本日は2016年9月22日付けのThe Huffinton Postより、"Sea Otter Awareness Week: Seeing Healthy Otters at Shedd Aquarium" をお届けします。
シェッド水族館の獣医師ヴァン・ボン博士へのインタビューです。
「海洋哺乳類」という言葉を聞いたり読んだりした時、おそらく皆さんはすぐに滑らかなイルカや優雅なクジラを思い浮かべるでしょう。でも、海洋哺乳類の全てがそのような毛のない動物というわけではありません。実はラッコは、シェッド水族館にも5頭いますが、記録的に毛が多いのです!ラッコは1平方インチ当たりの毛の数が、知られているどの動物よりも多いのです。
ラッコの毛は、ラッコが冷たい海での生活に適応した驚くべき方法の一つです。他の特徴も、ラッコの顕著な性質に結びついています。ラッコたちのケアを行なう主任獣医師として、私はラッコについての質問や、ケアの対象としてのラッコと仕事をするのはどんな感じかという質問をよく受けます。
ちょうどラッコ啓蒙週間ですから、この可愛らしく小さな(といっても比較的小さいというだけで、実際は40kgほどになることもあります)ラッコたちを健康に保つとはどういうことかについてお話するのは素敵なことかもしれません。
ラッコとはどのような患者でしょうか。どうやって健康診断を受けるのでしょうか。どんな検査をやり、結果からどんなことが分かるのでしょうか。
ラッコが赤ちゃんの時、特にシェッドに来た保護されたラッコのような場合、ほぼずっと補助が必要で、特別な道具や服装はなく、飼育員が扱うことができます。
しかし、それもすぐに変わっていきます。固形のエサを食べるようになるとすぐ、歯を使うようになります。ラッコの顎や歯は強く、カニなどや貝、ウニなどをかみ砕いて身を食べるのに適応しています。
ですから、ラッコの健康診断をする際には取り扱いに気を付けなければなりません。それから、体全体を調べます。聴診器で心音や呼吸音、消化器官の音を聞いたり、腹部に腫瘍や非対称性のものがないか触診したり、関節炎の兆候がないか、他にも通常ではないものがないかを調べます。
また通常血液サンプルを採取したり、レントゲンを使って内臓の画像を撮ります。こうしたものは、ラッコの内臓がどのように機能しているのかという貴重な情報をたくさん与えてくれるのです。
そうした検査から得られるポイントや、共通する所見とはどのようなものでしょうか。
当館のラッコたちはたいていは、定期健診のあとには「健康証明書」がもらえるくらい健康です。しかし、時々、鼻に住み着くダニのようなものを見つけるときがあります。ラッコには非常に一般的なもので、野生のラッコにはこうしたダニが普通に寄生しています。
ラッコが年齢を重ねるにつれ、歯に歯石がついてくることもあります。そのような場合、歯科衛生士が人の歯をきれいにするように、ラッコも歯のクリーニングをし、歯を磨かなければなりません!また、時々、白内障や腫瘍のような年齢に関係ある問題を見つけることもあります。
採取した血液の検査結果から得られる情報は、ラッコの健康や環境変化がラッコの健康に与える影響について研究している生物学者にとっては非常に有益です。当館のラッコたちは、原油に汚染された野生のラッコと、遺伝的に関係があるが原油に汚染されたことのない飼育下のラッコの遺伝子機能を比較する研究に貢献しています。こうした重要な研究は、私たちのケアのもとにあるラッコたちを注意深く評価することで初めて成り立つもので、どこに住んでいようともラッコのケアをすることはどのようなものかということへの理解を発展させる多くの科学論文に現れています。
[興味のある方は以下の参考文献をご覧いただきたい
Bowen et al., (including Van Bonn) 2012. Gene transcription in sea otters (Enhydra lutris); development of a diagnostic tool for sea otter and ecosystem health. Molecular Ecology Resources Vol.
12 pp. 67-74]
親を失ったラッコの赤ちゃんには24時間体制でケアしなければならないと聞きましたが、それはどうしてでしょうか。また、そのケアとはどのようなものでしょうか。
それは本当です。保護したラッコが非常に幼く、母親からまだミルクをもらっているような場合、シェッド水族館に到着した際には24時間体制のケアが必要になります。これは、自然界ではラッコほぼ絶え間なくミルクを与えられているからです!親を失ったラッコも同じです。ラッコは非常に代謝が高く、多くのカロリーを非常に早く燃焼します。カロリーを燃焼させることで熱を生みだしますが、これはラッコが冷たい意味で体温を維持するために必要なことの一つです。ラッコの子どもの成長が早いのは、もっとたくさんのカロリーを燃焼させているということで、それはつまりそれだけ頻繁にミルクを与えなければならないということなのです。
乳獣の時は、シェッドでは母乳に似せたミルクを与えられます。大きくなっていくと少しずつ貝、カニ、エビ、ウニなどの固形のエサに変えていきます。
親を失ったラッコの子どもは、自分の特別な毛皮をどうやって手入れするか分かるまでしばらく時間がかかります。野性では母親が赤ちゃんをお腹に乗せグルーミングしながら毛をきれいにし、状態よく保ちます。ここ水族館ではトレーナーが代理母となり、毛皮のグルーミングや状態を整えたりしますが、それもまた24時間体制のケアが必要なのです。
時々、新生児はみんなそうですが、ラッコもさしこみを起こしたり、お腹にガスがたまったりすることもあります。そのような時はガス止めの薬を与えることもありますが、たいていは良くなります。運よく、オムツを替える必要はありません。
シェッド水族館のラッコや野生のラッコについてもっと学びたいのですがどうすればいいでしょうか。
飼育下にある動物は私たちにその動物について多くのことを学ぶ機会を与えてくれますが、野生のラッコについてはもっとたくさんすべきことがあります。ラッコ啓蒙週間の間、西海岸でラッコが直面している脅威、特にエルニーニョの結果起こる海洋温暖化についてはしっかり特筆すべきでしょう。シェッド水族館はラッコの保護やリハビリについては献身的に行なっているリソースがありますが、一般の方にも、ラッコを更なる脅威から守るためにできることがたくさんあり、ここ(訳者注:【記事】ラッコ予報も嵐の予測 | Stormy Weather in Forecast for Sea Otters)で読むことができます。
ビル・ヴァン・ボン獣医学博士はシェッド水族館動物健康部門の副代表です。25年以上の獣医臨床経験を持つバン博士は多様な水生生物医学への取り組みを監督するだけでなく、シェッド水族館における革新的な獣医学を推進しながら、確立されたシェッド水族館の動物ケアと健康に関する専門知識を強化してきました。ヴァン・ボン博士の専門は水生生物、特に海洋哺乳類を中心とした予防医学および臨床獣医学です。シェッド水族館では最高品質のケアを提供し、動物の健康に関する知識を野生にいる仲間たちの保全に適用することに焦点をあてています。また博士は水族館のマイクロバイオームプロジェクトも監督しています。
The Huffinton Post
Sea Otter Awareness Week: Seeing Healthy Otters at Shedd Aquarium
09/22/2016
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