【記事】さようなら、マリ | Saying Goodbye to Sea Otter Mari

本日は2018年2月8日付のShedd Aquarium Blogより、"Saying Boodbye to Sea Otter Mari"をお届けします。不本意にも人間に狂わされてしまったマリの人生が、力を尽くした人々によって素晴らしいものになったことを願わずにはいられません。

シェッド水族館ファミリーは、当館の愛すべきアラスカラッコの中の1頭、マリにお別れを告げることになり胸を痛めています。マリは、生殖器系の腫瘍の摘出後の合併症により、2月7日水曜日午後6時ごろ息を引き取りました。

 

2階建てのラッコ水槽の毛色が濃くキラキラしたラッコたちの中で、ブロンドの顔で大きく目立つ体格だった14歳半のマリは簡単に見分けることができました。小さいラッコのエリーが、マリの首に抱き着いているところを見ることができました。

 

「動物たちは、私たちに大きな影響を与えています」とシェッド水族館の館長兼CEOのブリジッド・C.コフリンは言っています。「動物たちは、私たちの心や考え、そして自然との大きな繋がりを感じさせてくれます。シェッド水族館で、私たちは自然を見つめているのです。マリは好奇心と勇気をもって、私たちに視線を返してくれていたのです」

当館のほとんどのラッコと同様、マリもまた保護されたラッコでしたが、意図的に保護されたというわけではありませんでした。マリは2003年の6月中旬に生まれましたが、アラスカ南部の守られた水域であるカチェマック湾でカヤックに乗っていた人々がラッコの赤ちゃんに特有の甲高い声を耳にしました。幼いラッコがケルプの中に浮かんでいるのを親に見捨てられたと思ってしまい、そのカヤック乗りたちはマリを陸に連れていき、野生生物管理当局へ引き渡しました。

 

マリは恐らく何の問題もなかったと考えられます。母親はエサを探しに潜る前に子どもを長いケルプに巻き付けて「駐車」します。子どものラッコはきらきらした濃い茶色の海藻の中でカモフラージュし、流されないですみます。子どもの甲高い声は音声信号のようになり、母親が子どもを見つけることができるのです。子どもをその場から連れていってしまうことは、子どもと母親を永遠に離れ離れにしてしまうことになり、悪意のなかったカヤック乗りの人たちは、マリを決して自然に戻れなくしてしまったのです。(彼らはまた野生生物に関する連邦法を犯しました)

 

マリは自分でエサを獲ったりグルーミングをしたりすることができないため、一時的スワードのにアラスカシーライフセンターでケアを受けることになりました。アラスカシーライフセンターは、アラスカ州で唯一海洋哺乳類の保護に関する認可を受けている施設です。容体が安定すると、アメリカ魚類野生生物局からシェッド水族館にそのラッコに永続的な住まいを提供してほしいとの打診がありました。当館は、素晴らしい施設を有し、またエクソン・バルディーズ号原油流出事故で親を失ったラッコたちに始まり、か弱いラッコの子どもたちに素晴らしいケアを与えてきたたことを評価されたからです。

 

シェッド水族館の海洋哺乳類専門家らがスワードへ赴き、マリのリハビリを手伝い、その後9月5日に当館の管財人からの寄付によりチャーターした飛行機で水族館へ連れて帰りました。

7パウンド(約3.2kg)になっていたマリは、1日に6回魚と乳製品をブレンドした調合ミルクを与えたり、泳ぎやグルーミング、トレーニングなどを見守ったりするため、24時間のケアが必要でした。これはまだ当館に、独自に設計されたリーゲンスタインラッコ・ナースリー(養育室)ができる前のことです。その代わり、ラッコ水槽の裏にウォーターベッドのベビーベッド、フワフワのタオルとヘアドライヤーを備え付けたグルーミング用のテーブル、頑丈なおもちゃなどが備え付けられた養育室が設けられました。ウォーターベッドはラッコの子どもを支え、また水に浮かんでいる感覚や母親の腹の上に乗っている感覚を与えるために使われました。泳ぎの訓練は小さな水槽で行われました。

 

 

生後3か月のマリが到着した時、現在ペンギン・ラッコ・イヌのマネージャーであるラナ・ヴァナガスムは動物ケア専門家の契約職員でした。「マリは私が人手で育てた最初のラッコです」数か月に及ぶ集中ケアの間、ラナはトレーニングやエサやり、遊びのセッションを通じ前向きな相互関係を築き、長期的な信頼をマリと築き上げました。動物ケアスタッフは好きな動物は何かと聞かれた時困ってしまう人が多い中、ラナは自分にとってマリは特別な存在だと認めていました。

 

 小さなマリが膝の上によじ登ってきたのが、ラナにとって良い思い出です。「膝にタオルを載せて膝をたたくと、マリは駆け寄ってきました。赤ちゃんラッコがグルーミングする時は、仰向けになってするのが好きなのです」と体をよじったり、ゆすったりする動作を見せました。「マリはそんなふうにするのが好きだったようで、それはそれはかわいかったです」

ラナは、マリが元気な子どもの頃から、新しい子どものラッコがじゃれついてきたり遊びに混じってくるのに辛抱強く我慢する冷静な大人になるまで、人生の様々な段階へと移っていくのを見た思い出を大切にしています。

 

マリはずっと遊び好きで、特に氷や、冬場に水槽に用意された雪で遊んで楽しんでいました。裏で行われる自由形式のエンリッチメントセッション(プレイタイム)では、氷の入ったバケツやたらいによじ登ったり、手で氷の中をひっかきまわしておやつを探して食べたりするチャンスを逃すことはありませんでした。

 

大人になってからは、マリは2009年に設置された1250ガロン(約4700リットル)の水槽で一人の時間を楽しんでいるようでした。水槽の窓のところで顔を出したり隠したりして、展示水槽と予備水槽のエリアの間のホールを行き来する水族館のスタッフを元気に眺めていました。マリはまた、「ケルプ床」(洗車用の布を長細く切ったもので、水に浮かべてあったり陸に置いてあったりするもの)の中で多くの時間を過ごしていました。石の上にあるケルプもどきの中に寝そべったり、独り占めして他のラッコたちと分け合おうとしないこともありました。

マリのその並外れたキャラクターはこれからもずっと心にとどまり、シェッド水族館のスタッフやボランティアみんなからその死を悼まれることでしょう。私たちを支えてくれている4頭のラッコたち、ヤク、キアナ、ルナ、そしてエリーはみな元気に過ごしています。私たちはこうした保護ラッコそれぞれにドアを開け、心を開き、この一番小さな海洋哺乳動物について学びをより深めています。マリが発見されたカチェマック湾は、アラスカで安定した数を保つ2つの個体群の中の一つです。3つ目の個体群は、絶滅に瀕する種の保存に関する法律で準絶滅危惧種に指定されています。また、全ての個体群は1972年の海洋哺乳類保護法により保護されています。

 

 シェッド水族館は引き続きラッコ保全に対する責任を果たしていきます。当館は2003年にマリが最初に人的ケアを受けたアラスカシーライフセンターとパートナーであり、昨年当館の動物対応チームはオディアックとカシロフという2頭の座礁したラッコの子どものリハビリの手伝いをするため、シーライフセンターで多くの時間を過ごしました。シェッドは、あらゆる年齢のラッコに対しても豊かな経験と専門知識を持つ、北米でのリーダーの中にランクされています。こうした実績の一部もマリのおかげなのです。

「よく新しい遊びやエンリッチメントに最初に挑戦するのはマリでした。そうした様子を見るのは特に楽しかったですね」とアニマルエグゼクティブプレジデントのティム・バインダーは言います。「マリがいなくなってしまって、非常に寂しいです。それでも、ここで過ごしたマリの豊かで元気な人生、そしてマリの物語は、私たちとともにマリの長い人生の旅をシェアしてくださる何百万人もの来場者のみなさんに海の動物の世界に対する共感や興味、そして保全への関心をかきたててくれるでしょう」

Shedd Aquarium Blog

Saying Boodbye to Sea Otter Mari

FEBRUARY 08, 2018