【記事】ラッコのセルカが仲間入り | Welcome Selka, our Newest Resident Sea Otter

本日はMonterey Bay Aquarium Shoreline 2017年春号のオンライン版特別記事、"Welcome Selka, our Newest Resident Sea Otter"をお届けします。
セルカは波乱万丈の人生を経てモントレーベイ水族館に新しく加わりました。そのセルカと向き合っているトレーナーの方へのインタビューです。

Photo:Monterey Bay Aquarium
Photo:Monterey Bay Aquarium

展示水槽に新しく加わった新入りラッコは、サメにかまれて生き延びたカリフォルニアラッコの保護個体。これまでラッコを知るための重要な研究に貢献してきた。

セルカは仲間のラッコや人間のトレーナーたちとの忙しい日々によく順応しており、新しい代理母ラッコになる準備中だ。2012年、生後1週間で座礁していたセルカをラッコ保護プログラムのスタッフが保護した。2頭の展示水槽のラッコ(最初はメイ、それからローザ)が裏でセルカを育て、私たちはついにセルカを野生に返すことができた。

 

それから間もなく、私たちはセルカを水族館へ連れ帰らなければならなくなってしまった。サメの噛みつきによるひどい怪我で座礁していたからだ。回復した後、セルカは再び野生に返された。その数か月後、私たちは再びセルカを連れ帰ることになった。健康上問題があり、また人間に何度も接触してしまったからだ。

 

この絶滅危惧種を管理しているアメリカ魚類野生生物局は、セルカを「野生に返すことができない」と判定した。そのため、私たちは2014年、セルカをカリフォルニア大学サンタクルーズ校ロングマリン研究所へ移した。2年の研究休暇の間、セルカは研究者らに未知であったラッコの採餌行動の感覚認知の世界への窓を開いてくれたのだ。

 

現在、シニア・ラッコ飼育員のクリストファー・キントスが展示水槽でセルカに日々の行動トレーニングをし、親を失った子供たちの代理母になりその子どもたちを野生に返せるよう、セルカを導いている。クリストファーは2013年12月に水族館に加わった。彼は過去17年間海洋哺乳類の仕事をしており、イルカやアザラシ、アシカ、そして今度はラッコを担当している。

 

私たちはクリストファーにセルカとの毎日について、そして賢い海洋哺乳類に携わるのはどういうことかについて尋ねた。

セルカはどうですか?
セルカは非常によくやっています。展示水槽での生活、新しい環境、今までと違うエサにも慣れてきています。とてもよく食べます。実際、ちょっとがっつりしていますね!私たちが与えるおやつはみんな大好きなようです。セルカのトレーニングは予想以上にいいペースで進んでいます。

 

セルカは水槽仲間に慣れましたか?
はい、今、セルカが一番仲良しなのはアイビーです。アイビーは年が近いですから。若いので、ラッコによくみられるように、一緒にもめています。多くの時間を一緒に過ごしており、チームがラッコたちみんなトレーニングをしている際、時々セルカはアイビーが水槽のどこにいるか非常に気にしているようです。セルカは、アイビーが何をしようとしているのか知りたいようです。

 

セルカを代理母にするためにどのようなトレーニングをするのですか?

代理母になるために積極的な条件付けはしません。今アイビーと一緒にいるというように、他のラッコたちと一緒にいることが、知らないラッコや幼いラッコと一緒になった時のための本当にいい練習になるのです。

 

セルカが代理母プログラムへ参加するプロセスは、非常にゆっくりとしたもので、セルカのペースに合わせます。おそらく、最初は年の近いラッコか若いラッコで初めてみて、どうなるかを見てみることになります。セルカが仲間のラッコに対して母性行動を見せているのが観察され始めたので、セルカが自分の母性を示すことは十分あり得ると思います。

 

セルカのトレーニングは概してどうでしょうか。

素晴らしいです。セルカは頭がよく、集中力が高いです。他のラッコとの間で用いるような標準的な行動のほとんどはすでに学習しています。非常に短い順番でそうしたものを学習しました。ここに来た時にはすでに基礎的なことができており、行動のレパートリーもありました。だから、新しいコンタクトや環境の中で、すでに知っている多くのことを一般化するだけだったのです。セルカはトレーニングにきちんと参加し、すぐに覚えてくれます。

 

新しく展示水槽に加わるラッコとの関係はどのように構築するのですか?

いいヤツになるということですね。関係を構築するというのは鍵です。なぜなら、私たちがラッコたちとする仕事の多くは協力して行うことだからです。私たちは、ご褒美やラッコたちが好きなものをもって現れ、そうしたものを使ってポジティブな関係を構築します。そうした関係を補強するような、ラッコたちが面白いと思ったり、価値があると思ったりするようなものをもってきます。自然にラッコたちは私たちとそうした好物を関連付けるようになり、私たちに会うことが楽しみになります。そのように協力して行う行為を形成するため、ポジティブな関係を築き続けるのです。

 

人間と展示水槽の動物の関係はなぜ重要なのでしょうか?

協力するという観点からです。ラッコたちが展示水槽にいる間、わたしたちはラッコたちにより良いケアを与えられるよう、ラッコたちに様々な行動を教えるべく奮闘しています。例えば、手のひらを見せる、足ひれを見る、口を開けるというようなことです。ラッコたちが私たちを信頼し、自分でそうしたいと思うのと、ラッコにむりやりやらせなければならないのとでは、ラッコたちが自発的にそのような行動をしてくれるほうが非常に楽です。

 

協力的な関係を構築することで、安全性を高め、人間・ラッコ双方のストレスを減らすことができます。ラッコはあるシチュエーションが大丈夫で、それを頼んでいる人が大丈夫であれば、何も問題がなくなり、何かをする際に喜んでするようになります。

 

海洋哺乳類トレーナーにとって、ラッコが何か難しい問題を提示することはありますか?

ラッコは注意散漫で、非常に攻撃的になることもあるという汚名を着せられています。どちらも正しくはありませんが、そうした噂にこだわり、ラッコたちの力を最大限に引き出すよう扱わなければ、非常に残念に思います。実際、正直な話、セルカは集中力があり、学びやトレーニングプロセス全てにおいて閾値が広く、また展示水槽の他のラッコたちの何頭かよりは、ずっと長時間セッションに参加することができるのです。

 

こうしたものは、人間が築いたトレーニングや関係全体にある基礎的な部分に由来します。セルカは研究プロジェクトを終えてから私たちのところへやってきましたが、こうした調査の中には非常に時間がかかるものや、何度も繰り返しやったり長い時間やらなければならないものもあります。セルカは作業したり参加したり、あるいは自分がそうしたいという意思をもってかかわったりするという良い閾値を持っているのです。

 

特に、セルカに関して驚いたこと、もしくはラッコ一般に関して驚いたことはありますか?

ラッコたちに何ができるかということに関しては、噂をもとに線引きをしてはいけません。セルカは非常に頭のいいラッコです。集中力が高く、忍耐強いです。一貫性や忍耐、よい関係など通じこうしたことが達成できる、ということに私は驚いたりしません。また、セルカが順調であることも驚きに値しません。セルカとの時間を続け、ここにセルカがいてくれるのがいいと思っています。セルカは素晴らしいラッコです。それにほら、可愛いし、ふさふさでしょう。

 ラッコにはトレーナーの区別がつくのですか?

はい、区別していると思います。説明するのが難しいのですが、この業界で時々使われる言葉の一つに、「代用教員症候群」というものがあります。新しいトレーナーが来ます。理論的には訓練を受けているトレーナーです。そうすると、「あなたは先生じゃない!こっちの人についてみよう...」ラッコたちは間違いなくそうします。ラッコたちは声などで認識しています。認知力を通じて。私はそう思います。あるトレーナーたちとはうまくやらないラッコもいれば、何でもうまくやるラッコもいます。

 

ラッコの展示の話で何かいいお話はありますか?

私が来る前の、他のラッコの話を聞いたことがあります。キットのような。キットは水槽のコンクリートの弱いところを掘り出し、自慢げに動物ケアチームに差し出していたそうです。「見てー!皆のためにこれをやってあげたのよ!みんながこれを取る時間が省けたでしょう?ほら、ここに並べたよ!」という具合です。キットのことや、キットがどんなタイプのラッコだったかを知ると、笑いが止まらなくなります。

 

人々と関わる仕事をする際、皆さんは本当にこうした逸話を聞くのを楽しんでくれます。こうした話を聞くと、人々はなぜラ肉体的な刺激や精神的な刺激を与えるためにエンリッチメントが必要なのか、その重要性を理解してくれるからです。私たちは展示水槽を自然な状態にしたいので、代わりにこうしたもので遊ぶのです。新しい挑戦的で刺激的なエンリッチメントを与えることは私たちにとってもまたクリエイティブなことです。おもちゃなどをまとめるのに45分くらいかかるのに、30秒後にはほどけてしまっていることもあります。

 

ここでは退屈になることはありません。いつも、ラッコたちがそうしたエンリッチメントを試したり、お互いに何かしあっていたり、例えば、あ、あそこにいるアビーはもうそろそろ昼寝の時間だな、手を吸っているから、という具合に、見ていると新しい発見や楽しい発見があります。古くなってしまうことなどありません。

 

アビーはどうして手を吸うんでしょうか?

落ち着くための行動でしょう。アビーは母親から学んだのだろうと私は思います。アビーが代理母プログラムで育てた子どものラッコの中の1頭は、アビーからそうした行動を受けついています。ラッコの子どもは、早いうちから母親に非常に影響を受けるのではないかと思います。母親がすることを真似するのです。子どもが母親のそうしたスキルを真似するようになるのは大切なことです。カニやムラサキガイやハマグリのような生きたエサをどう扱うかを学ぶことは、生きるために必要なスキルです。だから、代理母プログラムが本当に役立っているのです。ここにいる経験のあるメスのラッコたちは、こうした生きるために不可欠なスキルを次の世代に引き継ぐのです。

 

もし海洋哺乳類になれるとしたら、何になりたいですか?

海をリスペクトする者として、海で生きていくことは非常にタフだということを知っています。できるなら、食物網の頂点、シャチでしょうか。生き延びるチャンスがありそうだからです。

 

水族館にいる海洋哺乳類なら、アシカがいいですね。みんな大好きですから。楽しいことが好きで、海と陸を行き来できるし、運動も好きです。ゆったりした生活ですね。

 

もちろん、モントレーベイ水族館にいるとしたら、ラッコになりたいですよ。ここには関われる人たちがいて、そうでなくても、おやつはたくさんあるし、刺激も多いし、よく眠れると思うからです。

Monterey Bay Aquarium Shoreline
Welcome Selka, our Newest Resident Sea Otter
2017 Spring