【記事】水面下から~ラッコの捕獲調査~ | A View From Below: Sea Otter Capture

本日はカリフォルニア漁業狩猟局のYoutubeチャンネルから"A View From Below: Sea Otter Capture"の書き起こしをご紹介します。カリフォルニアにおけるラッコ保護のためにラッコの捕獲調査をどのように行っているのでしょうか。

カリフォルニアラッコは、国の「絶滅の危機に瀕する種の保存に関する法律」により、絶滅の恐れがある動物としてリストアップされており、またカリフォルニア州によっても、完全に保護が必要な動物としてリストアップされています。


カリフォルニアのラッコはかつては何万頭も生息していましたが、毛皮貿易時代に乱獲された結果、50頭以下に減ってしまいました。1911年に保護動物となってからは、カリフォルニアにおけるラッコの生息数は少しずつ増え、生息域も少しずつ拡大してきています。しかし、数が停滞するようになり、ラッコの生息数の減少は研究者たちにとって、大きな懸念事項となっています。


キーストーン種であるラッコは、ケルプの森の生態系の健全性を保つうえで、非常に重要な役割を果たしています。そして歩哨動物として、沿岸海洋生態系の状態を示しています。ラッコに対して影響を及ぼす要因をより理解を深めるために、研究プロジェクトはラッコを安全に捕獲する必要がありました。ラッコは捕獲され、タグをつけられ、生体標本を採取され、集中的にチェックされます。


ラッコを捕獲する際に最もよく採用されるのが、専門的な訓練を受けたダイバーにより、水の中から接近するという方法です。特別に訓練を受けラッコを捕獲する資格を国や州から与えられた生物学者は少数です。こうしたダイバーは、特別な装備を使用します。これはリブリーザーと呼ばれるもので、泡がでません。これは、趣味でダイビングをするような人向けのものではなく、軍事用のもので、100%の酸素を供給します。ダイバーは装備を身につけ、水に入り、ボートの横の水面につけます。水中スクーターとウィルソントラップという名の大きな捕獲用のネットがダイバーたちに手渡されます。

リブリーザーを付けるダイバー
リブリーザーを付けるダイバー
ウィルソントラップ(捕獲用のネット)
ウィルソントラップ(捕獲用のネット)

ダイバーは各々、捕獲用のネットを水中スクーターに取り付けます。装備の最終チェックを行うと、出発の準備ができた合図をします。これらの隠密ダイバーは、捕獲対象のラッコを目指して、水面下の長い移動を開始します。

この移動中、ダイバーは目標のラッコを目指してコンパスを使いながら熟練した腕で水中スクーターを操り、ケルプの森をすり抜けていきます。


陸やボートにいる生物学者たちは、休んでいるラッコたちに目を光らせながら、リーダーのダイバーが水面に顔をだしてチェックする様子を見守っています。

ダイバーの帽子の中のポケットに無線発信機が入っており、陸やボートにいるスタッフからの指示を聞くことができるようになっています。ラッコが動いて場所が変わったり条件が変わったりした場合、必要に応じて近づき方を変えることができるため、この水上からの情報は非常に役に立ちます。


リーダーのダイバーは、もぐったり時々水面に顔をだしてチェックしたりして、捕獲対象のラッコが見えるところまで近づきます。


寝ているラッコの真下の場所に到したら、ダイバーたちは呼吸の泡を出すことなく、群れを観察し、ボートから選んだ主要な捕獲対象を探します。


各々のダイバーが捕獲対象のラッコを探し出したら、気づいていないラッコの6フィートから8フィート(約1.8m~2.4m)下で、捕獲用ネットを準備します。ダイバーたちは協力して水面へ上がり、水中スクーターの電源を入れ、浮かんでいるケルプの間から網つきのスクーターを押し上げ、ネットの中にラッコを入れます。

ラッコがネットに入ったら、ダイバーは紐を引いて、ラッコをしっかり中に閉じ込めます。

ラッコをしっかり捕獲したネットを持って、ダイバーたちは水面へ上がり、ラッコを回収してくれるようボートに向かって手で合図します。ボートは素早くケルプの中へ入り込み、ダイバーとラッコを収容します。ダイバーたちは装備を手渡し、再びボートに乗り込みます。捕獲されたラッコは、捕獲ネットからラッコの収容・移動に特化した大きな木製の箱に移されます。

陸上に移動すると、科学者や獣医、生物学者とアシスタントで構成されたチームが、ラッコに鎮静剤を打ち、医学的な診断をする準備をします。

ラッコの形態学、生物学、生理学について知識を得るため、身体計測データや生体標本をとります。



ラッコはそれぞれ、その後個体を判別するために、色のついたタグをつけられます。ラッコの中には、体内に無線発信機を埋め込まれるものもいます。

それによって、研究者たちは無線の受信機や高性能な望遠レンズを使用し、海岸からそのラッコの居場所を特定し、集中して観察することができるのです。


野生のラッコを捕獲することにより、ラッコの健康状態を計測し観察することができます。そして、研究者やリソースマネージャー(資源管理者)が、この脆弱なラッコの保護に関して様々な情報を加味して判断することを可能にするのです。