは高カロリーの脂肪を必要としない、もしくはラッコを嗜好しているかだ。これは、ホホジロザメによるシャークバイトが、捕食対象ではない種の主たる死因になった初めてのケースである。

マネジメントへの影響

  • 研究によると、カリフォルニア中央部の生息域においてラッコの個体数は環境収容能力の限界に近づいてきている。生息域の拡大と生息域の北端・南端の拡大が更なる回復には不可欠である。しかしその地域はまさにサメに関連した死因が最も多い地域でもある。
  • ホホジロザメの生活史や個体数のトレンド、移動についてのデータが不足しているため、こうしたシャークバイトに対する説明やシャークバイトが増加しているというトレンドの原因は依然として不明である。
  • シャークバイトの頻度やラッコが打ちあがっていた場所のデータは、人間の沿岸部の利用に関連したホホジロザメの行動研究の有効な代用となる可能性がある。

この発表資料はこちらからPDFでダウンロードできます
WERC PubBrief 201508 - Tinker Sharks Otters_final.pdf 401,114 Bytes

USGS

Increasing white shark bites now leading cause of sea otter mortality in California

USGS Western Ecological Research Center, August 2015.