本日は2018年11月14日付のSpokane Public Radioより、”Otter fans float plan to bring sea otters back to Oregon
coast”をお届けします。
本来は自然に戻ってくるのを待つのが良いのでしょうが、カリフォルニアのラッコは北へ生息域を拡大できない状態です。移植については様々なリスクもあり、なかなか一筋縄ではいかないとは思いますが、いつかオレゴン沿岸にもまたラッコが戻ってくるといいですね。。
オレゴンへの以前の再導入についてはこちらの記事をお読みください。
現在、オレゴン州でラッコを見ることができる場所はオレゴン動物園とオレゴンコースト水族館だけだ。 TOM BANSE / NW NEWS NETWORK
アメリカ西海岸でラッコが乱獲され絶滅に瀕してから1世紀以上がたつ。この可愛らしい動物はワシントン州、ブリティッシュコロンビア州、カリフォルニア州沿岸に再導入され成功しているが、1970年代にオレゴンにラッコを戻そうとする試みは失敗に終わった。
そして今、新しい非営利団体が再度挑戦するために結成された。
「今まで約110年間、私たちの生態系には大きな穴がぽっかりと開いたままなのです」とコバリスで暮らすシレッツ族のピーター・ハッチは言う。「オレゴン沿岸から、ラッコはいなくなったままなのです」
ハッチは最近、オレゴンの沿岸にラッコを取り戻すことを目的とする新しい非営利団体の委員に参加した。この団体はエラカ・アライアンスという。「エラカ」とは、クラットソップ=チヌック族の言葉でラッコを指す。
「私たちは、沿岸のこの場所にラッコを連れ戻し、ラッコの生息域を再び完全にし、そしてこの場所が再び完全になるという考えに元気づけられています」ニューポートの海を見渡す崖の上で、ハッチはインタビューに答えてそう言った。
ハッチは海からラッコ岩のほうへ指をさし、今から1世紀以上前、そこで最後のオレゴンの野生のラッコがハンターに殺されたと言った。かつて、柔らかく豪華なラッコの毛皮の服は、シレッツの人が持てる財産の中で最も価値があるものだったとハッチは語った。
他の人々も、ラッコの再導入の計画にワクワクしているとハッチは言う。ラッコはウニを食べ健全なケルプの森に貢献し、沿岸生態系のバランスをとるのだ、とハッチは言う。ラッコはオレゴン沿岸の偉大な「大使」になるだろうとハッチは思っている。
しかし、みなが一様に喜ぶ反応を見せているわけではない。
カニ漁を行うボブ・エダーはラッコの再導入に関して懸念している CREDIT TOM BANSE / NW NEWS NETWORK
「全面的にラッコを再導入するという考え方に関しては、私は非常に不安に思っています。水産業への影響がどうなるかわかりませんから」ニューポートのカニ漁師、ボブ・エダーは言う。
エダーは、ラッコにはとりわけ人々を魅了するものがあることは認めている。しかし、ラッコは大食漢として知られており、そのエサにはダンジネスクラブ(イチョウガニ)も含まれている。
エダーはラッコの再導入によって水産業が変わってしまうかもしれないと懸念しているのだ。
「カニ漁を行う人々とは違って、ラッコは繁殖の終わったオスを獲らずに、メスを獲って食べるのです」エダーはベイフロントでのインタビューでそう述べた。「ラッコは無差別に食べるのです」
オレゴンダンジネスクラブコミッションのディレクターは、先週別のインタビューで同じ点を挙げた。ダンジネスクラブはオレゴンの水産業で最も価値が高いものだ。
「これについては本当に研究が必要です。ラッコを導入することで、水産業を排除してしまうことになりかねないからです」とエダーは言う。
「エラカ・アライアンスの理事長ボブ・ベイリーはラッコを100頭再導入しても、水産業の漁獲量への影響は無視できる程度だろうと予想している。
ニューポートのオレゴン州立大学の海洋科学研究所では現在、社会あるいは海洋環境がラッコの再導入を受け入れる準備ができているかを研究している。修士課程の学生ドミニク・コーン海の状態を調べている。
「ラッコに適した生息地はあるでしょうか。えさは十分にあるでしょうか?ラッコは代謝率が高く、常に食べていると知っているからです」とコーンは言う。
コーンによる初期段階の評価によると、沿岸沖の数か所、特にオレゴン南部沿岸は非常によいと思われる。
右上のオッターロック(ラッコ岩)は100年以上前に最後の野生のオレゴンのラッコがハンターに撃たれたところだ CREDIT TOM BANSE / NW NEWS NETWORK
コーンは、以前オレゴンで行われた再導入から得られるあらゆる教訓をさがしたいと言う。大学院の指導教官であるオレゴン州立大学のレイ・トーレス教授は、ワシントン州やカリフォルニア州では成功したのになぜオレゴン州では再導入が成功しなかったのか、謎だと言う。
「以前の失敗に終わった再導入で興味深いのは初めの数年ラッコは順調だったのです」とトーレスは話す。「ラッコたちはエサを獲ったり、子どもも生まれたりと順調でした。それから、ラッコは腹ならになってしまい、再度見ることがなくなってしまったのです」
エラカ・アライアンスの設立者やディレクターはオレゴン沿岸でラッコの再導入の青信号が出るまでにはまだ何年もかかるだろうと推測している。
「まだまだ始まったばかりです」とベイリーは言う。「何が必要かというような議論すらまだ調べられていません。ラッコはそもそもどこから連れてくるのか?どこへ放流するのか。その影響はどうなるか?」
ベイリーは先月、研究者や当局、先住民族の代表や興味を持った市民などとともにニューポートで1日のシンポジウムを開催し、科学的な状況の現状について話した。次のステップは、エラカ・アライアンスが前進するための戦略的な計画を描くことだ。
オレゴン州魚類野生生物局及び米国魚類野生生物庁は一方で、立場を曖昧にしたままだ。
米国魚類野生生物庁のスポークスマンは、ラッコの再導入に関する考えが勢いづいてきた際には多くの公聴会が開かれるだろうと言う。ワシントン州やカリフォルニア州中央部のラッコをモニターしている連邦の生物学者らは、そうした場所の個体群は健全だが自力でオレゴンに定着する様子はないと言う。
「ラッコが自然に来るのを待つよりは、積極的に再導入する方への支持が多いのです」と環境団体オレゴン・ワイルドの野生生物プログラムコーディネーター、ダニエル・モーザーは先月のエラカ・アライアンスのシンポジウムに参加した後述べた。「近いうちにオレゴン州にラッコが戻ってほしければ、積極的な再導入をしてほしいという気持ちです」
ワシントン州の現在ある2,000頭ほどの個体群は、1969年と1970年にアラスカ州アリューシャン列島からオリンピック半島沿岸へ移植された59頭のラッコがもととなっている。ワシントン州のラッコは現在キノー保護区のポイント・グレンビルからフアン・デ・フカ海峡のピラー・ポイントまで広がっている。時折ワシントン州のラッコが1~2頭、オレゴンの沿岸で目撃されることがあるが、こうした迷い込んできたラッコは定着していない。
この秋、ニューポートのオレゴンコースト水族館はラッコ収容施設の拡張と海洋哺乳類リハビリセンター建設のため、ファンドレイジングをはじめた。
どちらの施設も、もし本当にラッコの再導入が行われることになればラッコの役に立つことになる。オレゴンコースト水族館には現在、3頭のラッコがおり、最も人気の展示動物となっている。
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