【記事】水族館の許容範囲を超えたアラスカのラッコの座礁 | Alaska has more orphaned otters than the world's zoos have room for

本日は2017年5月8日付のAlaska Dispatch Newsから、"

Alaska has more orphaned otters than the world's zoos have room for"をお届けします。
アメリカが要求するラッコの飼育基準を満たすのは、費用的にも設備的にもなかなか難しいようです。

スワードのアラスカシーライフセンターでケアをうけるオスの幼獣 2017年5月4日(Bob Hallinen / Alaska Dispatch News)
スワードのアラスカシーライフセンターでケアをうけるオスの幼獣 2017年5月4日(Bob Hallinen / Alaska Dispatch News)

スワードー2年にわたるアラスカのラッコの大量死の後、世界の水族館はもう親を失ったラッコの受け入れ先がない。多くのラッコの赤ちゃんが安楽死させられるか、そのまま放置され死んでいる。

 

アラスカシーライフセンターには生後2か月のラッコがおり、動物福祉の必要条件を満たせば、ポルトガルのリスボンの水族館へ行くことになる。

 

ポルトガルの水族館は、スワードで24時間体制のケアを施してもらうため毎月2万ドル(約220万円)の費用を負担している。成獣であっても、飼育は難しく費用がかかる。毎日レストランで提供できるほどの品質の海産物を20パウンド(約9㎏)食べるからだ。

 

[アラスカ沿岸で尋常でない数のラッコが死んでいるが、原因は不明]

(訳者注:翻訳済み記事【記事】海のみなしごたち | Orphans of the oceanへのリンク)

 

もう1頭ポルトガルへ行くこともできるが、その後は世界で空きがでるまでにはずいぶん時間がかかるかもしれないとロングは言う。生後6か月より若くして保護されたラッコは、人間によって育てられた後は野生に返すことができないのだ。

 

最近アラスカ湾での生物たちに問題が(鳥の大量死、毒性藻類、ヒトデが溶解する奇病、尋常でない海水温の上昇)持ち上がる以前、シーライフセンターが受け入れるラッコは年に1頭ほどだった。しかし過去1年半で15頭のラッコの子どもが見つかっている。

 

ストレプトコッカス感染は恐らく海水の温暖化により増大しており、ラッコの死の急増を引き起こし、これがラッコの子どもが親を失う原因になっている。確かなことはわかっていない。ラッコはカチェマック湾に多く生息しており、ほとんどの死体はここで見つかっている。

ボランティアのデブ・マグルダーと飼育マネージャーのリサ・ハートマンが細かくした貝とラッコの母乳に似せた人工ミルクをシーライフセンターでケアを受けるオスの幼獣に与えている。(Bob Hallinen / Alaska Dispatch News)
ボランティアのデブ・マグルダーと飼育マネージャーのリサ・ハートマンが細かくした貝とラッコの母乳に似せた人工ミルクをシーライフセンターでケアを受けるオスの幼獣に与えている。(Bob Hallinen / Alaska Dispatch News)

発見されたラッコの子どもの半数はシーライフセンターへ移送されるとロングは言う。引き受けることができないラッコの子どもはそのまま浜に置き去りにするか、地元の獣医によりセンターで安楽死となります、とアメリカ魚類野生生物局の生物学者ジョエル・ガーリッチ=ミラーは言う。

 

(私はアラスカパブリックメディアのKBBIのシャーラ・ファーザンの報告でラッコの子どもが急増していることを初めて知った)

(※訳者注:【記事】親を失ったラッコ、選択肢が僅かに | Options Dwindle For Orphan Sea Ottersで翻訳済み)

 

シーライフセンターの座礁ホットラインに電話をせずに座礁したラッコの子どもを拾った場合、たいてい殺さなければならなくなるとガーリッチミラーは言う。いつでも、まずは電話しなければならない。

 

あるケースでは、ラッコの子どもを見つけた人がそのまま放っておけず、自分で世話をしようとした(取り締まりはされていないが海洋哺乳類保護法違反)、とロングは言う。その赤ちゃんは1週間後には飢え死にしたという。

 

まだ自然ままに任せたほうがましかもしれない。

 

「ワシが舞い降りてくるのを見ると、これがアラスカなのだと思う人もいます。そんなことは恐ろしいと思う人もいるのです」とロングは言う。

アラスカシーライフセンターの飼育ディレクター、ブレット・ロング(Bob Hallinen / Alaska Dispatch News)
アラスカシーライフセンターの飼育ディレクター、ブレット・ロング(Bob Hallinen / Alaska Dispatch News)

赤ちゃんラッコは世界中でもっともかわいい動物だ。シーライフセンターで赤ちゃんが哺乳瓶からミルクをぐびぐび飲んでいる様子を見て、そう確信した。ラッコはふわふわで、遊び好きで、容易に人間を思い起こさせる。

 

ラッコの内臓ですら、人間のものに似ている。先住民のチュガッチ族は、ラッコは人間が潮に飲まれてラッコが創られたため、類似点が生じるのだと信じている。チュガッチ族の人々は浜で死んだラッコを見つけると、人間の死体を見つけた時と同様に扱っていた。

 

ラッコは仰向けになって波に浮かび海産物を食べる。人間がカウチポテトするのと同じだ。赤ちゃんは可愛らしく母親の胸の上に乗っている。天気が荒れている時は並んで浮かび、はぐれないように手をつなぐ。

 

しかしラッコが人間の子どもと似ているとはいっても、ラッコは食用旺盛な捕食者であり、獰猛な野生動物だ。オスの成獣は70パウンド(約31.5kg)を超えることもよくあり、歯は鋭く、強い顎と筋肉が密集した体を持つ。

 

ラッコのイメージと現実のラッコの矛盾しているのは、人間が全能であると信じているようなものだ。

エクソン・バルディーズ号原油流出事件の犠牲となった2頭のラッコたちがカチェマック湾のリハビリ施設で回復に向かっている。1989年7月。(Jim Lavrakas / ADN archive 1989)
エクソン・バルディーズ号原油流出事件の犠牲となった2頭のラッコたちがカチェマック湾のリハビリ施設で回復に向かっている。1989年7月。(Jim Lavrakas / ADN archive 1989)

私がこうした教訓を得たのは、エクソン・バルディーズ号原油流出事件の際、レポーターとして汚染されたラッコたちが捕獲され、バルディーズの体育館に作られたリハビリセンターに収容されるのを怒りをもって見ていた時だった。ボランティアたちがラッコのために力を尽くし、エクソン社はラッコを治療するためにそれぞれ9万ドル以上を支払った。

 

しかし、ケア自体は拷問のようだった。追跡調査では、半数はリリースされた後間もなく死んでしまった。捕獲されたラッコたちの中には病気になり、それが健康な野生のラッコたちに感染し、多くが死んだ可能性がある。(今日、シーライフセンターはこの問題に関しては非常に注意を払っている)

 

政府は原油流出事故のラッコの保護について都合が悪い情報をもたらそうとした科学者を口止めした。アメリカ魚類野生生物局は生物学者チャールズ・モネットの調査を中止し、それ以降の業務から彼を排斥した。これは私が自著「Fate of Nature(自然の節理)」に書いた通りだ。

 

空きがある水族館がほとんどなかったために、油に汚染されたラッコを自然に返す以外の選択肢は救うこともできずに安楽死させるしかないと認めることしかなかった。

 

しかし、そうしたイメージは石油産業を傷つけた。自然を修復できないと認めることが選択肢にないのだから、ラッコがその代償を払うしかなかった。

 

プリンス・ウィリアム湾のラッコたちは長く残った汚染物質のため、2014年、つまり自己から25年後になるまで事故から回復することがなかったとアメリカ地質調査所が報告している。

2011年7月、カチェマック湾ホーマー沖で水面に浮かぶラッコたち(Erik Hill / ADN archive 2011)
2011年7月、カチェマック湾ホーマー沖で水面に浮かぶラッコたち(Erik Hill / ADN archive 2011)

私はすべての動物保護に対して反対しているわけではない。アラスカシーライフセンターは素晴らしい仕事をし、起こりうる原油流出事故の歳の専門的な救護活動に備えており、絶滅に瀕する動物たちに影響があるにせよそうしたことは価値のあることだ。

 

10年前、私と家族は、カチェマック湾にあるキャビンの近くで幼いゼニガタアザラシを保護した。その前にシーライフセンターに連絡し、支持に従い、その赤ちゃんが本当に親とはぐれたことを確認するため24時間監視した。

 

アザラシはリリース後通常は元気に生きていくが、実際あまりその種にとって良いことではない。個体数は十分にあり、幼い動物が死んでいくのも、ごく普通に自然の一部なのだ。しかしそのアザラシは私たちにとって良かったし、センターでそのアザラシがミルクをもらい、リリースされるのを見た人たちにとってもよかった。

 

水族館は自然と繋がっているという感覚を作り出してくれる。それは価値のあることだ。時にそれが、幻想に基づくものであるとしても。

 

ロングは2年前にシーライフセンターがデンマークとフランスに送り出した6頭のラッコたちはその後120万人に観覧されていると話した。そうした人々はラッコの保全や気候変動などの教育を受けることになる。

 

アラスカ湾で起こりつつある恐ろしい変化という生物学の謎を私たちは理解していない。しかし私たちは人間に似た可愛らしいラッコをケアすることで、ラッコたちは私たち人間がこの星でより良い住人になれるよう導いてくれるだろう。