【記事】絶滅の淵からカワウソとラッコを救った保全活動 | Conservation success for otters on the brink

少し更新が遅れていて申し訳ありません。本日は2017年6月20日付のBBC Earthから、"Conservation success for otters on the brink"をお届けします。ラッコとスマトラカワウソ、カワウソ亜科の2種類の動物の保全活動に関する記事です。どちらも絶滅したと思われるところから、復活を遂げてきました。

愛らしく、遊び好きで、好奇心が強く、執着心が強く、元気で、多芸で魅力的、そして疑う余地がないほどかわいい。これらはカワウソ類を言い表している言葉のほんの一握りだ。幸運にもシャイなこの半水生動物を野生で見るtことができたら、その理由は一目瞭然だろう。

 

しかし、そうした愛すべき特徴があるにもかかわらず、世界のカワウソ類の個体数は足止め状態だ。

 

なぜなら、カワウソ類はこれまで大切にされてこなかったからだ。ラッコは温かく高級な毛皮目的で乱獲され絶滅の淵に追いやられた。ごく最近では、ユーラシアカワウソなどの多くのカワウソ類は魚の個体数を減らし、人間の競争相手になるという理由で罠で捕らえられてきた。楽しみのためにだけ殺されることもあった。

カワウソは非常に社交的で遊び好きな動物だ(credit: Charlie Hamilton James)
カワウソは非常に社交的で遊び好きな動物だ(credit: Charlie Hamilton James)

故意にカワウソを狩ったり罠で捕らえたり迫害したりして苦しめているというだけではない。カワウソは生息地の減少やエサ不足に対応せねばならず、化学物質や汚染物質、(ある種のカワウソ類には)油の流出などに対して脆弱だ。思いがけず漁網にかかってしまったり、寄生虫や伝染病も命にかかわる原因となる。

 

こうしたことはどんな動物にとっても大問題であり、難題なのだ。

 

このように多難でありながらもカワウソたちはスキルと行動力で陸や水の中での生活に驚くほど適応している。

カワウソは魚をとるエキスパートだ(credit: Charlie Hamilton James)
カワウソは魚をとるエキスパートだ(credit: Charlie Hamilton James)

オセアニアと南極大陸以外のすべての大陸に見られるカワウソ類は13種あるが絶滅してしまったものはまだ一つもない。

 

これはつまり、イタチ科の動物たちが強い性質を持つということをおおいに表しているが、同時にその保全のために多くの組織や個人が努力してきたということも示している。そのために用いられているアプローチや技術は世界中で場所により異なっているが、最も重要なのはその種が長期的に生き残っていくことだ。

 

カリフォルニアのラッコ

しかし、信じられないほど可愛らしいラッコ(Enhydra lutris)にとっては間一髪だった。

 

1700年代から1800年代にかけての毛が交易時代、世界のラッコの個体数は30万頭から僅か2,000頭ほどへと激減した、とモントレーベイ水族館保全調査オペレーションマネージャーのアンドリュー・ジョンソンは説明する。

 

ラッコは毛皮目的でずっと捕獲されてきた。1平方インチ当たり100万本の毛が生えているため、世界で最も高価な毛皮とされた。

 

カリフォルニア沿岸のラッコ(Enhydra lutris nereis)対する迫害は特にひどく、1900年代初頭における個体数は(15,000頭から)50頭へと激減し、もう少しで一掃されてしまうところだった。

ラッコは様々なスキルを持ち、適応能力が高い(credit: Inaki Relanzon / Naturepl.com)
ラッコは様々なスキルを持ち、適応能力が高い(credit: Inaki Relanzon / Naturepl.com)

ありがたいことにラッコは現在保護されており、その数は12万5,000頭ほどへと回復した。しかし、今でも絶滅危惧種のままだ。

 

ラッコの個体数が健全であれば、ケルプの森や河口域、沿岸や海の生態系の健全性にとってプラスの影響を及ぼす。ジョンソンはその理由をこう説明する。「ラッコがいなければ、こうしたシステムはバランスを失って崩壊し、多様性や弾力性を失ってしまうのです」

 

カリフォルニアのモントレーベイ水族館は1984年の開館以来ラッコを扱っており、最先端の施設を利用しと生命活動を助ける追跡用の無線装置を埋め込むことで、ラッコの保護・放流プログラムを成功させている。

モントレーベイ水族館でケアを受けるラッコの赤ちゃん(credit: Minden Pictures / Alamy Stock Photo)
モントレーベイ水族館でケアを受けるラッコの赤ちゃん(credit: Minden Pictures / Alamy Stock Photo)

座礁したラッコを助けるため、モントレーベイ水族館には集中治療室と、最多で一度に10頭まで入れられるろ過した海水を満たした水槽が複数ある。野生に返してからもその進捗をモニターするため、無線装置を利用する。

 

「自然に返したあともそのラッコを追跡しその行動をモニターすることができるよう、体内に無線を埋め込んでいます」とジョンソンは言う。

 

バッテリーは少なくとも2年もつので、若いラッコについてはたいてい成獣になり繁殖活動を行うまで追跡することができる。これにより、ラッコが放流された場所の生態系に与える目覚ましい影響を記録することができるのだ。

 

立法やモントレーベイ水族館のような献身的な団体やチャリティーによる保全努力のおかげで、カリフォルニアラッラッコの個体数は3,000頭まで増加したという喜ばしいニュースもある。

 

「カリスマ性があり必要不可欠なラッコは、こうした保護がなければ生き延びることができませんでした。

 

ケルプの森や河口域の生息地に良い影響を与えてもらうため、ラッコには生き延びてもらわなければならないのです。ラッコたちはそうした地域をより健全にし、生態学的により多様性のある場所へと変えていくからです」とジョンソンは言う。

 

カンボジアのスマトラカワウソ

保全活動がみな資金に恵まれているわけではないが、それは資金の少ない保全活動が成功しづらいということを意味しているわけではない。

 

スマトラカワウソ(Lutra sumatrana) は、カワウソ類の中でも最も希少で絶滅に瀕しているものの一つだ。1990年代、スマトラカワウソは生息域の喪失や密猟、地元でのカワウソ肉の消費やエサ資源の減少により南アジアの生息域で絶滅したと考えられていた。

スマトラカワウソはユーラシアカワウソと比べて鼻の穴の周りの毛が特徴的(credit: Conservation International)
スマトラカワウソはユーラシアカワウソと比べて鼻の穴の周りの毛が特徴的(credit: Conservation International)

しかし、2006年から2013年の間可能な生息域で行われた調査で、カンボジアで僅かにスマトラカワウソが生息していることが確認された。生息は4つの地域で確認され、トンレサップ湖を囲む水の豊かな森周辺の個体数が最も多かった。

 

現在、スマトラカワウソは「再発見」され、個体数が増えるよう保護が必要だ。そこでコンサベーション・インターナショナルのような組織が生息域と種の保全のため、尽力している。

 

コンサベーション・インターナショナルでその調査を率いた研究者ソクリス・ヘンが説明するように、種を守る為に多くの法律や規則があったとしても、現場でそれを強制させる力が弱く限定されており、野生生物やその生態系に対する地元の人々の認識が非常に限定されている。

ハンターの家で発見されたスマトラカワウソ(credit: Conservation International)
ハンターの家で発見されたスマトラカワウソ(credit: Conservation International)

カンボジアの田舎のような貧しい地域は問題で、地元のコミュニティに対し持続可能でない方法で自然の資源を使うよう押し付けることが多い。

 

これに対し、コンサベーション・インターナショナルはトンルサップ湖で行動を起こした。彼らは必要不可欠な生息地の再構築、地元のコミュニティや学校への啓蒙活動、スマトラカワウソをよりよく保護できるよう、法や規則を提案するというアプローチをとった。また、保全ゾーンを作り、政府やコミュニティのレンジャーと協働してこれらを守り、同時に地元のコミュニティの漁師らに対し、別の生計を立てる方法を開発する手助けも行った。

 

この活動のカギとなっているのは、カワウソの調査に地元の人々と触接関わり、地元からより強い協力を得られるよう啓蒙活動を担ってくれる「カワウソ大使」となってくれる人々を味方にすることだ。

 
ヘンはこうしたことは大切だという。「地元の人々を教育することで、コミュニティの他の人々とその知識を分かち合うことができるからです」

スマトラカワウソにとって水の豊かな森は重要な生息地だ。(credit: Conservation International)
スマトラカワウソにとって水の豊かな森は重要な生息地だ。(credit: Conservation International)

ここで保全活動を成功させるうえで大切なのは、地元のコミュニティが確実に自分たちの資源を持続可能な方法で利用し管理することができるように、そして経済的にもより良くなれるようにすることだとヘンは言う。例えば、コミュニティの漁師たちの中には、カワウソの保護により熱心な人々もいて、パトロールを行い不法な活動を止めさせ、地元の地域におけるカワウソの保全について教育を行っている。

 

トンレサップ湖では、こうした試みにより当局や研究者らが記録している罠の数や剥がれた皮の数が減っており、この兆候は殺されるカワウソの数が減ってきていることを示している。一方で、現在進行している生息地の再構築と捕獲数の減少、啓蒙活動の拡大が合わさって、スマトラカワウソにとって明るい未来を約束する手助けとなっている。

 

モントレー湾で使用されている技術とは全く異なるかもしれないが、この保全方法はカンボジアのある場所においてはモントレー湾同様成功を収めてきている。

 

国と、また一度は絶滅したと考えられていた種にとって良い結果といえよう。