【記事】エルクホーン湿地帯のラッコ、農業排水を相殺 | Elkhorn Slough Sea Otters Offset Agricultural Runoff

本日は2016年9月28日付のMobile Ranger Blogから、"Elkhorn Slough Sea Otters Offset Agricultural Runoff"をお届けします。

ケルプの森だけでなく、湿地帯でも頂点捕食者として生態系を健全に保つラッコ。カリフォルニア沿岸地域には海洋保護区を設け、ラッコや多くの生物をを守っています。

今日、カリフォルニア州モントレー近くにあるエルクホーン湿地帯周辺では、窒素の流入が管理されている。しかし、それでも100年前に比べて湿地帯には150倍もの窒素が存在する。このように窒素レベルが高いため、エルクホーン湿地帯の平瀬は、厚い緑色の汚泥のような窒素を好む藻類に覆われているところがある。藻類はアマモの表面にも生え、光を遮断してしまう。しかし、エルクホーン湿地帯には健康で濃い緑のアマモが繁殖している。その秘密は何だろう。その答えは、誰もが好きなキーストーン捕食者、カリフォルニアラッコだということが明らかになっている。

ラッコはケルプの森を健全に保ち、同様にアマモの生育地にも貢献している。Photo: Bart Selby
ラッコはケルプの森を健全に保ち、同様にアマモの生育地にも貢献している。Photo: Bart Selby

カリフォルニア大学サンタクルーズ校のブレント・ヒューズはカリスマ性のあるこの肉食獣とこのひっそりと生きる多年生植物を始めて関連付けた人物である。ヒューズは50年分のデータを研究し、ラッコがいる地域といない地域を比較してラッコが多く生息する地域にはより健全なアマモ(Zostera marina)床が生息していることを突き止めた。

人々に人気のキーストーン捕食者、カリフォルニアラッコ Photo: Bart Selby
人々に人気のキーストーン捕食者、カリフォルニアラッコ Photo: Bart Selby

その理由は、ラッコはカニを好んで食べ、カニはウミウシのような草食の無脊椎動物を好んで食べ、ウミウシのような無脊椎動物はアマモに生える藻類を好んで食べるからである。

子どもは母親からカニの食べ方を教わるが、それが間接的にアマモの繁殖地を守ることに繋がっている。Photo: Bart Selby
子どもは母親からカニの食べ方を教わるが、それが間接的にアマモの繁殖地を守ることに繋がっている。Photo: Bart Selby

このトップダウンの種のマネジメントは、栄養カスケードとして知られている。頂点捕食者はそのエサである生物の量を変え、その次の栄養レベルに対する捕食を減らしている。

エルクホーン湿地帯の栄養カスケード。頂点捕食者はラッコ(E. lutris)で、中間捕食者はカニ(Cancer spp. 及び Pugettia producta)、中型着生植物グレイザーはまず等脚類(I. resecata)、そしてウミウシ類(P. taylori)、アマモに対する着生藻類は主に鎖状の珪藻植物、紅藻類(Smithora naiadum)である。直線の矢印は直接的な影響を、破線の矢印は間接的な影響を示す。プラスとマイナスの記号はこの栄養グループとアマモの状態に対するプラス及びマイナスの影響を示す。Cは競争的相互関係、Tは栄養的相互関係。Image: Original artwork by A. C. Hughes and used with permission of the Proceedings of the National Academy of Science 2013 (see full citation below)

エルクホーン湿地帯とトマレス湾とを比較してみると、ラッコのいる地域といない地域の違いが分かる。トマレス湾では栄養素(肥料由来の窒素など)のレベルが低いにも関わらず、明らかにラッコは少ない。その結果、アマモの表面には茶色い藻類が付着している。カニを食べるラッコが多くいないため、エルクホーン湿地帯と比較して甲殻類の数は4倍多く、大きさも30%大きい。そのため、藻類を食べてアマモの表面をきれいにするウミウシ類が非常に少なくなっている。

ラッコはよく働き、エルクホーン湿地帯の生態系のバランスを保つ。 Photo: Bart Selby
ラッコはよく働き、エルクホーン湿地帯の生態系のバランスを保つ。 Photo: Bart Selby

ラッコを見るには

ラッコを見るなら、モスランディング・ワイルドライフエリア(ハイウェイ1の東側)もしくはモスランディング・ステイト・ビーチ(ハイウェイ1の西側、Jerry Roadを下りてすぐ)がよい。ハーバー側のビーチでは、水の上にオスの群れが浮いているのを見ることができる。

エルクホーンを訪れる際は、ラッコに注意 Photo: Bart Selby
エルクホーンを訪れる際は、ラッコに注意 Photo: Bart Selby

エルクホーン湿地帯- ラッコと多様な生物のための保護区

エルクホーン湿地帯はカリフォルニア州に残る数少ない沿岸湿地帯の一つで、サンフランシスコ湾に次ぐ大きさである。この河口域は約7マイルの長さがあり、多くの海洋生物の生息地であり、水棲哺乳類、鳥、魚、無脊椎動物、藻類、植物など700種を超える生物にとって重要な生息地となっている。またここは海洋保護区を設立する州のプログラムの一部である。海洋保護区は、海岸から沖へ数マイル広がっていることをのぞけば陸地にある州立公園と同じである。この「海中公園」は生物学的多様性(多くの海洋生物)、文化的な豊かさ(沈没船S.S. Palo Alto号や考古学的に重要なもの)、経済的重要性(漁業や観光業はこれら沿岸地域では非常に大きなものを占める)を持つ。

サンタクルーズ郡の海洋保護区 Image: California Marine Sanctuary Foundation
サンタクルーズ郡の海洋保護区 Image: California Marine Sanctuary Foundation

エルクホーン湿地帯は3つの海洋保護区に含まれている。エルクホーン湿地帯州立海洋保全区(SMCA)、エルクホーン湿地帯海洋保護区(SMR)、モロ・コホ湿地帯州立海洋保護区だ。海洋保護区にはいくつかのタイプがあり、それぞれ固有の規則が存在する。詳細はカリフォルニア州魚類野生生物局のウエブサイトを参照。

Image: Courtesy the Ocean Conservancy via the California Marine Sanctuary Foundation.
Image: Courtesy the Ocean Conservancy via the California Marine Sanctuary Foundation.

Mobile Ranger Blog

Elkhorn Slough Sea Otters Offset Agricultural Runoff

September 28, 2016 by Ranger Lautamo