【記事】ギジェットの死因はサルコシスチス感染症の急激な発症 | Death of Monterey Bay Aquarium Sea Otter Gidget Caused by Rapid-Onset of Sarcocystis Infection

本日は2019年5月17日付のMonterey Bay Aquarium Newroomより、"Death of Monterey Bay Aquarium Sea Otter Gidget Caused by Rapid-Onset of Sarcocystis Infection"をお届けします。2月に死んだギジェットの死因は、オポッサムを宿主とする寄生虫サルコシスチス・ニューロナによる感染症であることがわかりました。

モントレーベイ水族館は、急性サルコシスチス・ニューロナ(訳者注:オポッサムを宿主とする寄生虫)感染症の急激な発症が2月のギジェットの死を引き起こしたと明らかにした。ギジェットは10歳のメスで、ラッコ展示水槽でも人気で、座礁したラッコの子どもたちのための水族館の代理母プログラムにおいて非常に重要な役割を果たした。ギジェットのDNAはまた、ラッコのゲノム配列にも使用された。

 

野生のラッコは、この寄生虫に感染したエサを食べることで、サルコシスチスに感染し死んでしまう。死後解剖(人間の検死に相当)の結果や病気が急速に進行したことから、水族館の獣医チームは、ギジェットが食物を通して、あるいは海鳥のような宿主が野外にあるラッコ水槽上空を通過する際に排泄したため、寄生虫に晒されてしまったのではないかと考えている。

 

当館は保護された子どものラッコやそのラッコをケアする代理母ラッコたちにはこれまで通り天然ものもしくは養殖による生きたエサを与えていく。なぜなら生きたエサを与えることは、これまで座礁した子どものラッコを野生に返すことに成功してきたこの代理母プログラムの要素として必要なものだからだ。

 

「ギジェットがどのようにしてサルコシスチス原虫に感染したのかはっきりはわかりません」と水族館のジェーン・ダナウェイ獣医サービス部長のマイク・マリー博士は言う。「ギジェットの抗体が短期間で劇的に増加したことから、これは急性感染であり、既存の感染の再発ではないと考えています」

 

抗体レベルの上昇は通常、感染に対して免疫機能が反応しているということを示している。

 

野生ではサルコシスチス・ニューロナ原虫は、感染したオポッサムの糞が水に流れる際に海の食物網に入ってくる。この寄生虫は魚介類や甲殻類などの組織にたまり、それを食べるラッコに感染するのだとマリー博士は言う。

 

2月3日に死ぬ前、ギジェットは慢性的な健康問題を抱えていたが、マリー博士は、このようにもともとあった体の状態のためにより感染しやすくなってしまったのかどうかを解剖から決定することはできないと述べた。代理母として座礁ラッコの子どもをバックヤードで育てるラッコのキットも、同様の抗体の急増を経験した。キットは治療されたが、病気の症状は発症しなかったと博士は付け加えた。

 

この経験を、ラッコを飼育する他の施設の獣医仲間とシェアしていくとマリー博士は言う。

 

「ギジェットは数百万人もの人々の心に触れ、私たちの代理母プログラムで重要な役割を果たしました。ギジェットはそのDNAを通じて、ラッコ保全に長きにわたって貢献することになるでしょう」とマリー博士は言う。「ギジェットの死を受け、私たちはケアしているラッコたちに対するプロセスにより安全措置をはかろうと強く決心しました」

 

ギジェットは20008年の10月、生後10週間の赤ちゃんの時にサンルイスオビスポ群のモロスロランド州立ビーチで座礁しているところを発見された。救助されたのち、ギジェットはケアを受けるため水族館へ運ばれた。

 

ギジェットは米国魚類野生生物庁から野生に返すことができないとの判定を受け、カリフォルニア州ロングビーチにあるパシフィック水族館へ移り、ラッコ展示の一員として育てられた。2013年1月21日、ギジェットはモントレーベイ水族館のラッコ展示水槽へ戻り、他の保護ラッコたちの代理母としての役割を果たした。健康上の理由から代理母をリタイヤするまで、ギジェットは4頭の子どもたちを育て上げた。

 

2015年12月、ギジェットの血液標本がカリフォルニア大学ロサンゼルス校の研究員により、初めてのラッコ遺伝子の配列のために使用された。

 

モントレーベイ水族館のラッコプログラムは1984年以来、絶滅危惧にあるカリフォルニアラッコの研究および回復を促進してきた。これまで当館は850頭以上に及ぶ病気やケガをしたラッコを救助し、多くを野生に返してきた。代理母プログラムのチームはずっと座礁したラッコの子どもを育て、野生に返してきている。また、野生に返すことのできない個体を北米の認可を受けた水族館や動物園へ配置するため、アメリカ動物園水族館協会のスピーシーズ(種)サバイバルプランのコーディネーターとも協働している。

モントレーベイ水族館について

海洋保全をインスパイアするという使命のもと、モントレーベイ水族館は全米で最も称賛を受ける水族館であり、科学教育のリーダーであり、海洋科学と公共政策の包括的なプログラムを通じて海洋保全の声を上げている。私たちの活動は全て、ひとえにこの青い惑星の未来を守るために役立っている。詳細はmontereybayaquarium.orgをご覧いただきたい。