【記事】ラッコを野生のままに | Keeping Sea Otters Wild: Kayakers, Paddlers and Boaters Can Help

本日は2018年7月31日付のU.S. Fish and Wildlife Serviceのウェブサイトから、"Keeping Sea Otters Wild: Kayakers, Paddlers and Boaters Can Help"をお届けします。記事中で触れられている、ラッコがカヤックに乗る動画を私も目にしましたが、同様の理由であえてSNSでシェアしませんでした。

沿岸水域を利用する人は、ラッコが生活し子育てするのに必要なスペースを与えるという重要な役割を担っている

最近、インターネットでカリフォルニアラッコがカリフォルニア中央部でカヤックに飛び乗る動画が話題になっている。ほとんどの人が美しい野生動物を間近に見ることができてどきどきする。またこのような動画は可愛らしく、害などないように見える。しかし、実際そういう人々がラッコに危害を及ぼす可能性があることを知っていただろうか?なぜなら、動画を見て他の人々も同じようなチャンスを得たいと思わせてしまうからだ。ラッコが好きな人々にとっては、わぁ~という気持ちを引き起こす一方で、このように近づきすぎてしまうことにより、ラッコにとっても、人間にとっても、想定外の悲劇的な結果を生むことになってしまう可能性がある。

カリフォルニア沿岸で、ほとんど「独身」のオスからなる群れで交流するラッコたちPhoto by Lilian Carswell/USFWS

ほとんどの時間、ラッコは人間を無視したり避けたりするが、人間の活動が非常に多い場所では、ボートやカヤックに近づいていくこともある。ラッコが毎回ボートやカヤックによじ登ることを許されてしまうと、その行動が強化され、結果的により同様のことが起こるようになってしまう。野性味を失ったラッコはすぐに無神経になり、狂暴になったり危険になったりする可能性がある。ラッコはクズリの仲間で、非常に噛む力が強いのも不思議ではない。ラッコはそのような力で、湿地帯の底から拾ってきた貝や他の無脊椎動物をかみ砕いて開けるのだ。人間に対する自然な恐怖心を失ってしまうと、そのラッコは捕獲されてその自然から取り除かれてしまうこともある。このような結果になるのは悲劇的なことだが、こうしたことは避けられるということが救いだ。

 

すべきこと

休息中のラッコへの邪魔を避けるには、カヤックは少なくとも5つ分(2メートルもしくは60フィート)離れて、ラッコに対して艇の先を向けず平行にして、ゆっくりと確実に動いて通り過ぎなければならない。Photo by Lilian Carswell/USFWS

米国魚類野生生物庁、モントレーベイ水族館、Sea Otter Savvyは、皆さんの安全を確保し、ラッコを野生のままにしておくため、皆さんには下に挙げるポイントを守って欲しい。

 

  • ラッコがいると分かっている場所にいる場合、安全な距離を保つこと。ラッコが気付いたそぶりをしたら、それは近すぎるということなので、直ちに後ろへ下がること。
  • ラッコへの邪魔を避けるため、カヤックやパドルボードや船など余暇で沿岸を利用する人は、少なくともカヤック5つ分(約20メートルもしくは60フィート)離れ、艇の先をラッコに対して直接向けず平行にし、艇をゆっくりあ確実に動かし続けて通り過ぎること。
  • 万が一ラッコが船やカヤックに近づいてきたら、一番安全なのは漕いでラッコから離れることだ。安全な距離を保つだけでなく、ラッコにも距離をとることを分からせ、自分自身海の中で安定性を増すことができる。60パウンド(27kg)のラッコをカヤックに乗せれば、ひっくり返ってしまうこともあるからだ。
  • もし離れようとしてもラッコが辞めずにカヤックに乗ろうとしてきたら、パドルを使いカヤックに乗らないようブロックする。

カリフォルニアラッコがモスランディングの北のジェッティ近くでフェザーボアケルプの中にとどまって休んでいる。人間と同様、ラッコもエサを探したり子育てをしたりするためのエネルギーを蓄えるため、相当の休息が必要だ。Photo by Lilian Carswell, USFWS.

  • 野生のラッコを決して手でなでたり、押したり、掴んだりしないこと。
  • 陸地で犬などのペットを連れている場合、ペットには必ずリードでつなぎ、たとえお互いに遊んでいるように見えたとしても、決してラッコと関わらせないこと。
  • 決してラッコや他の野生生物にエサをやらないこと。エサをもらった動物は狂暴になる可能性がある。
  • カリフォルニアラッコは連邦法でである絶滅に瀕する種の保存に関する法で絶滅危惧種に指定されており、海洋哺乳類保護法で保護されている。同法は海洋哺乳類にハラスメントをしたり、傷つけたり、捕獲したり、殺したりすることを禁じている。ラッコに近づきすぎた結果、ラッコの行動を変えさせてしまうようなことがあれば、法に抵触する可能性がある。
  • 海にいない時は、よきラッコスチュワードとなること。ラッコが人に慣れたような動画や写真は、将来的に野生生物に対し、不適切で危険に関わる行為を促進してしまう可能性がある。

あなたの行動がラッコを守る

カリフォルニアのモスランディングハーバーに設置された看板は、カヤックやボートに乗る人々に対し、キャッチーな詩でカリフォルニアラッコと安全な距離をとるよう勧めている。

先日の記事“Serenity in the slough: Sea otters lure the world to tiny coastal town"(翻訳済:【記事】ラッコ保全と地域経済の共存 | Serenity in the slough)をチェックしていただきたい。ラッコが生活し子育てするのに十分な場所を与えるという意味で、ボートやカヤック、パドルボードに乗る人々などが非常に重要な役割を果たしているという記事だ。

 

かつて絶滅の淵に立たされたこの非常にカリスマ性の高いユニークな動物に対し、人間が引き起こすディスターバンスを扱う、組織的で長期的なアプローチを行っている教育プログラムであるSea Otter Savvyについて学んで欲しい。Sea Otter Savvyの諮問委員会には米国魚類野生生物庁、カリフォルニア魚類野生生物局、モントレーベイ水族館のスタッフも含まれている。完全なガイドラインはこちらを参照のこと。

 

ラッコの回復を楽しもう。安全な距離をとって!

U.S. Fish and Wildlife Service

Keeping Sea Otters Wild: Kayakers, Paddlers and Boaters Can Help

July 31, 2018