本日は2015年1月21日付のOne Green Planetの記事から、" Sea Otters: Eco-Warriors of California’s Coast"をお届けします。カリフォルニアラッコたちは、海を守るために今日も戦っています。
ラッコやカワウソが好きではない人などいるでしょうか?ラッコもカワウソも最も愛らしく、気ままな動物です。カワウソももちろん好きですが、ラッコには特に、その顔つきや性質に愛すべきものがあります。ふわふわで、お気に入りの石を持ち、そして何より生態系を守る戦士でもあるのです!
ラッコは、実際にはかなり生態系に寄与していますが、そんなふうには見えないかもしれません。最近の研究で、この愛らしいラッコがカリフォルニアの沿岸海域の健全性を維持するために非常に重要な役割を果たしていることが分かっています。ラッコは、キーストーン種として、生息しているケルプの森や海藻棚の健全性に責任を持っているのです。ラッコが戻ってきたことにより沿岸生態系にどれほどの利益がもたらされたかを考えると、海の健全性を守るのを助ける手伝いをしてくれるラッコを私たちが守ってあげなければならないのは明らかです。
カリフォルニアラッコの復活
毛皮貿易が盛んになると、1900年代初頭には多くの人々がラッコの毛皮を求めてカリフォルニアの沿岸へやってきました。ラッコの毛は非常に密であるため、世界中でその毛皮が珍重され、この時代猟師たちに莫大な利益をもたらしました。カリフォルニアラッコは、1911年に膃肭臍保護条約(おっとせいほごじょうやく)のもとで保護を勝ち得た頃までには、絶滅してしまったと考えられていました。幸運なことに、1938年にわずかなラッコの群れがカリフォルニア州のビッグサー海岸で発見され、保護の甲斐もあって生息数は増えはじめました。90年代半ばには生息数は2,400頭ほどまでに増えました。現在、野生には3,000頭足らず(この数は150年前の4分の1にすぎません)のカリフォルニアラッコしか生息していませんが、ラッコが海洋生態系の健全性を推進しているということが分かってからは、この素晴らしいラッコの保護に対してより注意が向けられるようになってきました。
エルクホーン湿地帯のラッコたち
ティム・ティンカー氏はアメリカ地質調査所の研究のため、ラッコを追跡調査し、ラッコが広範囲にわたり生態系にどのような影響を及ぼしているかを研究しています。
「ラッコに注目しているのは、単にラッコが可愛らしく、見ていて楽しいからだけではありません。この生態系のシステムにおいて、ラッコが非常に大きな役割を果たしているからです」
カリフォルニア州モントレー近郊にある国立河口研究保護区、エルクホーン湿地帯における最近の調査では、ラッコの生息数がある程度確立していれば、生態系全体に非常の大きな利益をもたらすことが強調されています。エルクホーン湿地帯は現在では保護された研究区域ですが、20年前には全く雑然としており、「水の華」(藻類の異常繁殖)がひどい状態でした。何故でしょうか。研究者たちは、これはラッコがいなかったためであると考えています。
ラッコは、塩沼の食物網の頂点に位置し、いろいろなカニを食べます。カニは、小さな「マイクログレーザー」(藻類を食べる生き物)を食べ、その小さな生き物は藻類の量をコントロールします。藻類は水中の酸素を全て吸収し、動植物に必要な日光を遮るため、海洋生態系全体に影響を及ぼす可能性があります。カリフォルニアの沿岸は、農業排水により非常に「水の華」に対して脆弱ですが、バランスのとれた生態系は、自然と藻の繁殖を抑える働きをするのです。
もしラッコがこの海洋生態系から取り除かれてしまったら、沿岸のカニの数は大爆発してしまいます。これらのカニは藻を食べる小動物の数を激減させてしまい、その結果、藻類はコントロールされることなく繁殖してしまいます。こうしたことが起こってしまうと、もともと繁茂しているアマモ(海草の一種)の表面に藻がついてしまい、完全にアマモを窒息させていしまいます。そして、多くの種が大きな食糧資源を失い、また棲家をも失ってしまうのです。
しかし、ラッコが戻ってきて、やがてこの問題は自然と正しく収まっていきました。
「エルクホーン湿地帯では、ラッコの数の増加により、大きなカニが減ってきました」とティンカー氏は述べています。「その結果、ウミウシ類や等脚類のように、アマモの表面についた藻類を食べる小動物がより増え、アマモの海草棚がより健全で豊かになりました」
ラッコが戻ってきてその数が増えているため、生態系全体のバランスや沿岸地域の安定性が復活しつつあります。
ケルプの森の番人
ラッコが存在するメリットについては、ケルプの森の生態系においても述べられています。ケルプの森は北アメリカの太平洋沿岸一帯に圧倒的に存在しており、熱帯雨林同様、二酸化炭素を吸収するのに有効だと言われています。
コントロールされなければ、ウニはケルプの森の大敵で、広い範囲のケルプの森を食べてしまうことが知られています。そして、沿岸地域の多くを不毛地帯にしてしまいます。ケルプの森は、魚やアザラシ、そのほか多様な海洋生物の棲家を提供しています。従って、ケルプがなければこの生態系における多様性は非常に粗末なものになってしまいます。ありがたいことに、ラッコがこのケルプの森にやってきて、ウニやケルプを食べる他の無脊椎動物を食べるため、海中のケルプの森の健全さを保つ手助けをしているのです。
健全なケルプの森は、食物連鎖のずっと上のほうまで影響を感じることができます。
「多くの沿岸海洋生物たちが、健全で豊かなケルプの森の恩恵を受けます。メバル、アイナメ、サケの幼魚、ニシンのような魚から、ケルプの森に棲みケルプから餌を得ている何千種もの無脊椎動物、そしてハーバーシール(アザラシの一種)や海鳥などのより大きな捕食者にいたるまで」とティンカー氏は説明します。
これは、海洋生態系において他の種が繁殖できるということを意味するだけではなく、健全なケルプの森が二酸化炭素を吸収することで人間をも助けているのです。これが、ラッコを愛すべきもう一つの大きな理由です。
生態系を守る戦士
カリフォルニアラッコが復活したことは、アメリカ西海岸の健全性にとって非常に重要なことです。ラッコを保護することは、可愛らしい動物を救うこと以上にもっと大きな意味があるということが分かっているのです。多くの生物たちが住む生態系を守るということなのです。
カリフォルニアラッコの生息数が増え、生息域が拡大することで、河口や沿岸海域が再び以前の健全さと美しさを取り戻すことができるのです。ラッコたちにとっては責任重大ですが、きっと挑戦してくれることでしょう。私たち人間が地球に与えてしまったダメージの一部を取り戻すために、きっと力を貸してくれるでしょう。
写真: Gregory “Slobirdr” Smith/Flickr
記事元:
One Green Planet
Sea Otters: Eco-Warriors of California’s Coast
Anna Vallery | January 21, 2015
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