本日は2018年9月26日付のVoices of Montereyより、"Beware the otters in those waters"をお届けします。Sea Otter Savvyにはらっこちゃんねるが得たラッコに関する情報(道路を渡るラッコなど)やハラスメントに関する情報なども提供して協力させていただいています。
近づきすぎる侵入者に対し、様々な団体が湾のパトロールを行う
2003年、ジェナ・ベントールはカリフォルニア大学サンタクルーズ校の研究者、ジム・エステスのもとでインターンとして働き始めた。ベントールの仕事は絶滅危惧種であるラッコの観察と研究を手伝うことで、彼女曰く「決してそこから離れなかった」。インターンシップを行ったことで、大学院へ進み、「カリフォルニアでラッコ生物学者として雇ってくれるところなら誰でも」働くことになった。
ベントールは1日に8時間以上、週に7日、ラッコを見て過ごすこともあった。そして、ラッコに対する一つの脅威がはっきりした。ラッコにとって居心地のよい湾や河口域、港などは、また人間をも引き寄せるのだ。カヤックがラッコの群れに近づきすぎたため、ラッコが潜ったり逃げたりするということが頻繁に起きている。
「当時の私が行っていたアプローチは、単に怒り狂って陸からカヤックに怒鳴っていただけでした」とベントールは言う。「でも、それはあまり効果がなかったのです」
ベントールは現在、ラッコがいる場所周辺で安全に過ごすためにどのようにしたらよいかを人々に啓蒙している非営利団体、Sea Otter Savvyのプログラムコーディネーターだ。ラッコに起こっていることでベントールが気付いたことは、モントレー湾のような場所で増加する人間と野生生物が出くわすことが日常になっているということだった。人間が野生生物に与える脅威の一つは、害がないように見える。カヤックに乗った人がラッコの群れにちょっと近づきすぎたり、観光客がアシカがカメラのフレームに入るよう一歩前に出てしまったりというようなものだ。しかしこのようなインタラクションは決して無害ではない。こうした行為はディスターバンス(妨害行為)であり、人々が見たいと思っているその動物を危険に晒すほどのストレスを与えるものなのだ。
1972年、アメリカで海洋哺乳類保護法が議会を通過した。これは、アザラシやアシカ、ラッコ、クジラなどの海洋哺乳類に「ハラスメントをしたり、狩猟したり、捕獲したり、殺したり」することを違法としたものだ。
しかし、「ハラスメント」という言葉は幅広い。海洋哺乳類保護法によれば、ハラスメントとは「行動パターンを中断させる」あらゆるものだ。つまり、何かの行為によりアザラシがその行動を変えてしまえば、たとえそれがアザラシが頭を上げてこちらを見るようなことだとしても、違法になるのだ。何かの行為により、アザラシが水に潜ってしまったり、体を揺すって陸から逃げようとしたりした場合、それは違法になるのだ。
こうしたことは極端すぎると思えるかもしれない。結局のところ、もしラッコが週に一度近くに来た人間のせいで行動を変えなければならなくなれば、それはあまり大したことではないかもしれないけれど、こうしたディスターバンスは積みあがっていくのです、とモスランディング海洋研究所のディレクター、ジム・ハービーは言う。
「例えばクマなどのディスターバンスから逃れるために人が90メートル走らなければならないとしたら、まとまったエネルギーを消費してしまったことになります」とハービーは言う。「それが長期で生涯にわたり影響するでしょうか。おそらくそれはないでしょう。でも、それが繰り返し何度も何度も何度も起こってしまうと、明らかに何らかの影響を与えるでしょう」
ベントールは、ある場所ではこのようなことが1日に20回もラッコに起きているのを見たことがあると言う。
「ラッコが生存することに対する基本的な困難は、寒い環境で体を温かく保つことです」とベントールは言う。「ラッコはうまくエネルギーを貯めることができません。エネルギーをとっても、まさに右から左なのです」
アザラシやアシカは皮下脂肪があり、それがエネルギー源にも断熱材にもなるが、ラッコにはそれがない。その代わりラッコは密度の高い毛皮の中に空気の泡を取り込み、それで断熱効果を生み出している。そのためには、5時間も6時間も集中してグルーミングを行わなければならず、それが終わったと思えばエサを獲るために8時間も潜らなければならない。カリフォルニア州魚類野生生物局の上席環境科学者でありラッコ生物学者のマイク・ハリスは、母親ラッコは子どもを育てるために非常に多くのエネルギーを費やすため、子育てが終わった時には母親を死に追いやるのはわけない状態になっていると言う。これは「授乳末期症候群」と呼ばれ、人間による妨害がなくても母親は死んでしまうことがある。
「カリフォルニアでは、ラッコは基本的なエネルギー需要を満たしているだけなのです」とベントールは言う。「そうしたやるべきこと全てに加え、日常的にディスターバンスが起きてしまえば、それによりまたいくらかのエネルギーを使わなければならなくなります。子育てが終わった母親ラッコのようなものにとって、そうしたことが最後の一押しになってしまう可能性もあるのです」
1000のカヤックによる死
ベントールはこれを「カヤック1000艘による死」と呼ぶ。アザラシやアシカに対する影響は分かりづらいが、現実としてある。2015年、エル・ニーニョいよりイワシが激減した際には、アシカは大打撃を受けた。
パシフィック・グローブに住むマージ・ブリガディアは「Sea Otters of Monterey Bay」というFacebookページの運営の手伝いをし、またモントレー湾国立海洋保護区が運営する類似のプログラムBay Netのため地元のアシカの観察を何年も行っている。ブリガディアによると、アシカが飢えていても、人々は遠慮しない。「子どもと手を繋いで」アシカのすぐそばまで近づいていく人を見た。
1日に6時間も人々にアシカから離れるようお願いしていたこともあったという。
アザラシになると、人々は同様に大胆になる。フェンスや「通行禁止」の看板があるにもかかわらず、訪れた人々はそれでも妊娠中のゼニガタアザラシの重要な繁殖地であるホプキンスビーチのフェンスを潜り抜けて行こうとする。
「確実にディタ―バンスは増加しています。あらゆる方角からです」と別のパシフィック・グローブの住人でBay Netのボランティアであり「Sea Otters of Monterey Bay」と「The Harbor Seals of Pacific Grove」のFacebookページの運営者でもあるキム・エイクマンは言う。「ドローンを買う人が増えました。ドローンもディタ―バンスの一つです。自前のカヤックをもって来る人も増えました。これもディタ―バンスです。看板を見ずに、自分だけの世界に生きる人が、街に増えただけなのです」
そのような大胆な違法行為を行う人でなくても、人間がもつ影響の大きさを知ることは観光客には難しいでしょう、とモントレーベイカヤックのプログラム・コーディネーターのショーン・フューリは言う。モントレーベイカヤックの顧客の多くはこうした動物たちを見にきた人々だが、「例えばこちらを見るというような、一見害がなく可愛らしいと思えるようなことでも、動物たちにとってはストレスを与えるものなのです」
ベントールやSea Otter Savvyと協力し、モントレーベイカヤックは野生生物に対する影響を最小限にする3段階の計画を進めている。第一段階は共感を醸成すること。フューリは、カヤックに乗る際は動物の生息地にいるのだという事実を個別にすべての人々に伝えているという。第2段階は、ラッコを混乱させないようにするコツを顧客に伝える。例えば、ラッコの群れにカヤックの先を向けず並行に通り過ぎること、カヤック5つ分離れることなどだ。第3段階は、顧客に対し、誰かが見ていると念押ししている。「共感に対してはあまり反応がないく、こういう法律だと言わなければならない人もいます」とフューリは言う。
こうしたステップはカヤックによるデイタ―バンスを減らすかもしれないが、ベントールの目標はもっと大きい。
モントレーに来る観光客は「興奮していて、熱心で、インスタグラム用の写真やセルフィ―を撮りたくて、そのようなことが全て起こっています」とベントールは言う。「観光客が注意を向けているそうしたすべてのことの底辺には、ラッコや他の野生生物が何をしていて、それに対して彼らがどう反応するかということがあるのです。そうしたパラダイムをどうにか変えたいのです」
ベントールは当局や団体、企業などと協働している。地元のイベントで話したり(「月に一度は人々の前で話すようにしています」)、お互いにコミュニケーションをとることの重要性を強調している。そうした仕事が事態を変えるという兆候も見えるが、そう言うにはまだ早すぎるだろうを強調する。
動物たちの空間を尊重すること、自分の欲求の前に動物にとって必要なことをに思いを寄せることーこうしたことが広がり、自ずと成り立っていくようになることをベントールは望んでいる。最終的には、動物と人間がインタラクションする心配をする必要が全くなくなればいいと思っている。
「それが本当の目標です」とベントールは言う。「非常に大きい目標だと思います。そのためにしなければならないことがたくさんありますが、実現できると思います」
Voices of Monterey
Beware the otters in those waters
September 26, 2018
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