【記事】ラッコ予報も嵐の予測 | Stormy Weather in Forecast for Sea Otters

本日は2016年2月19日付のシェッド水族館のブログより、”Stormy Weather in Forecast for Sea Otters ”をお届けします。エル・ニーニョにより、ラッコたちはますます厳しい環境に直面しています。

Photo credit: ©Monterey Bay Aquarium, photo by Tyson V. Rininger
Photo credit: ©Monterey Bay Aquarium, photo by Tyson V. Rininger

719号は、1989年のエクソン・バルディーズ号原油流出事故以来シェッド水族館が受け入れた10頭目のラッコになります。

 

子どものラッコたちは、アラスカの海で瀕死の状態のところを引き上げられたり、プリンス・ウィリアム湾やカリフォルニア沿岸で一人で母親を探して泣き叫んでいたところを助けられたりしたものでした。母親とはぐれたり捨てられたり等、何らかの理由で母親と離れてしまったのです。一般市民のみなさんの意識の向上と保護への尽力によりそうしたラッコたちは生きることができ、アメリカ魚類野生生物局を通じ、アメリカでも数少ないラッコの赤ちゃんの養育やリハビリ用の設備や人員が揃う水族館や動物園の一つであるシェッド水族館へやってきたのです。

 

 

今年は過去60年で最大のエル・ニーニョが世界の気候パターンに大きな変動を及ぼしていますが、専門家らはカリフォルニアの海岸で記録的な数のカリフォルニアラッコ(成体のラッコも子どものラッコも)が座礁するのに備えています。

 

エル・ニーニョと関連し太平洋の水温が異常に暖かくなり、その水温上昇により結果1月にはカリフォルニアの沿岸沿いで激しい嵐が引き起こされました。そうしたことが、719号が座礁してしまった要因と思われます。719号を保護したモントレーベイ水族館のラッコ保護プログラムは、719号は高波により母親と引き離されてしまい、多くへ流され、浜に打ち上げられてしまったのだろうと考えています。

 

1月6日、このラッコがカリフォルニア州カーメルの砂浜で発見された際、モントレーベイ水族館のラッコ専門家は動揺している以外は健康体と思われたそのラッコを腕に抱え、海岸を行ったり来たりしながら、激しい波間の間に母親と思われる取り乱したラッコがいないか探しました。もし母親が近くにいたとしたら、母親は子どもの叫び声を聞き分けて子どもを取り戻そうと浜のほうへ泳いできたかもしれません。しかし、子どもの鳴き声に反応するラッコはおらず、その子どものラッコは野生で一人生きていくにはまだ幼過ぎたため、モントレーベイ水族館に連れられ、719号としてケアを受けました。このラッコがモントレーベイ水族館のラッコプログラムにおける、719番目に保護されたラッコだったからです。

 

 

この子どものラッコはモントレーベイ水族館のメスのラッコとペアになり、野生に帰せるよう、代理母ラッコにこうした子どものラッコを育ててもらえたかもしれません。しかし代理母の都合がつかなかったため、次なる選択肢として、719号に生涯暮らせる住まいを探すことになりました。それがシェッド水族館だったのです。719号は、私たちがモントレーベイ水族館から引き受ける3頭目のカリフォルニアラッコとなりました。719号から学ぶことにより、私たちは野生にいるラッコたちを守るために、管理上必要な決断をする際に情報を提供できるのです。

Photo credit: ©Monterey Bay Aquarium, photo by Tyson V. Rininger
Photo credit: ©Monterey Bay Aquarium, photo by Tyson V. Rininger

全てのラッコの個体群は1911年の膃肭臍(おっとせい)保護条約に基づく保護を受けるまで、毛皮貿易により虐殺に遭いましたが、カリフォルニアラッコの個体群は特に回復が遅れています。今日のカリフォルニアラッコは1938年にビッグ・サー付近で発見された約50頭の独立した群れの子孫です。国による絶滅危惧種保護法や州の野生生物法に基づく保護が追加されてはいますが、カリフォルニアラッコは生き延びるのに苦労しており、国の絶滅危惧種リストには絶滅の恐れがある種に記載されています。アメリカ地質調査所による最新の年次個体数は2014年には2,944頭、2013年の2,939年からほとんど増えていません。

 

ラッコは、排水中にある陸上由来の病気や食べ物をめぐる水産業との競争の激化、絶えず存在する大規模な原油流出事故の可能性などなど人間が引き起こす脅威に直面しています。そして今、エル・ニーニョが加わっています。エル・ニーニョは南カリフォルニア沿岸を立て続けに襲う嵐を引き起こし、ラッコを座礁させ、負傷させ、殺してしまうこともありますが、それに加えて、水温の上昇により、ラッコに休む場所を与えるだけでなく、ラッコの主要なエサであるウニの生息地でもあるケルプが死んでしまうこともあります。

 

カリフォルニアラッコは太平洋のケルプの森においてキーストーン種であるため、そのためラッコの個体数が健全になれば、その生態系も健全になるのです。しかし今年は、エル・ニーニョが水温の上昇をもたらし、そうした効果をだいなしにし、怒り狂う嵐はラッコやその海の生息地を危険にさらしています。

 

ラッコ719号について学び、シェッド水族館の他の保護されたラッコたちについてはこちら日本語訳:【記事】ラッコ保護大使、ルナ | Luna, Conservation Ambassador)をお読みください。象徴的にラッコの里親になることで、シェッド水族館による、ラッコやその他の動物に対する最高品質のケアを支援することもできます。

Shedd Aquarium Blog

Stormy Weather in Forecast for Sea Otters

FEBRUARY 19, 2016 Karen Furnweger, web editor