本日は2017年5月31日付のShedd Aquarium Blogより、"Shedd Responders Help Alaska Sea Otter Pup"をお届けします。より良いケアを与えるという共通の目的のもと、施設どうしがお互いの知識と経験を分かち合い、学びあうという姿勢は素晴らしいですね。
動物たちに緊急の需要があれば、シェッド水族館は対応します。当館の動物対応チームが最近スワードのアラスカシーライフセンターへ赴き保護されたラッコの赤ちゃんの24時間体制のケアに貢献しているのはそのためです。
アラスカシーライフセンターはプリンスウィリアム湾から130マイル(約208km)離れたコルドバで保護された生後3週間のアラスカラッコの受入れ後、シェッド水族館に連絡を取りました。アラスカシーライフセンターはアメリカ動物園水族館協会の認可会員で、アラスカ州で唯一、野生の海洋哺乳類の対応とリハビリテーションを許可されている団体です。
5パウンド足らずで自分の面倒をみられないオスのラッコの子どもは、保護動物を管轄するアメリカ魚類野生生物局により、野生に返すことができないと判定されました。
ラッコは何もできない状態で生まれ、北太平洋で生きていくために必要な本能をほとんど持ち合わせていません。子どもは母親と数か月から9か月ほど過ごし、グルーミングや泳ぎ、潜水、エサの取り方など必要なスキルを学ぶのです。ラッコの子どもを保護するとなった時、介護者である人間には大変な仕事が降りかかります。1989年のエクソン・バルディーズ原油流出事故以来親に見放されたり、親とはぐれてしまったラッコの子どものリハビリを行い、育ててきたシェッド水族館は、そうしたラッコが緊急で必要としている24時間体制のケアを行い、「ラッコの生活スキル講座101」を始めるための臨時の手助けや専門性をセンターに提供することができるのです。
シェッド水族館のラッコ保護・リハビリの仕事へのサポートをお願いします。
シェッド水族館の海洋哺乳類トレーナーのグレチェン・フリマスとアンドレア・オークはそれぞれスワードで数週間センターの獣医師キャリー・ゲツ博士と仕事をします。シェッド水族館の動物対応チームをセンターに受け入れることは、人的サポートに加え「最良のケアを施すための知識を私たちのパートナーと交換することができる」とゲツは言います。
「私たちのケアのもと、この赤ちゃんラッコは元気になる様々な兆候を見せています」とゲツは言います。保護されてから2か月、このラッコの赤ちゃんは13パウンドになり、自分でグルーミングを行うようになり、固形のエサを食べたり、歯が生えたり、歯ごたえのある冷たい氷や犬用のチュートイ(噛みついて遊ぶおもちゃ)がお気に入りになったりしています。
【動画の翻訳】
<シェッド水族館動物ケアスペシャリスト アンドレア・オーク>私はアンドレア、シカゴのシェッド水族館の海洋哺乳類トレーナーです。スワードのアラスカシーライフセンターからシェッド水族館に依頼がありました。ラッコを保護したのですがヘルプが必要だったのです。そのラッコの赤ちゃんはアラスカのコルドバで発見されました。
<アラスカシーライフセンター獣医キャリー・ゲツ博士>当時、その近くに母親がいた形跡が見当たらなかったため、その赤ちゃんを連れ帰りました。
<アンドレア>ラッコの赤ちゃんがある年齢以下で保護された場合、自動的に野生へは返せないことになります。野生で生き延びていくためのスキルはすべて母親から教えてもらわなければならないからです。
<ゲツ博士>母親から世話を受けるだけでなく、生きていくためのスキルを習います。例えばグルーミングです。毛皮をベストな状態にしておく方法を学びます。グルーミングは単に毛をとかしているだけではなく、毛の間にたくさんの空気を吹き込んでいるのです。また毛をこすり合わせることで、体のそばにある空気を閉じ込めるのです。ラッコはそのようにして体温を保持するからです。
<アンドレア>私たちはラッコのグルーミングをしてあげなければなりません。自分でグルーミングをし始めたようですが、まだ自分の毛を完全にグルーミングすることができません。ですから私たちは毛がちゃんと広がっているようにし、乾いてよい状態になるようにしています。3月18日に受け入れた時、このラッコはわずか5パウンドでしたが、今は13パウンドになっています。ラッコは毎日体重の4分の1を食べなければなりません。子どもは成長期なのでさらに多く食べます。調合ミルクを4時間ごとにのみます。ですから数時間おきに食べることになります。このラッコは固形のエサも食べています。新しいエサを食べさせ、必要な栄養をとれるようにしています。私たちは24時間体制のケアを提供しており、あと数か月は続きます。子どものラッコは非常に好奇心旺盛で、何でも探検します。これは素晴らしいことで、望ましい姿ですが、安全であることに気を付けています。このラッコは水と陸に自由に行き来できることがわかっており、水の中にいるかデッキに上がるか自分で決められるようになっていますが、これは非常に大切なことです。赤ちゃんラッコの時の浮きやすい体毛が生え変わっており、今は潜る練習ができるようになっています。水に自由にアクセスできるようになってから、水底にあるおもちゃを取れるようになるまで3日かかりました。これはすごいことです。今は、もう少し長く水中で息を止め、より長い時間を過ごせるようになるのを待っているところです。
<ゲツ博士>ここにシェッド水族館のスタッフを迎え入れることの利点は、本土の48州の施設と関わりを持てることです。現在はこのラッコは24時間体制のケアを必要としていて、人的サポートという意味では明らかに助けになっており、他の施設で働く同僚と関わる機会を与えてくれることは、知識を与え合うことだと思います。
<アンドレア>アラスカシーライフセンターのスタッフは非常に友好的で、素晴らしい人たちです。野生に返すことができない動物の手助けをさせてもらえることは素晴らしい機会であり、参加できたことをうれしく思います。 |
このラッコはアラスカシーライフセンターの"I. Sea. U"(集中治療室をもじったもの)必要なあらゆるケアを受けており、来場者はそのリハビリの様子を見ることができます。このラッコの子どもは3月初め以降、ここで受け入れた2頭目の海洋哺乳類となります。
「私たちの対応チームは、このシーズン、座礁の傾向が続いて一年を通じた問題になるかどうかを注意深く見極めています」とゲツは言います。「2015年以前のシーズンはこうしたことが主な問題になっていました」
動物対応チームへの支援を表明するため、ラッコの里親になりませんか?
アラスカラッコはアリューシャン列島、アラスカ南部、ブリティッシュコロンビア州、ワシントン州で見られます。アラスカ州の海にいる3つの個体群のうち、2つは安定しているか、もしくは増加しています。しかし、クック湾からアリューシャン列島にかけての個体群はここ20年間減少しています。
ラッコは全体としてIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅危惧種(絶滅危惧IB類)に挙げられていますが、アラスカの個体群は絶滅危惧II類で危険性が少ない部類に指定されています。ラッコはすべて、食物網を混乱させる乱獲や、原油流出、病気、捕食などの脅威に直面しています。
シェッド水族館は3頭のアラスカラッコの家となっており、うち2頭は保護されたラッコで、そのほか2頭の保護されたカリフォルニアラッコがいます。
シェッド水族館の動物対応チームはDawn Dish Soap(訳者注:食器用洗剤のブランド)から支援を受けています。
【参考】Dawnの食器用洗剤は、油で汚染された野生生物の洗浄に使われています。エクソン・バルディーズ原油流出事故でラッコが汚染された際も、この洗剤で洗浄が行われました。Dawnは売り上げの一部を野生生物の保護に寄付しているそうです。
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