本日は2月3日付けのアラスカ州キーナイ半島をベースとするラジオ局KBBIの報道から、"Options Dwindle For Orphan Sea Otters" をお届けします。アラスカシーライフセンターでは人がラッコを育てるため、そうしたラッコは野生に帰すことができず、引取先の施設を探すしかないのですが、感染症のためラッコの大量死が続くアラスカでは、親を失った子供のリハビリや引受先を探すことが大きな負担になっています。ラッコの飼育には特別な許可が必要なため、受け入れ可能な施設は北米でも限られているからです。そのため保護したくてもできないという悲しい状況があります。日本の施設は繁殖を目指すのではなく、こうした行き場のないラッコたちに永住の地を与えるという方針に転換できないものなのでしょうか。
アラスカ沿岸部ではバクテリアの感染による記録的なラッコの大量死が起こっている。その間、研究者らは過去数年、親を失った赤ちゃんラッコの急増を経験している。
北アメリカでは、保護された赤ちゃんラッコが生きられる場所はほぼ満室状態で、ボランティアも厳しい状況に追い込まれている。
最近までは親を失った赤ちゃんラッコが海岸で発見されると、ボランティアが安全な場所に保護しリハビリを行っていた。
スワードにあるアラスカシーライフセンターは、親を失った赤ちゃんラッコを引き受けるアラスカで唯一の場所だ。
動物管理ディレクターのブレット・ロングがラッコの赤ちゃんのケアを担当している。夢のような仕事に思えるが、騙されてはいけない。これは非常に大変な仕事なのだ。
「子どもが泣き叫んでいるようなものです。次はあなたが面倒を見る番、という具合です」とロングは言う。
アラスカシーライフセンターにいる4頭の赤ちゃんラッコはすべて親を失ったラッコだ。過去数年間、ストレプトコッカス菌がアラスカのラッコを死に至らしめている。
2002年以降、アラスカ州全体で推定328頭のラッコが感染のため死んでいる。そのためケアをしなければならない赤ちゃんラッコの数も増えるということだ。
ロングは24時間体制でラッコの赤ちゃんをケアするチームのコーディネートを行っている。ラッコは代謝が早いため、毎日海産物を体重の25%ほど食べなければならない。
重い鉄の扉を開け、ロングはワンルームのアパートほどの冷凍庫を見せた。
「ここにはキュウリウオ(ワカサギのような魚)、イカ、ニシン、ポロック(白身魚)、シシャモ、ムラサキイガイがあります」ロングは棚に並んだダンボール箱を指差して言う。
時間がかかるのは餌やりだけではない。子どものラッコの多くは幼く自分でグルーミングするすべを知らない。そのため、スタッフが代わりに行わなければならない。ドライヤーやタオル、櫛を使い、体毛をきれいにし空気を入れふわふわにする。
ロングにとってこのような過酷な仕事は慣れている。
「私には3ヶ月早く生まれてしまった甥が2人いましたが、その子達の人生の最初の3ヶ月は新生児集中治療室の中でした。ラッコを育てるのはそのような感じです。美容室と新生児集中治療室が混ざったようなものですね」とロングは言う。
ラッコの子どもが成長するにつれ、トレーナーたちは個々のラッコが教育施設で生きていくための準備を手伝うことになる。野外の水槽では、トレーナーのジュリアナ・キムがトンギットに仰向けに回る方法や魚のもらい方を教えている。このラッコの子どもは昨年の春コルドバの駐車場で発見されシーライフセンターへやってきた。
シーライフセンターではラッコの子どもたちを永久に飼育することができない。最終的にはそのラッコたちはアメリカ内外の教育施設や水族館へ移ることになる。
しかし、親のない子どものラッコたちにとって選択肢はどんどん少なくなっている。ラッコの飼育を引き受けることができるアメリカの動物福祉法で定められた厳しい条件を満たす施設が限られているからだ。
アメリカ動物園水族館協会によると、北米で認可を得ている施設はわずか14施設しかない。
デビー・トビンはホーマーのキーナイ・ペニンスラカレッジのカチェマック校の生物学教授だ。トビンは海洋哺乳類座礁ネットワークでボランティアも行っている。
「ラッコを飼育するには、きちんとした水族館や施設でなければなりません。すでにそのような設備が整っていない場合、ラッコの飼育は非常に費用がかかり、難しい仕事になります」とトビンは言う。「アメリカの施設の多くは基本的にいっぱいです」
つまりそれは、リハビリ施設はもはや赤ちゃんラッコたちの受け入れができなくなることを意味する。シーライフセンターの4頭のラッコたちは新しい住まいへ移っていったが、その施設ではこれ以上ラッコを受け入れることができない。
トビンのようなボランティアが親を失った赤ちゃんラッコを見つけたとしても、そのまま放置せざるを得ないのだ。
「赤ちゃんラッコを浜に戻さざるをえませんでした。次の日くると、赤ちゃんラッコは死んでいるか、食い荒らされていました」とトビンは言う。「海へ流されてしまえば、どうなったか知るよしもありません。ほとんどは次の日見に行くと浜で死んでしまっています」
赤ちゃんラッコを置き去りにしなければならないのは、トビンにとって辛い経験だ。
「浜に赤ちゃんラッコを置いていかなければならないのは、本当に本当に辛いことです」とトビンは言う。
一方で、ラッコを飼育する許可を申請中の団体もいくつかある。しかし、現在のようなペースで成獣の大量死が続けば、需要を満たすだけの施設はどれだけあっても十分ではない可能性もある。
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paradoxobaraq (土曜日, 04 3月 2017 01:16)
日本国内でラッコを見る機会が少なくなり、その理由の一つに、ワシントン条約で輸出入の規制があるとどこかの記事でみました。
生息地のアメリカで親を失った子ラッコの現状をみると何とかできないものかなと思う反面、ラッコだけを特別視できないという複雑な思いで拝見しました。
人間でも動物でも生きていくことは本当に大変なことなんですよね。
生きていることに感謝しなくては。