【記事】シアトル水族館でラッコの赤ちゃんがリハビリ中 | Stranded sea otter pup transferred to the Seattle Aquarium for rehabilitation

本日は2016年8月30日付のSeattle Aquarium Blogから、"Stranded sea otter pup transferred to the Seattle Aquarium for rehabilitation "をお届けします。
ラッコの赤ちゃんの座礁が増えていますが、さまざまな制約や条件があり、どんな施設でも引き受けられるわけではありません。

©Seattle Aquarium
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8月初め、ワシントン州外岸のリアルト・ビーチでラッコの赤ちゃんが座礁しているとの通報がありました。そのオスの赤ちゃんは生後約3週間とみられ、非常に痩せて弱っており、予断を許さない状態でした。

 

座礁した赤ちゃんラッコが発見されて間もなく、アメリカ魚類野生生物局(USFWS)はシアトル水族館へ連絡を取り、その赤ちゃんの状態を安定させるため選別治療を行うよう依頼がありました。当館は公式なリハビリテーション施設ではありませんが、赤ちゃんラッコの飼育の経験があり、赤ちゃんの発見現場に近いこともあり、また現在米国魚類野生生物局やワシントン州魚類野生生物局(WDFW)と連携していることもあって、今回選ばれたのです。

 

ワシントン州魚類野生生物局の生物学者が赤ちゃんラッコを保護し、シアトル水族館までの移送を手配しました。それ以来、この赤ちゃんラッコは隔離エリアで当館の獣医師レザンナ・レーラー博士と当館の生物学者、訓練を受けたボランティアらにより24時間体制でケアを受けています。

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©Seattle Aquarium
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ラッコは多くの州や連邦法により管理されています。海洋哺乳類保護法で保護されており、またワシントン州では絶滅危惧種に指定されています。野生のラッコの生息域の中で一部の個体群は絶滅に瀕する種の保存に関する法律で保護されていますが、ワシントン州の個体群は安定しており、この連邦法では保護の対象になっていません。こうした状況は、ワシントン州のラッコを特殊な状態に置いています。つまり、ラッコの管理の責任は米国魚類野生生物局とワシントン州魚類野生生物局とでシェアされているのです。

 

シアトル水族館はアメリカ動物園水族館協会(AZA)認定の会員として、北米における動物園や水族館でのラッコの管理に関するプログラムリーダーです。当館の哺乳類・鳥類専門キュレーターであるトレーシー・ベルティングは、アメリカ動物園水族館協会のラッコサバイバル計画のコーディネーター及び血統管理者として活躍しています。以前は当館の生物科学ディレクターC.J.カッソンがその役割を担っていました。

©Seattle Aquarium
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シアトル水族館におけるラッコの歴史は長く、妊娠、出産を経て成獣になるまでラッコを飼育した世界で初めての動物園・水族館です。1977年の開館以来、ここで9頭のラッコが生まれました。また当館はラッコに関する重要な研究を行い、世界中の生物学者や政府関係者、獣医、非営利団体が集まりラッコの管理や保全について話し合うラッコ保全ワークショップを主催しています。

 

最近のワークショップでは、ラッコの生息域で赤ちゃんラッコが発見されること急増している問題についてが主要な討論の話題となりました。座礁に関する通報が増えているのは、野生のラッコの個体数か回復しつつあり、ラッコの住む沿岸に住む人間も増加していることが理由です。

©Seattle Aquarium
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赤ちゃんラッコの座礁の増加は、アメリカ動物園水族館協会から認可を受けたラッコを展示している施設に緊張をもたらします。他の多くの生物とは異なり、ラッコの赤ちゃんを育て無事に野生に返すことは非常に難しいのです。ほとんどの赤ちゃんラッコにとって、別の選択肢は認可を受けた動物園や水族館に置いてもらうことです。なぜ野生に返すことができないのでしょう。ラッコの赤ちゃんは、母親から生後6か月から12か月くらいになるまで世話をしてもらいます。「どんなに良い環境であっても、野生で生き延びることは難しく、人間が育てたラッコは野生で生き抜いていくために必要な、必須のスキルを持たないのです」とトレーシーは言います。

 

ラッコを受け入れるという決断は簡単にできるものではありません。「非常に多くの責任があり、ラッコには費用がかかるからです」とトレーシーは言う。「ラッコの世話、エサ、必要なスペースなど、多くの責任が生じます」それに加え、ラッコは社会的な群れで生きており、オスは複数のメスと交尾するために競います。例えばシアトル水族館にはすでにオスのラッコ、アダーがいます。もう1頭オスのラッコを加えるとなると、当館にはもう1つ別のラッコ展示水槽が必要になり、今いるメスのラッコを2つの水槽に分けるか、更にメスのラッコを増やすかしなければならなくなります。

 

こうした理由から、米国内で認可を受けた施設はみなケアできるラッコを受けいれています。「もう満室状態なのです」とトレーシーは笑います。

 

アメリカ動物園水族館協会の認可を受けた施設で親を失ったりリハビリを受けているラッコを引き受けるできるだけ多くのスペースを確保するため、2年前、飼育下では繁殖させないという合意がなされました。「飼育下で繁殖させないことで、保護された赤ちゃんラッコが引受先を見つけられる可能性が高くなるからです」とトレーシーは言います。「今は、アメリカ動物園水族館協会の認可を受けた動物園や水族館に新たに加わるのは、野生に返せない、たいていは赤ちゃんのラッコで、州や連邦当局との協力によって行われています」

©Seattle Aquarium
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だとしたら、このオスの赤ちゃんラッコには、どのような未来があるのでしょう?このラッコは、先ほど述べたような理由でシアトル水族館に留まることはできません。しかし、幸運にも海外へ行くことができるのです。カナダのブリティッシュコロンビア州にあるバンクーバー水族館です。

 

連邦の絶滅に瀕する種の保存に関する法のもとで保護されている動物は輸出することができません。米国内に留まらなければならないのです。しかし、ワシントンのラッコのように州レベルでは保護されていても連邦レベルではそうでない場合、新たな住まいを見つけるため海外へ出すことができるのです。当館でのリハビリがうまくけば、この親とはぐれたラッコの赤ちゃん(世話する人たちからはワシントン州外岸の発見された場所にちなんでリアルトと呼ばれています)は状態が安定し正式な許可が下り次第バンクーバー水族館へ引越しすることになります。「これで米国外に出せないラッコのために米国内の動物園や水族館のスペースを確保する助けになるでしょう」とトレーシーは言います。

 

親のないラッコに新しい家を見つけ移送を進めることはシアトル水族館にとっては未知の分野です。「今まで、当館で引き受ける予定のないラッコのケアをしたことはありませんでした」とトレーシーは言います。「初めてのプロセスで、米国魚類野生生物局やワシントン州魚類野生生物局、バンクーバー水族館、そして米国内でラッコのリハビリテーションの資格を持つ2つの施設(モントレーベイ水族館とアラスカシーライフセンター)との多くのコラボレーションを必要とします」

 

この記事を書いている時点で、この赤ちゃんラッコの輸出許可申請は提出されています。このプロセスには通常およそ半年から12か月がかかりますが、上手く進んでこのラッコがバンクーバー水族館の正式なリハビリ施設へ無事輸送できることを願っています。このラッコの健康状態、そして新しいバンクーバーの家への移送については、アップデートをお待ちください。