【記事】ラッコと海草:ブリティッシュコロンビア州とカリフォルニア州 | Sea Otters & Seagrass: BC Central Coast vs. California

本日は2015年2月14日付のHakai Instituteの記事"Sea Otters & Seagrass: BC Central Coast vs. California"をご紹介します。カナダのブリティッシュコロンビア州とアメリカのカリフォルニア州において、海草生態系にラッコが及ぼしている影響の調査についての研究交流が行われています。栄養カスケードについては次回ご紹介します。

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ハカイ研究所の研究員、エリン・レヒシュタイナーとマーゴット・ヘシン=ルイスによる報告


先月、私たちはカリフォルニア大学サンタクルーズ校のティム・ティンカー氏、ブレント・ヒュー氏と沿岸調査の情報交流のため、ワシントン州、オレゴン州、カリフォルニア州の西岸を車で南下しました。ティムは昨年の夏、ハカイで開催されたピュー・ワークショップに参加しており、ブレントはハカイで行われた海草の事前調査に参加していました。これは先の訪問へのお礼でもあり、また、ますますラッコが重要な役割を果たすようになってきているカナダのブリティッシュコロンビア州とアメリカのカリフォルニア州の海草システムに関する意見を比較するためでもありました。

 

ブレントとティムは、カリフォルニア州のエルクホーン湿地帯の栄養豊富なアマモ(海草)システムにおける、捕食者としてのラッコが誘因した栄養カスケード(注:食物連鎖を通して様々な栄養段階の生物へ玉突き現象のように影響が伝わること)について研究しています。栄養豊富な状態下ではアマモは着生植物(アマモの表面に繁殖する小さな植物)に覆われ、アマモの光合成能力を限定してしまいます。着生植物は、草食生物(巻貝、等脚類、ウミウシ類等の小さな無脊椎動物)によって食べられます。エルクホーン湿地帯では、カニがそうした草食生物を食べるため、アマモの表面がきれいになりません。そこへ、カニを好んで食べる頂点捕食者であるラッコがやってきます。カリフォルニア州ではラッコがカニを食べ数を減らすことで、等脚類やウミウシ類が繁殖することができます。これらの草食生物はアマモの表面をきれいにし、非常に健全な「アマモの草原」を作り出すのです。もしそれがなければ、生態系は栄養物によって汚染されてしまったでしょう。

エルクホーン湿地帯でカニを食べるラッコ. Photograph by Ron Eby.
エルクホーン湿地帯でカニを食べるラッコ. Photograph by Ron Eby.

ハカイにおける沿岸ラッコ調査プログラムについて私たちが非常に興味を惹かれる疑問の一つが、ここブリティッシュコロンビア州においても、ラッコが同じようにアマモの生態系に対して影響を及ぼすかということです。昨年の海草調査の事前研究によると、餌をとるラッコの生息密度が異なる場所によって、バイオマス(注:ある生態系における生物の総量)に興味深い違いが表れています。しかし、カリフォルニアと似た兆候があるからといって同じメカニズムが働いているということにはなりません。ハカイ・海草調査プログラムのチームは、これらの場所において着生植物(無数の草食無脊椎生物)やそれに関係する魚や大型の無脊椎動物を計測しました。この基準は、長期的な生態系のモニタリング調査や、カリフォルニアやアラスカの「ラッコ化した(ラッコがいる)」他の生態系と比較に使われることになります。私たちは沿岸全域でこうした違いについての調査や、それらがラッコが危機的な海草システムを再構築する際に果たす役割について、報告をまとめることに積極的に協力しています。これが、研究交流における一つの目的でもありました。

ブリティッシュコロンビア州(中央沿岸部) と カリフォルニア州(エルクホーン湿地帯)の複数の場所におけるアマモのバイオマス。▲はラッコ密度が低い場所、●は高い場所を示す。
ブリティッシュコロンビア州(中央沿岸部) と カリフォルニア州(エルクホーン湿地帯)の複数の場所におけるアマモのバイオマス。▲はラッコ密度が低い場所、●は高い場所を示す。

全体として、この研究交流の結果、海草生態系におけるラッコの影響についての理解を標準化・定量化するため、アラスカ、カリフォルニア、ブリティッシュコロンビア間の特定のパラメータを比較する計画を示すことができました。エルクホーン湿地帯以外の地域でラッコにより栄養カスケードが調整されているということが起こっているのか、またアラスカからカリフォルニアにかけての緯度傾斜上でラッコがアマモ藻場にどのような影響を与えているのか知りたいと思っています。私たちの、カリフォルニアとの研究交流は共同研究として成功であったと言えます。また、将来的に、国境を越えて更に研究が行われることを楽しみにしています。

記事元:
HAKAI Science on the Coastal Margin

Sea Otters & Seagrass: BC Central Coast vs. California

February 14, 2015 by erictula