【記事】ラッコと関わる仕事(5)海獣保護ボランティア | Otter Careers 5 : Marine Mammal Rescue Volunteer

6回シリーズで、Otter Projectのウェブサイトから"Otter Careers"を一つずつご紹介しています。5回目の今回は、怪我や病気などで遭難した海洋動物を保護するボランティアを行っている方へのインタビューです。アメリカのNPOにはこのような献身的なボランティアが多く参加しています。

海洋哺乳類保護センター ボランティア P.J. ウェブ氏

どんなことをしていますか?

私は海洋哺乳類センター(Marine Mammal Center)でボランティアをしています。病院はカリフォルニア州サウサリートにありますが、ボランティアはカリフォルニア州の沿岸各地で仕事をしています。わたしは、海洋哺乳類の遭難の通報に対応しています。病気や怪我をしたラッコ、母親とはぐれてしまった子どものラッコ、通常ではありえない場所に出没した健康なラッコも含みます。ラッコが助けを必要としている場合、同僚と一緒に、獣医に連絡を取りどのように対応するか指示を受けます。ラッコがモントレーベイ水族館の専門家のところへ運ばれるまでの間、捕獲し治療をすることもできます。アザラシやアシカ、クジラ類やウミガメなどを保護した場合は、カリフォルニア州サウサリートにある海洋哺乳類センターの病院へ連れていきます。保護する際は安全に捕獲するため、手袋をつけ、網を使います。ラッコを驚かせたりストレスを与えたりしないよう、声をおとします。体毛を汚さないよう、ラッコをプラスチックのラックに入れます。毛が油や砂、泥などで汚れてしまうと、ラッコは暑くなりすぎてしまったり寒くなりすぎてしまうことがあるからです。ラッコの体温を監視し、適切な体温になるよう周囲を調節します。輸送中は、気をそらしたり落ち着くよう、ラッコに犬用のおもちゃを与えます。

どんな勉強が必要なのでしょうか?

私は法学の学位を持っていますが、海洋哺乳類の保護のボランティアについては学位は必要ありません。18歳以上で、その団体の研修(義務)を受ければ大丈夫です。研修は動物の管理方法、捕獲技術、安全研修、海洋哺乳類やウミガメについての継続的な教育などを含んでいます。海洋哺乳類の種類を特定する方法や身体的な特徴、行動の特徴、餌や水、環境温度などについて健全であるというのはどういうことかということを学ばなければなりません。

どのようなカリキュラムが必要なのでしょうか?

数学:動物の体重を測定し、パウンドからキログラムへ変換するのに数学が必要になります。日常生活ではパウンドを使うので、動物の重さを推測する際にはわたしたちはほとんどパウンドで考えます。しかし、獣医はエサや薬などを決める際、標準としてキログラムを使うのです。また薬の投与量を決めるのにも数学が使われます。字がきれいなこと:動物によってそれぞれ、薬の表があります。動物の治療の記録が正しいことを確かめるため、正しく読みやすい字で書くことが必要になります。動物の体重、保護時の状況、体調や投与した薬などは全て完璧に記録しなければなりません。

人前で話す能力:この教育プログラムでは、学校のクラスや地域のグループの方々にこの組織の活動や使命について説明する際に、人前で話す能力が必要です。海洋哺乳類保護センターの使命は海洋哺乳類を保護し、健康を取り戻し、海へ帰すためのリハビリを行い、そして動物たちがなぜ病気になってしまうのかを調査し、動物たちをどのように扱い、健康に保つにはどうしたらいいのかを研究することです。ほとんどの人はこの仕事に興味を持ってくださり、サポートしてくださいます。しかし、なぜこんなことをするのかと疑問に思う人もたまにいます。そうした疑問全てに正確に、客観的に答えるべく努力しています。
健康:重要な要素は、ボランティア自身の体が健康であることです。岩をよじ登ったり、浜辺を延々を歩いたり、動物を網で捕まえたり、動物をキャリーに入れたり、運んだり持ち上げたりするのは非常に強靭さとスタミナが必要です。

衰弱したカリフォルニアアシカを保護する海洋哺乳類保護センターのスタッフ
衰弱したカリフォルニアアシカを保護する海洋哺乳類保護センターのスタッフ

重要な職務経験は?

動物を保護することは、特殊なマネージメント業務といえます。私の場合、以前劇場やテレビ局でステージマネージメントをしていた経験が、必要な要素をどうやって全て集めるかということを解決するのに非常に役立ちました。仲間のボランティアでこういった保護をコーディネートする能力が高い人の多くは、マネージメントの経験があります。しかし、チームの一員として上手く仕事ができる能力も必要です。保護を行うには、個々のボランティアがみんなで協力して行わなければならないからです。

この仕事に必要なパーソナルスキルは?

よく観察する能力が重要だと思います。動物に耳を傾け、何をしているのか、呼吸の様子はどうか、どのように動き、どのように鳴いているかをよくみなければなりません。傷があるか、釣り糸や漁網、プラスチックやロープに絡まっていないかどうかを見ます。高速道路や滑走路のような危険な場所に入ってしまっているようなことがなければ、健康な動物を捕まえる必要はありません。保護に関しては、問題解決能力は必須です。保護しなければならない状況は毎回異なります。平らな砂浜にいる動物は、その動物に近づく前に海へ戻ってしまうこともあります。動物は崖や濡れた滑りやすい岩の下にいることもあります。動物や救助スタッフに危険を及ぼさずに保護する方法を見つけ出すことができなければなりません。安全で効果的でストレスなく保護するためには、分析的に考えることが鍵となります。この仕事には、チームの一員として他の人たちと共に作業することを学ぶことが非常に重要です。自分の背後を注意したり、怪我をして不機嫌な動物に噛まれたり襲われたりしないようにするには、他のスタッフの協力が必要です。

仕事で一番楽しいと思えることは何ですか?

この仕事で一番いいのは、保護された動物が自然に返される瞬間を見ることです。ラッコが怪我や病気などで保護され、自分がそのラッコの回復に一役買っていたとしたら、自然に返す時、ラッコが搬送用のキャリーから出てきて海に潜っていく様子をみるのは本当に嬉しいものです。ラッコが泳いでいき波に紛れて見えなくなるまで、ずっと見送ります。私は子どもたちにこのボランティアの仕事について話すのも楽しいです。子どもたちも海洋哺乳類が好きで、その動物たちについて色々なことを知っていて、私を驚かせてくれます。また、子どもたちは熱心にゴミを拾う手伝いをしてくれますし、海にどんなものが流れ込んでいるかということについて注意してくれています。

仕事で一番嫌な部分は何ですか?

この仕事で一番いやなのは、素晴らしい動物たちに対して人間が直接的もしくは間接的に何かをするのを見なければならないということです。銃で撃たれたり、頭に釣り糸や漁網や梱包ひもが絡まったり、発作を起こしたり、一度クロスボウが首に刺さった動物を見たこともありました。どうして、素晴らしい動物たちにこんなことができるのか、理解に苦しみます。その矢が刺さった動物は治療を受け、無事海に帰ることができました。こうした動物たちを、シンプルな方法で守ることが大切です。ゴミを浜に捨てないこと。ゴミは拾って、正しく捨てること。ウミガメはクラゲを好んで食べますが、ビニル袋や風船などを餌と間違えて食べてしまい、機能を阻害します。ラッコやアザラシ、アシカなどは頭やひれがプラスチックの紐や糸に絡まってしまうことがあります。海鳥は消化することができないゴミを食べ、それが胃に溜まってしまいます。また、川の流域で何が起こっているかを知る必要もあります。下水に流すものは全て排水溝を通り、最終的には川へ流れ込みこうした動物が住む海へたどり着くのです。

何故ラッコと関わる仕事をしようと思ったのですか?

私が住む海岸のすぐ近くにすむ海の動物たちを助けるために、何かをしたいと思ったからです。友人の一人が保護ボランティアであったことを話してくれたことがあり、研修を受けることを決め、ひっかかってしまいました(笑)毎月研修があり、動物たちやその生息地について非常に多くを学ぶことができます。こうした動物たちをケアできるというのは大きな喜びです。

その仕事が重要だと思った理由は何ですか?

カリフォルニアラッコは非常に重要なキーストーン種ですが難しい状況にあります。ラッコや他の海洋哺乳類たちが、海や地球の健全性について私たちに伝えようとしていることに対して、私たちは耳を傾けなければなりません。動物たちを助け、動物たちや私たちのために環境をよりよくしようと力を尽くす人々がいて、私はそうした素晴らしい人たちのグループのほんの一部です。

ラッコについてより多くのことを学べるようなウェブサイトはありますか?