ラッコを守る人々の情熱とラッコの素晴らしさを描いたドキュメンタリー"Saving Otter 501"の書き起こしパート5、ついに完結です。
遂に501号が自然に帰る日がやってきました。無事に自然に適応できるのでしょうか。
試練
501号にとって、追い込みの時期に入りました。
自然に戻す日が近いため、無線装置を体に埋め込む準備をします。それが、危険な最初の1週間を過ごす際の命綱となるのです。しかし、メイヤーとハザンはまず501号を捕まえなければなりませんが、捕まえるのはここ数日で一段と難しくなっています。
ハザン「501号は、日に日に野生の心を持つようになっていますから、無線を埋め込む手術ができる状態になるころには、捕まるのを嫌がるようになります。こうした行動や、抵抗したり、逃げようとしたりする反応はごく当然のもので、私たちもまさに501号が年齢にふさわしい、自然に戻されるラッコとしてそのような反応をするのを期待しているのです。」
獣医師「よし」
水族館の獣医師、マイク・マリーが手術の準備をしています。
獣医師「ケイティー、血糖値は測った?」
ケイティ「はい」
可哀想な501号にとっては、こんな経験をするのはたくさんのように思えます。
しかし、何十年も積み重ねたデータは、これが、長い目で見た場合彼女の助けになるのだという
ことを示しているのです。
一匹の、小さなラッコにとっては紆余曲折の道でした。
膨大なことを学ばなければならず、失敗することも多いでしょう。
こうした複雑さと精神的な重圧は、私たちに歴史を書き換えることがどれほど難しいかを思い知らせます。
私たちが絶滅近くまで追い込んだ動物を救うことは、簡単なことではありません。
3週間後、501号は手術から完全に回復しました。しかし、最も困難な瞬間が近づいています。
5か月にわたり、501号はトゥーラに頼り切りでした。寝ている間も抱きしめ、いつもお腹がいっぱいになっていることを確かめ、守ってくれていました。トゥーラは501号に、ラッコらしくなる方法を教えてきたのです。それも終わりにしなければなりません。永遠に離れ離れにならなければならない時が来たのです。
ハザン「501号がどれほどのストレスを抱えるのか見るのは辛いです。私も長い時間を一緒に過ごし、育ててきましたから。でも、これが501号にとっては一番いいんです。こうすることで501号が野生のラッコとして成功するのだということも分かっています。」
しかし、501号の経験が、野生のラッコの子どもと同じであるとみることは難しいのです。
数日のうちに、501号は自力で生きていくことに焦点が当てられ始めます。
深い水槽を何度か経験したことを除けば、501号にとってはこの約1メートルほどの深さの水槽が唯一知っている世界なのです。
遂に、水族館のチームは501号には本物を見る準備ができたと判断しました。
挑戦
メイヤー「今日、501号をエルクホーン・スルー湿地帯へ放します。ここは、全ての養母に育てられた、私たちの研究対象のラッコを放しているところです。自然に返す段階は、私にとってはかなり重圧を感じます。産まれて間もなく浜辺に打ち上げられ、私たちが保護して以来、これからの2週間が501号にとって本当に一番死ぬ確率が高い時になります。」
メイヤー「一、二、三!」
(501号が水の中に飛び込む)
ハザン「501号を放すのは少し難しいですね。すぐに周囲の環境に適応するのを妨げる多くの困難にぶつかることは分かっているので。だから、少しハラハラしますね。なんとか切り抜けてくれればいいのですが。」
モントレーベイ水族館のチームは、501号を自然に放したあと追跡し、観察を続けています。
しかし、良い知らせはありません。
3日目までに、501号は生きていくのに必要な量のほんの一部しか食べていません。
ハザン「私は本当に、501号のことを心配しています。体調も。この3日間、餌の量にもむらがあり、痩せているようです。」
501号が沼地の入り口に入り込んだとき、メイヤーとハザンは501号を保護すべきだと確信しました。つまり、保護しなければ・・・
メイヤー「沼地で501号を発見しました。501号を見かけたのは、息継ぎをするのに水面に顔を出した時だけです。その瞬間を狙って、網で捕まえるのです。」
時が刻々と迫っています。早くしなければ、501号は死んでしまいます。
ついに、数時間かかって、501号を網で捕まえました。
メイヤーは、おそらく世界で最もたくさんのラッコを捕まえた人物でしょう。しかし、このチームにとっても、この状況は前例のないものでした。
メイヤー「もしこの再捕獲を一言で言い表すなら、大事件、でしょう」
無事水族館へ戻りましたが、501号が泥まみれになっており、毛並みもがさがさになっていました。
メイヤー「体重が10%ほど減っています。上の左の犬歯が3ミリほど欠けてしまっています。何かのバクテリアにも感染しているようです。しかし、健康状態を取り戻して、きっともう一度自然に放せると思います。」
1か月ほど研究施設で過ごしたあと、501号は再度挑戦します。
メイヤー「これから二度目のリリースに向かいます。501号はすっかり元気になり、体重も戻りました。」
メイヤー「最初の挑戦は成功しませんでしたが、その中でも501には何か経験し学んだことがあると思います。できるだけ早く、できれば初日から、自分で餌を獲ることができればいいのですが。」
しかし、可能性はそれほど大きくはありません。分からないままのことも少なくありません。
こうした時間全て、全てのケア。全てが、たった一頭の小さなラッコのためなのです。
しかし、メイヤーと彼のチームにとっては、天秤にかけてもそれ以上の価値があることなのです。
メイヤー「ラッコたちが自然に戻ったことが成功した、と言うには、ラッコたちが繁殖して個体数の増加に貢献しなければなりません。単に育てて自然に返し、生き延びたとしても、野生のラッコたちの餌を横取りするだけになってはいけないのです。また、私にとって重要なのは、私たちの取り組みは、研究者の皆さんに対する敬意であること、またラッコの個体数の回復に貢献していると実感できるということです。
このプログラムが本当に成功したと感じられるようになるまで、長い時間がかかりました。でも、そこまで到達しつつあると思っています。」
希望
501号の物語は一つの例にすぎません。
私たちは過去の間違いを正すことができます。こうした、保護に尽力してきた人々がいなければ、501号は生きてはいなかったでしょう。そして、私たちはその努力をこれからも続けるのです。
自然に返されてから1年余り、彼らの努力が報われたことが分かりました。メイヤーと彼のチームは501号がエルクホーン・スルー湿地帯で、ちゃんと餌を取っているのをしばしば目にしています。そして最も良かったことは、501号は最初の子どもを育てていました。501号は、再び野生に戻ったのです。
しかし、悲しい知らせもありました。
501号が野生に放たれて数か月後、トゥーラが高齢のため息を引き取りました。
代理母プログラムの「母」として、トゥーラは永遠にモントレーのラッコたちに繋がっていくでしょう。そして、ラッコを愛する人々は、トゥーラに感謝せずにはいられないでしょう。
おわりに - らっこちゃんねるより
この動画は本当に何十回も見たのですが、やはり、二度目のリリースをする時のメイヤーさんとケイティさんの笑顔を見たら、涙が止まりませんでした。遂にここまできたか、とほっとすると同時に、身が引き締まる瞬間なのでしょう。
たった一匹のラッコの子どもを助けるために、「なぜそこまで?」と思えてしまうほどの、多くの人々の途方もない努力と貢献、時間、そして費用がかけられています。それがなぜなのか、この動画をご覧いただいた方には説明の必要はないでしょう。
正直なところ、この動画の翻訳を終えたら、らっこちゃんねるの役割は半分果たしたようなものだな、と感じていました。特に宣伝もしていないので、どれほどの方に見ていただいているかわかりませんが、もしこの記事をお読みになって、ちょっとでも心に残ることがあったら嬉しく思います。また、もし機会があれば、こうした取り組みをしている人々がいるということを、雑談のついででも構いませんので、周囲の方に伝えていただければ幸いです。
そしてもし何か行動を起こしたい、と考えてくださるなら、この保護活動を支えるためにも、ぜひ寄付をお願いします。これらの保護プログラムの費用は、多くが一般の人々の寄付金から賄われているからです。
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ご覧いただき、ありがとうございました。
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サマンサ (日曜日, 24 5月 2015 16:35)
地球ドラマチックでやっていた『ラッコ501号を救え!』を録画していたのですが、母に消されてしまい、顔面蒼白でネット検索したら、こちらのサイトがすぐ出てきました。翻訳までしてくださって大変分かりやすいです。らっこちゃんねるに出会えた今となっては、録画を消した母に感謝したいくらいです。